神奈川県立図書館の所蔵CDをご紹介するこのコーナー、今回もモーツァルトのピアノ協奏曲のモダン演奏です。今回はブレンデルとホロヴィッツという二人の演奏をご紹介します。
まず、なぜブレンデルで来たのにホロヴィッツが出てくるのか説明しましょう。もちろん、ブレンデルでほしかったのですが・・・・・・
パッケージには「一部音飛びがします」と書かれてあったのです、第23番で。残念です・・・・・ブレンデルのカデンツァが聴きたかったのに・・・・・・
以前、番号順に一曲ずつ解説した時にも述べましたが、モーツァルトのピアノ協奏曲は第20番から第25番まではカデンツァが残されていません。モーツァルトもピアニストでしたから、実は第5番から第19番まではモーツァルト作曲のカデンツァが残されているのですが・・・・・
ですから、第20番から第25番までは、当然ピアニストがカデンツァを「作曲」しなければいけないのです。せっかくブレンデルで統一しようとしていたわけですから、ここまで来たら全部ブレンデルで聴きたかったのですが・・・・・・
まあ、これも図書館で借りる以上は仕方あるまいと、ほかを探しましたら、あったのです、なんと、巨匠ホロヴィッツで。
そこで、23番だけはホロヴィッツとなったわけなのです(しかし、これがきっかけでまた第26番と第27番はほかのピアニストへ変わるのですが)。
でも、結果的にはそれはとてもよかったなと思います。ブレンデルだけではピアノストが「作曲する」ということの意味をそれほど深く考えなかったと思うのですが、この二つの演奏はとても考えさせてくれました。
二人とも軽やかさとモーツァルトに負けない転調を追求する点では全く同じですが、勢いで行ってしまうホロヴィッツと、決して勢いではいかないブレンデルと、対照的です。でも、それが同居しても全く違和感がないというのが素晴らしいのです。
そして、二人とも音の一つ一つが聞き取れるという、その正確性も素晴らしいです。二人ともリフレインの部分ではきちんとpにしていますし(これ、古典派ではとても重要です)。
モーツァルトのコンチェルトを聴く魅力はもっと深いところにあるよと教えてくれた演奏でもあります。わたしのことですから、好きになったら一途ですから、購入を基本としていたらもしかするとブレンデルしか聞かなかったかもしれませんが、こういう機会でホロヴィッツのような巨匠も聴きますと、その姿勢はやっぱり視野が狭くなるなあと思います。
聴いている音源
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト作曲
ピアノ協奏曲第22番変ホ長調K.482
ピアノ協奏曲第23番イ長調K.488
アルフレッド・ブレンデル(ピアノ)
ウラディーミル・ホロヴィッツ(ピアノ)
サー・ネヴィル・マリナー指揮
聖マーティン・イン・ザ・フィールズ教会アカデミー
カルロ・マリア・ジュリーニ指揮