今回のマイ・コレはメサイアの抜粋です。
これは一枚だけですが、本来は3枚組になる長い曲です。そのエッセンスを詰め込んだ一枚となっています。
一応、メサイアがどんな曲になっているかがよくわかる構成になっていまして、第1部、第2部、第3部の三部構成になっているのですが、そこからメサイアの核となる曲が抜粋されています。
メサイアはもちろん、聖書を題材にしたものですが、しかしここではなんとイエスも出てきませんし、もちろん弟子も出てきません。アリアもありますがだれかをテーマとしてうたわれているわけではないのが特徴で、しかしそれでいて聖書のテクストがよくわかる構成となっています。
その意味では、私はこの曲から宗教曲に入ってよかったなと思います。聖書の流れを大まかに把握することができたからで、その効果はのちにバッハのヨハネ受難曲を聴いたときに現れました(それについてはまた取り上げた時に)。
この演奏は古楽ですが、実は買った時にはモダンでほしかったのです。ところが、買った十数年前、日本は空前の古楽ブーム。モダンの演奏など隅に追いやられていた時代です。それは現代でも同じですが、今であれば古楽は一つの形態として認知されているので探せばモダンも存在しますが、当時は国内盤輸入盤ともに古楽しか手に入らないくらいのブームだったのです。
正確にはモダンの演奏も有りましたが数が少なすぎて、瞬く間に買い求められ売り切れ。そこで、レコード店(この場合は銀座の山野でしたが)の売れすじとして在庫があったこの演奏を買ったのです。
まあ、すぐ前にブリュッヘンの第九を買っていたので古楽演奏がどんなものかはわかっていましたが、それでも本当はモダンがほしかったのです。その上メサイアは初めて全体を聴くわけで、いわば「お試し」として買った一枚です。
しかし・・・・・・実は、聞いた途端「古楽のほうがいいのと違うか」と考えるようになりました。
古楽の特性として、性能がよくないからこそテンポが速くなるという点がありますが、それが絶妙にマッチしているのです。しかも、力強くもある。え、古楽ってこんなにも世界が広かったのか・・・・・と認識させられました。
その上、キリスト教、特にイエスの生涯に興味を持つきっかけにもなった一曲で、間違いなくこの曲を聴いたからこそ、その後モーツァルトのミサ曲を聴き始め、さらにはバッハへと足を踏み入れることになったのだと思います。
どんな縁で名曲にめぐりあうか、わかりませんね。
聴いているCD
ゲオルグ・フレデリック・ヘンデル作曲
オラトリオ「メサイア」抜粋
アーリーン・オジェー(ソプラノ)
アンネ・ゾフィー・フォン・オッター(コントラルト)
マイケル・チャンス(アルト)
ハワード・グルック(テノール)
ジョン・トムリンソン(バス)
トレヴァー・ピノック指揮
イングリッシュ・コンサート
(ドイツ・グラモフォン POCG-7099)