さて、前に「今日の一枚」のコーナーだった今月買ったCDをご紹介するものをご紹介する新コーナー「今月のお買い物」、ようやく登場です。
今月は予定の関係が合ってなかなか買いに行けなかったのです。ですので、今月も半月過ぎた今回が初登場となりました。
で、4枚も買ってしまった・・・・・
完全に勢いですが、ただ今月は予算を2000円ほど上積みしてあったので、当然といえば当然なのですが(いや、だからお金がたまらないのです)・・・・・
ですので、今月はこれから年末にかけての間だけ、コーナーの曜日編成を変更します。いつもは月曜日と火曜日の「マイ・コレクション」を月曜日だけとし、さらに水曜日と木曜日の「神奈川県立図書館所蔵CD」も水曜日だけとします。そして、その空いた曜日を「今月のお買い物」とします。
さて、それで今回はいつもながらのバッハです。SACDハイブリッドになって2枚目。BCJのこのシリーズですが、このCDからしばらく合唱がありません。私の大好きな合唱がない・・・・・
カンタータといいますと合唱を思い起こす方も多いと思いますが、決して合唱ばかりだけではありません。独唱のためのものもあります。今回収録されているものはそんな中の1曲です。
店には輸入盤と国内盤と2種類あったのですが、迷うことなく比較して国内盤を買いました。日本語解説がついている上に、値段的に輸入盤と60円しか違わなかったからです。これが500円くらいの差があったら、恐らく輸入盤を買っていたことでしょう。
結局、国内盤と言いながら、ディスクはどちらも海外製なのです。単に国内盤は日本語解説がついているに過ぎません。CDの品質はどちらも一緒です。熱にめっぽう弱い・・・・・昨日ご紹介したCD−Rの方がよほど丈夫です。
日本の団体が世界のレーベルから出版しているのは誇りなのですが、この点に関してはいつも「もったいないな」と思っています。
ただ、今回国内盤を買ったのは単に日本語解説がついているからではありません。BWV1127という、最近(2005年)に発見された新たなバッハの作品が収録されているからです。そして、その解説を読んだとき、国内盤を選んで間違いなかったと思いました。
収録されているのは以下の3曲です。
・カンタータ第51番「すべての国よ、神を褒め称えよ」BWV51(バッハ事典では「全地よ、神に向かいて歓呼せよ」となっていますが、国内盤訳に従っておきます)
・アリア「神と共にすべての事に当たれり」BWV1127
・結婚カンタータ「おお、ほほえむ吉日、願ってもない佳節」BWV210より2.アリア「歌たちよ、魂のこもった調べを奏でて」
まず、このアルバムの特徴としましては、それまで続いてきた年代順が崩れていることです。カンタータ第51番は成立が1730年と仮定されていますし、アリアBWV1127は今度はヴァイマール時代の1713年とされています。結婚カンタータは1738年5月から1741年10月にかけてとされ、今回は全く違う時期の作品が一同に会しているという内容です。
それと、カンタータのアルバムのはずなのに、メインはアリアであるということです。総時間のほとんどがBWV1127に費やされています。このBWV1127というのは2005年に発見されたあらたなバッハの作品で、私の手元にあるバッハ事典でも記述が全くありません。ですので、ブックレットの解説がすべてで、その点でも国内盤でよかったと思っています。
カンタータ第51番は実は用途がよくわかっていない作品です。内容としては、神を称える明快なもので、明るい曲調が貫き通されています。構成的には確かに1724年以降であると考えて差し支えないと私も思いますが、その明るい内容というのはむしろヴァイマール時代を想像してしまいます。
アリアBWV1127はザクセン・ヴァイマル領主ウィルヘルム・エルンスト公の1713年の誕生日を祝うために作曲されたものと推測されています。この時期、実はまだバッハは宮廷オルガニストでしかなく、カンタータを作曲する立場にありませんでした。ただ、最近の研究では1713年にも作曲されているというものもあり(バッハ事典はそれによっています)、実際に作曲をしてなかったとは言えないようです。
ただ、立場上カンタータの作曲を「職務」としなくても、それ以前のミュールハウゼン時代からカンタータの作曲はしていましたから、環境さえ整えばその合間を縫って作曲をしていた可能性は充分あります。そんな予感さえさせる作品です。アリアといっても12節、つまり12番まである堂々たる作品です。カンタータというのには構成的には違っていますが、規模からすればカンタータに比肩します。
歌詞の頭文字をつなげますと、ザクセン公の名前になるという歌詞のつけかたといい、構成上カンタータに引けを取りません。確かに、カンタータを作曲できる立場ではなかったかもしれませんが、こういう形式だと逆にバッハのようなまだ見習いの立場が作曲するということもありだったかもしれません。その内容は領主のお祝いですが、カンタータでない以上祝祭といっても例えばどなたかのカンタータの前に演奏されたかも知れません。それを考えますとバッハに白羽の矢が立った、と考えてもよさそうです。
ただ、私はこの曲をどこかが聴いたことがあるような気がするのです。今まで買ってきた中のカンタータで・・・・・それがどれと明確にいえないのが歯がゆいのですが、私も学者ではないので残念ながらこれに使われているというのをすぐに指摘できません。バッハも過去の作品を使いまわすことは良くやっているので、どこかで聴いても全く不思議はないと思っています。
結婚カンタータは実は既に出ているアルバムからの再録なのですが、実はまだ私はそれを買っていないのです。いつか買いたいと思っているところで聴くことができてよかったです。いわゆる「世俗カンタータ」といわれているもので、バッハといいますと宗教音楽というだけではないという部分を知ることができます。ただ、世俗カンタータといいますといわゆる農民カンタータのイメージがありますが、しかしながら音楽は宗教カンタータと違いはなく、違いというのはその用途と歌詞の内容であると言っていいでしょう。
私も是非とも世俗カンタータが欲しくなりました。まあ、いつもどおりそれがいつになることやらという感じですが・・・・・少なくとも、県立図書館にはありません、残念ながら。
本来、このアルバムはソロ・カンタータ、つまりソリストのみのカンタータの1枚目のはずなのですが、どうやらアリアに費やされているようです。しかし、そのソロの魅力を十二分に楽しめる一枚です。
聴いているCD
バッハ カンタータ全曲演奏シリーズ30
キャロリン・サンプソン(ソプラノ)
鈴木雅明指揮
バッハ・コレギウム・ジャパン
(キングレコード KKGC-15)
※輸入盤ですと、BIS-SA-1471になります。
※都合により、日曜日に掲載しました。今回は変則で日曜日に二つエントリをあげさせていただきます。