かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番「皇帝」

火曜日の「マイ・コレクション」、今回はベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」です。ズービン・メータ指揮、イスラエル・フィル、ピアノはラドゥ・ルプーです。

このCDを買ったきっかけは、もともと我家にはLPで持っていたため、ということがあります。で、本当はそのLPと同じ演奏が欲しかったのですが、なかったので買ったのがこのCDです。これも高校2年生のときだったかと思います。なけなしのお小遣いを握り締めて買った一枚です。

イスラエル・フィル・・・・・当時の私にとって、イスラエルという国家自体がある意味不気味な存在でした。当時中東戦争が頻発していた時代。イスラエルといえば戦争国家、というイメージが強かったのです。それに、強烈なシオニストというイメージもありました。

ただ、戦争に強い国家のオケは統率が取れていてすばらしい、という法則もあります。その点だけを期待して買った一枚です。

そして、その統率が取れているというのはある意味違ったのですが・・・・・でも、このCDもスウィトナーの第九のとき同様、いい意味でその期待を裏切ってくれました。テンポが全体的によく引き締まり、ロマンティシズムと緊張感が同居する、私好みの演奏だったのです。

そのおかげで、この皇帝もこの演奏以外、全く聴けないというジレンマに陥ってしまいました・・・・・それほど、私にとって強烈な印象を与えた演奏です。

実際、その後私は念願だったベートーヴェンのピアノ協奏曲全集(これも、また取上げます)を買うことになるのですが、その皇帝の演奏をなかなか好きになれませんでした。それがようやくいいなと思えるようになるまで、10年くらいの年月を必要としました。

それくらいのインパクトが、この演奏にはあったのです。

ルプーのピアノもさることながら、オケのイスラエル・フィルもすばらしいのです。この演奏にダイナミックさを求めるべきではないだろうと思います。それよりも、アインザッツの強さです。それによってこの曲をさらなる高みへと登らせています。そここそ、イスラエル・フィルが「統率の取れている」点なのです。

どうしても、私たちは統率が取れているとなるとフルトヴェングラーのような演奏を思い描いてしまいます。ところが、イスラエル・フィルの演奏はそうではなく、実はヨーロッパの伝統の上にしっかりと立脚した、「横の線であわし、アインザッツをそろえる」ことによってアンサンブルを作るという、いわゆるとても地味なものなのです。

この点が、実は私ははじめて聴いたときになかなか理解できませんでした。それが理解できるようになったのは、合唱団に入って、自分でアンサンブルをあわすようになってからです。そのときにもう一度この演奏を聴きなおしてみたとき、「この演奏はこれほどすごいものだったのか!」と開眼しました。

オケの堂々たる演奏と、それを美しく彩るピアノ・・・・・特に、左手と右手のバランスが絶妙です。そのアンサンブルのすばらしさがはっきりとわかる点もこの演奏のすばらしいところだと思います。

しかし、その影響でそれ以降数年、本当にこの演奏しか聴けなくなってしまいました・・・・・

現在では、そんなことはなくなりましたが、それでも、私が持っている演奏の中では一番です。

何のために全集を買ったか、わからなくなってしまったくらいですから・・・・・


聴いているCD
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
ピアノ協奏曲第5番変ホ長調作品73「皇帝」
ラドゥ・ルプー(ピアノ)
ズービン・メータ指揮
イスラエルフィルハーモニー管弦楽団
(LONDON F35L-50134)