予告どおり、ベートーヴェンのピアノソナタを順番に取上げます。ピアノ三重奏曲は、またの機会に譲ることにします。
実は、その理由がピアノソナタ第26番「告別」を取上げたいという、非常に個人的な理由にあるのですが、お許しください。
さて、今日はピアノソナタ第1番です。ベートーヴェン最初のピアノソナタ。どんなに明るい曲だろうとわくわくして借りましたら・・・・・
短調でした。
わお!短調かよ!すげー・・・・・
いきなりですよ。第1番から、短調です。短調はその作曲家の内面を描いているといいますから、のっけからベートーヴェンはピアノソナタに個人の内面をぶつけてきた、ということになります。
しかも、内容としても、すでに彼の個性が見受けられ、当時の聴衆からすれば確かにこれは衝撃だったろうなあと思います。
和音の響きはまだモーツァルトの時代的な部分もありますが、しかしここには確かに青年ベートーヴェンがいます。なんとなく高貴な、しかもはつらつとした音楽です。それでいて陰影があり、一言で言いますと、しびれるのです。
しかも、これ作品2なんですよね。しかも、この曲を含め、ピアノソナタ3部作。作曲年は1795年(1番だけ1794年という説も。実際、私が借りましたCDには1794年とあります)とほぼ同時期に作曲されています。
あの大作曲家で師である、フランツ・ヨゼフ・ハイドンに献呈されています。
4楽章形式を取っていて、堂々とした形式を持ちます。詳しいことはウィキペディア等に譲りましょう。とにかく、最初からいきなりスケールの大きいものをたたき出してきたのです。しかも、ピアノで。
実は、いまモーツァルトのピアノコンチェルトをピリオド楽器で聴いているのですが、当然ピアノはピアノフォルテといい、ピアノの前身の楽器を用いています。ベートーヴェンの時代、特にこの1番の時代は当然ピアノフォルテであるのですが、その音を聴いて、その上でモダンのベートーヴェンのピアノソナタを聴いてみますと、いかにベートーヴェンが時代の先を行くような、とっぴなことをやっているかがよくわかります。しかし、それをモダンで弾いてしまうと、まったく問題がないわけで、ここがベートーヴェンのすごい点だとつくづく思います。
私が聴いたのはモダン楽器で、演奏は山根弥生子。最後の曲まですべてこの方の演奏を取上げます。ですので、いろんな演奏をお聞きになられている方には、少し物足りないかもしれませんが、ご容赦ください。
このシリーズはすべて日本、特に東京近郊のホールで収録され、この演奏は秩父で収録されました。日本にはこんなにいいホールが都心じゃなくてもあるのだなとつくづく感じます。淡々と音楽は流れてゆきますが、それが聞き飽きないのです。聴けば聴くほど、味が出ます。特に、第4楽章は圧巻です。