かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今日の一枚:ブルックナー ミサ曲ヘ短調WAB28(原典版)

予告どおり、ブルックナーを取上げました。これは、はっきり言いまして、衝動買いでした。

衝動買いはずいぶん久しぶりのような気がします。それだけ、経済状況が好転したということでもあるのですが・・・・・

といっても、昔は衝動買いをするときには、万単位で買っていましたが、最近はなるべく5000円以内でと考えています。この不景気ですし、いつまでいまの仕事を続けられるか、わかりませんので・・・・・

でも、そんな中でも、これははずせないと思いました。ブルックナーという、私にとっては最近やっと聴くようになった作曲家であるにも関わらず。それでも買った理由は、ロケーションと合唱団にあります。

まず、指揮者は朝比奈隆。日本のブルックナー専門家の第一人者と言ってもいいですね。この方がいらっしゃらなかったら、日本にブルックナーが好きな人たちが一体どれだけいたのでしょうか。オケは当然にして、大阪フィル。ならば、ロケーションは大阪かと思いきや、これは東京、しかも、東京カテドラル教会マリア大聖堂なのです。

合唱団は、TCF合唱団。アマチュア合唱界では有名な、辻正行先生が率いる、アマチュア合唱団の選抜合唱団です。ここで歌える方たちは、アマチュアでもトップクラスでしょう。西の豊中混声合唱団、神戸中央合唱団などとと並び立つ合唱団です。

私も一度だけ、少年合唱団の演奏会でこの教会の響きを体感しました。ブックレットのエンジニア解説では、音は横ではなく上で上がると書いてありますが、確かにその通り上へ上がります。しかし、教会であるがゆえに、音はさまざまに反響し、上からだけでなく、左右からも音が自分を包み込むように響くのです。それは、聴くほうにも驚くべき効果を与えますが、演奏するほうもアンサンブルを保つのに苦労することを意味します。

しかし、それはさすがプロ。難なくこなしています。このあたりが、朝比奈さんと大フィル、そして辻先生と合唱団の信頼関係なのですね。

ライナーノーツを読んでみると、このホールを選択したのは、他でもない朝比奈先生だそうで、なんとなく、朝比奈先生の意思が伝わってきます。なぜなら、ブルックナーという作曲家は、もともとオルガニストで、声楽曲も多く作曲しているからです。私などは、現在交響曲より声楽曲のほうにはまっています。そういう意味では、ブルックナー初心者であるにも関わらず、常道からは外れているといってもいいでしょう。

東京カテドラル教会マリア大聖堂は、残響が長く、空席時で8秒(7秒という話しもありますが)、満席時で4秒という、おそらく日本では通常のホールではない残響時間なのです。もっと簡単に言えば、これこそ「教会の響き」なのです。話しを聞いたことがありませんからうかつなことは言えませんが、朝比奈さんはブルックナーがもともとオルガニストであり、敬虔なキリスト教徒であったということを大事にされていたのではないか、という気がしてならないのです。そのあたりは、もう少し著作を読んでみたいと思います。

実際、演奏を聴いていると、これが日本で収録されたとは思えないほどです。ラテン語の発音でようやく「あ、日本の団体だな」とわかるくらいです。

ライナーノーツには、朝比奈さんのブルックナーに対する姿勢が譜読みを例に挙げて掲載されていますが、なるほどなと思います。詳しいことは、ブルックナー好きな方に任せましょう。私はまだ初心者ですから。あくまでも、私は合唱をやってきた経験で納得しただけですから。

この曲の紹介に移りましょう。ブルックナーは生涯ミサ曲をレクイエムを含め7曲(ウィキペディアでは3曲となっていますが、それはおそらく「ミサ」曲のことであり、ミサ・ソレムニスや死者に対するミサ曲であるレクイエムなどを除いた数だと思います)書いていますが、これはその6曲目にあたります。作曲は1868年で、初演はもう少し後の1872年に行われています。作曲時の年齢は44歳。交響曲は第1番を完成させています。この時系列からも、ブルックナーがもともと交響曲作曲家ではなく、宗教曲関係者であることがよくわかります。実際、ウィキペディアなどで調べてみますと、この時期のブルックナーオルガニストとしての仕事が主だったようです。

当時、ブルックナーはひどい神経症であったようで、そのために温泉療養を行っていたほどです。ブックレットの解説によりますと、それでも作曲をやめなかったのは、この曲が教会からの委嘱であったため、作曲はキリスト教徒としての義務であると考えたからだといいます。

初演時には「この曲に比肩し得るのはベートーヴェンのミサ・ソレムニスだけだ」といわれたそうで、確かにミサ曲としては壮麗で、随所に美しい部分が見られます。聴いていてうっとりとしてしまいます。私は初心者なので、ブルックナー終止などに注目して聴く訳ではありませんが、その構成や壮麗さは、続く交響曲に引けを取らないと思います。その後の交響曲のすばらしさを予見させる作品だと思います。


ブルックナー ミサ曲ヘ短調WAB28
中沢圭(ソプラノ)
原直子(アルト)
林誠(テノール
勝部太(バス)
TCF合唱団(合唱指揮:辻正行
朝比奈隆指揮 大阪フィルハーモニー交響楽団
(VICC-60655)

※「東京カテドラル教会マリア大聖堂 演奏」で検索しますと、この演奏のライブのサイトや、CDの紹介をしているほかのサイトなども調べることができますよ!