かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:サティ 作品集1

今月のお買いもの、平成27年12月に購入したものを、新年になりましてご紹介することにいたしましょう。今回はディスクユニオン吉祥寺クラシック館にて購入しました、サティの作品集です。

久しぶりに吉祥寺クラシック館へ行きましたけれど、吉祥寺もこじんまりとしつつも、いい品ぞろえをしているなあと、感心しました。そこで、思い切って訊いてみたのです。「サティの『ソクラテス』って、置いてます?」

いやあ、無いですね〜と言う店員との会話のその30秒ほど後に見つけたのが、このCDです。確か、308円だったかと・・・・・

サティの希少な作品が入って、この値段。ケースが壊れてたためのようですが、ケース代を追加しても、500円ほどです。なんとまあ安いこと!これが中古のいいとこですね〜。

2枚組になっていまして、今回はまずその1枚目をご紹介します。

サティと言えば、殆どのクラシックファンの方が、ジムノペティを想起するのではないかと思います。20年ほど前、一大ブームになった時に取り上げられたのがジムノペティですし、私もサティはそこから入っています。

ただ、調べてみれば、実に多彩な作品を生み出していますし、むしろサティの音楽の特徴はブームになった時に言われた「間」ではなく、むしろ定型の繰り返し、「オスティナート」であるという事に気づかされます。

エリック・サティ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%AF%E3%83%BB%E3%82%B5%E3%83%86%E3%82%A3

実はオスティナートという点こそ、サティが革新的な音楽家であったと言う証明なのです。以前、このブログでもモーツァルトの「音楽の冗談」という作品を取り上げたことがあったかと思います。そこで出てくる禁則に、繰り返し、つまりオスティナートがあるのです。

マイ・コレクション:「音楽の冗談」 モーツァルト・セレナーデ集
http://yaplog.jp/yk6974/archive/877

音楽の冗談 K.522
http://www.marimo.or.jp/~chezy/mozart/op5/k522.html

で、モーツァルトは思いっきりオスティナートさせています。その上で調整はめちゃくちゃ。面白いったらありゃしませんが、でも不思議なことに、現代人はおそらく、殆どの人が「このどこが面白いの?こういった調性や和声はよくあるじゃない」とけげんな顔をするはずです。その始祖となった一人が、サティなのです。

まるでこのモーツァルトの「音楽の冗談」を冗談ではなく普通にするために作曲をしたかのように思えるほどです。この第1集に収録されている作品群は、殆どが旋律線がはっきりしており、どこが調性無視なの?って思うかもしれませんが、つまりそれは、調性を無視しているのではなく、調性に囚われていないという事なのです。

サティは決して調性を無視していません。それに囚われていないだけなのです。ですから、不協和音が鳴り響くような作品はほとんどなく、むしろ現代のポピュラー音楽に似た作品が多いのです。実はポピュラー音楽は調性指定があまりないという事、知っていましたか?勿論、記号はついていますが音符ごとに次々と転調するものが多いのが通常です。サティが目指したのはそこなのですね。

ですから、ポピュラー音楽を聞き慣れている人にとっては、サティの音楽はとても聴きやすく、親しみやすい作品です。このどこが後にセリ―などに繋がっていくんだって思うでしょうが、あくまでも調性の中でそれにどこまでとらわれないかを突き詰めていったのがサティだと言えるでしょう。

前半の歌曲集はソプラノに表現力が求められる作品が多く収録されています。第1曲目の「ジュ・テ・ヴ」は有名な作品ですが、続く作品群の中にはおどけたものもありますし、まるでよっぱらったようなものもあります。さすが、カフェのピアニスト。カフェでのよしなしごとが、はっきりと歌い上げられていて、お洒落です。ソプラノのボナッツィは本来メゾですが、どの作品でも艶のある歌声を聴かせてくれていて、自分がまるでカフェにいるかのようです。

中間はピアノと弦楽アンサンブルとの作品が並び、こちらは多少不協和音が並ぶ作品です。しかし、静かに演奏されているこのCDは、確かにサティの音楽の特徴が「間」であるという事を教えてくれます。ただ、それはサティの音楽の一面にすぎません。その前に収録されている歌曲は、ピアノ伴奏部分には間があるものが多いものの、旋律部である歌唱部はそれほど間がある訳ではありません。むしろ、バロック音楽にも似た構造を持っており、サティが教会音楽の、しかもルネサンス期あたりに原点を求めたことが窺えると言えるでしょう。

後半の管弦楽作品ではオスティナートが使われているものがおおく、その代表が最後に収録されている「本日休演」です。サティ最晩年の作品ですが、その繰り返しが何とも諧謔的です。そこが作品自体の魅力にもなっていますが、思い起こせばサティが作曲した時期は民謡採集がブームになっていた時期ですし、また若き日には日本の音楽とも出会っています。伊福部昭が得意としたオスティナートを、サティがなぜ採用しているのか・・・・・・そこには、19世紀後期ロマン派までに発達した西洋音楽とは別な音楽を、自分の中に取り入れて、新たな地平を切り開こうという自立した意思が感じられる作品です。

この管弦楽は比較的小さな編成となっており、そこがまたサティの作品が持つ洒脱さにぴったりなのが素晴らしいです。「本日休演」はバレエ音楽ですがハチャメチャなストーリーで、芝居小屋という表現が適切なくらいの場所こそ一番引き立つのだと思いますが、まさにそんな芝居小屋での演奏を想起させる編成が、何とも楽しい演奏を聴かせてくれることでしょう!徹底的に19世紀までの西洋音楽へのアンチテーゼにこだわったサティという作曲家を知り尽くした演奏だと思います。

勿論、このほかにもサティの管弦楽作品の演奏では素晴らしいものもありますが、私はあまり大きくないほうがサティという作曲家の内面に迫って行けるような気がします。その点で、この演奏はぴか一だと言えるでしょう。




聴いているCD
エリック・サティ 管弦楽・ピアノ・声楽作品集
(VoxBox CDX5107)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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