かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:バッハ 無伴奏チェロ組曲1

今回のマイ・コレは、バッハの無伴奏チェロ組曲の全曲から、1枚目をお届けします。鈴木秀美のチェロの演奏です。

前回のフランス組曲よりはもっと早い時期に購入をしていまして、いつか整理した時に棚ではこの場所に来ているという結果をなった次第です。

ですので、実はフランス組曲やゴルトベルクでさえ、実はこの演奏よりも後の購入なのです。

以前から、バッハの無伴奏チェロは好きでした。特に有名な第1番は私のおきにいりです。しかし、全曲を買い求めたきっかけは、実に悲劇的なことが原因でした。それは、阪神大震災

その直後に小澤征爾ロストロポーヴィッチが共演したコンサートが行なわれましたが、その時にアンコールで演奏されたのが、第5番の第4曲目、サラバンドだったのです。

その後、私は銀座山野楽器で何度もCDを吟味し、買い求めたのがこのCDでした。いろんな演奏者がCDを出していますが、このCDはとても面白い実験をやっているCDでもあるのです。

楽器は骨董品、しかし弦は現代という試みをやっていまして、それがいったいどんな音色になるのだろうと、わくわくどきどきしながら買い求めたのを昨日のように思い出します。

本当は番号順でほしかったのですが、これをえらんだ理由がやはり第1番と第5番が一つのCDに収まっているという点が当時ポイントでした。売れたんですね、無伴奏チェロ・・・・・

此れしかないという状況に陥っていました。しかし、当時それほどお金があるわけではなく、売れているもっと高いものは何時入荷するかわからないという状況。予算と在庫を勘案して、さらに曲順を考慮した末にえらんだのがコレでした(もうひとつ付け加えれば、鈴木秀美氏はBCJのチェロ担当)。

http://www.hidemisuzuki.com/index.php?option=com_content&view=article&id=27&Itemid=105

さて、無伴奏チェロってどういうこと?と思っていらっしゃる方もいるかもしれませんので解説しておきますと、以前、ソナタではピアノが付くのが原則ですと申し上げました。そう、実はこの曲は所謂バッハが作曲したチェロ・ソナタ集なのです。しかし、ピアノが付かないので、無伴奏と呼ばれます。

無伴奏チェロ組曲
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%84%A1%E4%BC%B4%E5%A5%8F%E3%83%81%E3%82%A7%E3%83%AD%E7%B5%84%E6%9B%B2

この演奏は組曲自体がいくつか個性的な特徴を持つので聴きどころが満載なのですが、1枚ではそれほどの強烈な特徴はなく、むしろまずはこの組曲を俯瞰できるように編集されています。収録曲は第1番、第4番、第5番。

第1番は簡単な旋律が次々に登場して来ますし、第4番は転調の妙やテンポの変化を楽しむ内容です。個性的なのは最後の第5番です。スコルダトゥーラという調弦法を、いったいどう演奏するのか・・・・・

ブックレットには特別の記載がありません。録音から察するに、原典通りで演奏しているように思われます。音色が濁る部分があるんですね。それは編曲では難しいかと思います。

「チェロのA弦(音域がいちばん高い弦)を低くGに調弦して弾くことを前提に楽譜が書かれている。このような手法をスコルダトゥーラ(変則的調弦法)という。A弦を緩めることによって音量や音の張りなどに不利が生じることを理由として、通常の調弦のまま弾けるよう簡易に編曲された楽譜をもって演奏されてきた。現在では本来の響きの良さを求め、技巧的に難易度が高くなってもオリジナルの楽譜通り演奏するチェリストも増えている。」

このウィキの記述は、こういったことを意味するのです。BCJの一員だから買ったというのは、バッハの曲にはこういったことがあるからなのです。実は、購入する前には無伴奏チェロにもこういった考証すべき点があるとは思わなかったのですが、ある程度予想は出来たのです。パッケージに第6番ではわざわざ別のチェロを用意しているとか、楽器はピリオドだけれど、弓は現代であるなど。そういった情報から、私は無伴奏チェロには何か知らない技巧的な秘密があるに違いないと推理したのです。

それは見事に当たった、という訳です。ですから、第5番では当然ですが、元の楽譜に準じて演奏しています。

準じてという表現を使うのは、この演奏が決して楽譜通りではないからです。この無伴奏チェロは、直筆譜が残されておらず、妻であったマグダレーナのと、18世紀になって写されたとされるケルマーのものの二つの筆写譜から現在楽譜が構成されています。とくに参照されているのがマグダレーナのもので、その理由は夫ヨハン・セバスティアンの筆をよく研究し、人目では見分けがつかないほどであり、しかも比較的正確であることです。しかし「比較的正確」であることから、間違いも指摘されることも多く、鈴木氏はそこにメスを入れたのです。

もともと、マグダレーナはチェロ奏者ではありません。いっぽう、バッハはチェロではないですが弦楽器を演奏します。そこから、マグダレーナが犯してしまった間違いを推理して、それを正して演奏しています。具体的にはスラーのかけ方です。

実はこれは当時合唱をしていたわたしにとってはとても有意義な指摘でした。スラーをどう演奏するのか・・・・・あるいはタイは?合唱団であれば一度は歌ったことがあるであろうヘンデルの「メサイア」より「ハレルヤ」を如何歌うのか?それを突きつけた演奏だったからです。

言葉にはしにくいのですが、ただたんに音を伸ばすのではなく、スラーをいったん切るようにして次の音へ行くなどがそれで、実に歌うたいの私にとっても衝撃的な演奏であったのです。

それをしますと、自然とアクセントが旋律に付き、淡々と弾いているにも関わらず、此方の体が動いてくるようになります。今風で言えばノリノリですね。ただ端正に弾いているだけなのに、自然と体が動いてしまう・・・・・不思議な演奏ですが、それはきちんとしたスコアリーディングから出でたものでした。

この演奏程、スコアリーディングというものがいかに大切かを学んだものはありません。



聴いているCD
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
無伴奏チェロ組曲第1番ト長調BWV1007
無伴奏チェロ組曲第4番変ホ長調BWV1010
無伴奏チェロ組曲第5番ハ短調BWV1011
鈴木秀美(チェロ)
(DHM deutsche harmonia mundi BVCD-1632-33)



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