かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:シューベルト交響曲全集2

今月は2週間ほど毎週金曜日にも「今月のお買いもの」コーナーを設けます。

今月のお買いものシューベルト交響曲全集の第2回目です。第2番と第4番が収録されています。

どちらもシューベルトの初期の作品ですが、はつらつとしたものを感じます。

まず、第2番ですが、1815年に完成した作品です。モーツァルトベートーヴェンの影響が濃い作品で、シューベルトがどんな作曲家に影響を受けて交響曲は作曲したのかがよくわかる作品でもあります。

交響曲第2番 (シューベルト)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC2%E7%95%AA_(%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88)

ここで押さえておきたいのは、作曲年です。1815年といえば、ベートーヴェンであれば第8番を作曲したあたりで、ちょうど中期の最後のころに当たります。つまり、ベートーヴェンの中期はロマン派の萌芽がそこかしこにあった時代でもあるということが理解できるでしょう。

この第2番においては、構成的にはどちらかといえばモーツァルトに近いですが、実際はベートーヴェンの第8番も念頭に置いたのではと思える部分もあります。それが、第3楽章のメヌエットです。

交響曲第8番 (ベートーヴェン)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC8%E7%95%AA_(%E3%83%99%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BC%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%B3)

シューベルトの第2番とベートーヴェンの第8番とでは、第3楽章メヌエットの構造において似通っていることが分かります。もしシューベルトベートーヴェンの8番を聴いて、この第2番を作曲したとしたら、納得がいく部分が多々あります。

学者によれば、第2番のメヌエットモーツァルトの第39番や第40番の混合であるそうですが、確かにそう聞こえます。しかし、スケルツォ風のメヌエットとなると、やはり想起するのはベートーヴェンであり、しかも第8番ということになるのです。構成はベートーヴェン、旋律はモーツァルトというコンセプトで作曲したと考えれば、ウィキのこの記述に納得がいくのです。

「第1楽章の序奏部がモーツァルトの39番の序奏に類似が認められ、それに続くアレグロベートーヴェンの「プロメテウスの創造物」序曲の主題とと似ている。」(筆者独自の観点による訂正の上引用)

なぜ第1楽章でこのようになったのかを知る一番の近道が、第3楽章にあると考えられるわけなのです。習作とも考えがちなこの作品は、しかし実際には誰ふうでもない、シューベルトの独自性が出ています。もしかするとウェーバーの影響もあるかも知れませんが・・・・・

次に第4番ですが、第2番の翌年である1816年に作曲されています。これもまだベートーヴェン存命中の時代です。彼がつけた唯一の標題である「悲劇的」という題がついていまして、音楽はより独自色を強めていますが、影響としてはモーツァルトよりもベートーヴェンが強く出ている作品です。

交響曲第4番 (シューベルト)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC4%E7%95%AA_(%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%99%E3%83%AB%E3%83%88)

多くの批評家たちが、この作品以降を高く評価していますが、確かに第2番と比べますと誰かのまねという側面はほとんど見当たりません。しかしながら私はそれでもモーツァルト短調曲のイメージをこの曲にはしてしまいます。ただ、イメージなので決してまねとまではいきませんが・・・・・

例えば、第1楽章冒頭などは、まるでモーツァルトのオペラの序曲のようです。ハ短調という調性からベートーヴェンの第5番を想起することが多いかと思いますが、音楽的にはむしろモーツァルト的な要素が散見されます。しかし、もう決して真似と言われるような旋律は在りません。モーツァルトベートーヴェンの影響下から、幾分抜け出て、あらたな作風が呈示されています。

それにしても、このちょうど1815年前後のロマン派作曲家の作品を見ますと、決してベートーヴェンの影響だけはないことがはっきりと見て取れます。ウェーバーしかり、シューベルトしかりです。むしろモーツァルトハイドンと言った作曲家の影響も強く受けています。それはおそらく間接的なベートーヴェンの影響だと考えていいでしょう。ベートーヴェンハイドンモーツァルトの作品を研究して独自の世界を創造していったように、それに続く作曲家も真似してハイドンモーツァルトを研究して独自の世界を創造していったとすれば、納得がいきます。

音楽の説明がなされるとき、たいていの評論家がいろんなことをすっ飛ばして「ベートーヴェンの影響」と語ることが多いような気がしますが、この二つのシューベルトの作品をききますと、果たしてどれが「ベートーヴェンの影響」なのかは端的にもきちんと説明する必要があるだろうと思います。音楽的なものだけではく、何に範をとるのかということも、実はベートーヴェンの影響だったのではと考えるべきなのだとわたしは思います。

ではなぜ、シューベルトは同時代の巨匠であるベートーヴェンのような作品をこの時期作曲しなかったのかという疑問が残ります。それを理解するには、実際音楽的にはどんな作曲家風になっていて、なぜそうなったのかを考えないといけません。普通、だれでもベートーヴェンの音楽がすぐそこにあればそれを参照して自分の音楽を創ろうとするでしょう。しかしシューベルトは単純にベートーヴェンを参照してはいません。もっと前の時代の作曲家を参照しています。モーツァルトが同時代に生きたハイドンから影響を受けたのとはまるで違います。

それを解くカギが、ベートーヴェンの音楽にあるわけで、そこに辿り着くためには、シューベルト交響曲も聴かないといけないのだと思います。この2曲はそこに辿り着くのに格好の教材のように思えます。

ここでも、なぜ番号順ではないのかの理由が、一つ提示されているように思います。では第1番から聴いたとして、そこにベートーヴェンの影響が強く出ていると思いますか?とムーティウィーン・フィルから質問されているように思うのです。



聴いているCD
フランツ・シューベルト作曲
交響曲第2番変ロ長調D125
交響曲第4番ハ短調D417「悲劇的」
リッカルド・ムーティ指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
(Brilliant Classics 92778/2)



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