かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ハイドン弦楽四重奏曲全集5

今回の県立図書館所蔵CDのコーナーはハイドンの弦四全集の第5回目です。

エオリアンの演奏は素直で端整。その一言に尽きます。そしてその姿勢がとても温かい音楽を作り上げています。

しかし、冒頭22番では短調の陰影ある曲が流れてきます。その上高貴さもあります。いきなりですよ・・・・・

この22番では、私たちがあまり知らないハイドンを経験することが出来ます。それもそのはず、ニ短調なんですよね、主調が・・・・・

第九やレクイエムでも使われる「ニ短調」。それをサロン音楽であり、当時まだディヴェルティメントと差がなかった弦楽四重奏曲で使うとは、驚きです。

第22番全体にニ短調で始まった緊張感が漂っており、途中ハイドンらしい穏やかな曲調になりますが、最終第4楽章では再び緊張感のある音楽へと変わります。この曲などは、アルバン・ベルクが演奏したらまた違ったものになるのになあって思います。

ただ、第1楽章はモデラートですから、やや速めのテンポ指示があることから考えますと、徐々に弦楽四重奏曲の体裁を整えてきていると言えるかと思います。緩徐楽章と舞楽章がひっくり返っているだけで、基本的には後世の弦楽四重奏曲の形式をすでに持っていると考えていいだろうと思いますので。

面白いのは次の第23番です。第1楽章はポコ・アダージョと緩徐楽章。そして、変奏曲となっています。ソナタ形式も変奏形式の一つではありますが、ソナタ形式のように再現部がないので、完全な変奏曲となっているのです。これはディベルティメントの形を残しているという感じで、面白いです。いまだ形式が定まっていないことの証左でもありますが、しかしその音楽がとても穏やかかつメロディアスで、温かいのが特徴です。なんとほっとするのでしょう!

第2楽章がメヌエットで、第3楽章がラルゴ。第4楽章がプレストと、弦四の形式とはやはりちょっと違います。ハイドンはむしろディベルティメントとして作曲したであろうと推測できます。その上で、弦楽四重奏曲集の中へ入れたって感じです。もしかするとこの時代は、どれか一つが後世の形式にかなっていればよかったのかもしれません。そのあたりはまだ詳しい著書に触れていないので何とも言えませんが、楽章のテンポから言いますとかなり自由です。いちおう、ディベルティメントの定義をウィキペディアで確認してみますと・・・・・

「貴族の食卓・娯楽・社交・祝賀などの場で演奏され、楽器編成は特に指定はなく、三重奏、四重奏、弦楽合奏、管楽合奏、小規模のオーケストラなど様々である。また形式・楽章数ともに自由である。演奏の目的を同じとするセレナーデと似ているが、セレナーデが屋外での演奏用であるのに対し、ディヴェルティメントは室内での演奏用だとされる。」(ウィキペディア:ディベルティメントの項)

となっていますから、恐らくハイドンはディベルティメントとして作曲したけれど、何かの理由で弦楽四重奏曲として曲集に入れたと考えるべきでしょう。もしかすると、ディベルティメントのうち、単に弦楽による四重奏を弦楽四重奏曲と呼んでいたのかもしれません。そのほうが可能性が高いでしょう。

最後の第24番はこんどは第22番同様の楽章の役割を与えていまして、第1楽章が急楽章、第2楽章が舞楽章、第3楽章が緩徐楽章、第4楽章が急楽章となっています。前半の第19番から第21番まではほぼ後世の形式を取っている(緩徐楽章と舞楽章がひっくり返っているだけ)ことから考えますと、形式的にはほぼ定まってきているのだけれど、外れたものもOKという感じがします。

しかし、明らかに違ってきている点もあります。それはこの3曲を含め、作品9であるこの6曲は、すべて4楽章であるということです。このあたりから、私たちがイメージする弦楽四重奏曲に近くなってきています。

これを交響曲を書き始めたころにやっているのですから、ハイドンもどれだけ新しい時代を切り開こうと努力していたかがわかります。恐らく、日本ではあまりハイドンが聞かれないことから、このような点にあまり注目がなされていないのかもしれません。優雅で穏やかな音楽に惑わされてはいけません。その奥に、ハイドンが目指した「古典派」という、当時としては革新的な音楽への情熱が潜んでいるのですから。それが分かるのが、形式に注目することなのです。そこに注目してみますと、ハイドンの音楽ががぜん違って、高みを目指していることが心へすっと入ってくるから、不思議です。

それはもしかすると、この弦楽四重奏曲に隠されたハイドンのメッセージなのかもしれません。それはもしかすると、エオリアンの素直な演奏であるが故、かもしれませんが・・・・・



聴いている音源
フランツ・ヨゼフ・ハイドン作曲
6つの弦楽四重奏曲作品9 第2集(作曲年代:1771年までには 出版年代:1770年代前半)
弦楽四重奏曲第22番ニ短調作品9-4 Hob.III.22
弦楽四重奏曲第23番変ロ長調作品9-5 Hob.III.23
弦楽四重奏曲第24番イ長調作品9-6 Hob.III.24
エオリアン弦楽四重奏団



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