かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今日の一枚:ベートーヴェン交響曲第5番「運命」・第9番「合唱つき」他(2枚組み)

今回もマイミクさんからの「おまけ」を取上げます。今回もフルトヴェングラーの指揮2枚組みです。

まず、「運命」ですが、これは運命のほかに「コリオラン」序曲と「フィデリオ」序曲がカップリングされたものです。オケはウィーン・フィルです。

「運命」はゆったりとした演奏で、古めかしいテンポですが、これがフェルマータを充分引張ってくれるので、聴いていて胸に迫ってきます。ゆったりとしたテンポは現在では嫌われる傾向にありますし、私ももう少し速めのテンポのほうがすきなのですが、それでもフェルマータを充分伸ばしてくれることで好感が持てます。

もともと、フェルマータとはその音符を6拍伸ばしてくださいという指示なのです。ですから、あまりにも簡単に通り過ぎることはできないのです。

私の手元にある楽譜、全音版を見てみますと、フェルマータがついているのは二分音符です。メトロノーム指示は二分音符で108とあります。その速度で、二分音符を6拍分伸ばしてください、という指示になります。

ただ、ベートーヴェンの場合、このメトロノーム指示は信用できない側面があるので、108という速度にこだわらず、二分音符をどのテンポで演奏するかによって、伸ばし方を決めることになります。

ですから、少なくともこの楽譜、もしくは全音版が基にした版、恐らくブライトコプフだと思いますが、その楽譜を使う以上は、私はあまりにもフェルマータを伸ばさない演奏は楽譜に忠実ではない、もしくはあえて楽譜を無視している演奏だと考えています。

私も、昔風のいわゆる「比較的楽譜に忠実」な演奏を聴いて育ったものですから、現在のあまりにもすばやく通り過ぎてしまう演奏には、やはり違和感を感じるのです。ですので、フルヴェンさんのテンポがそれほど自分にあうものでなくても、フェルマータを充分伸ばしていますので、それほどいやな演奏とは感じないのです。

そのほかはウィーン・フィルのアンサンブルのすばらしさと音の芳醇さ、ゆったりしたテンポで統率のとれた演奏が悪かろう筈がありません。あとはそのテンポが自分の好みかどうかだけだと思います。第3楽章から第4楽章にかけてのドラマティックな部分も、フルヴェンさんらしくダイナミックですばらしいです。

「コリオラン」は、フルヴェンさんのゆったりとした部分と、テンポが速く激しい部分とが同居していて、それが緊張感を出しています。ただ、残念なのはすこし音質が良くないということです。それはモノラルだからという意味ではなく、恐らくもともとのデータによるものだと思います。いくつかの年代の録音が一つにまとまっていますが、そのうち1947年というのがありますので、もしこのコリオランが1947年であるなら、納得できます。それ以外は、何の不足があろうかとおもいます。

フィデリオ」もコリオラン同様の演奏で、すばらしいです。そして、こちらのほうが音質がいいのもうれしいですね。勿論、年代的にモノラルなのですが、そんなことを感じさせないすばらしさです。

つぎに第九ですが、これは1955年のバイロイトでの演奏です。まず、第1楽章はゆったりと入ります。この楽章については、わたしはあまりテンポにこだわりません。まあ、ゆったり過ぎなければという感じです。リズム的にそれほど急いでもあまり劇的な効果はありませんし、このフルヴェンさんのテンポはそれほど遅くはないと感じます。ゆったりとしていても、充分緊張感があります。アンサンブルは秀逸です。

若干アインザッツが弱めの感じがしますが、それはもう好みの問題でしょう。ただ、強めのほうがもっと緊張感が出ますけど。ただ、それは主題展開部のティンパニ連打の部分で表現されていて、以後アインザッツはやや強めになって、はっきりとしてきます。そして、だんだんアップテンポとなって、緊張感がどんどん高まってゆきます。

第2楽章はとても私好みのテンポです。第1楽章をゆったりと入った割には、この若干のアップテンポは私にとってはとてもうれしいです。付点のリズムになることでそれが可能なのでしょうが、そうは言ってもこの楽章も速く演奏するのはそれほど簡単ではありません。第1楽章に比べればやりやすいというだけの話しです。

この楽章はスケルツォですから、中間部分がトリオになっていますが、そのトリオの部分ではゆったりとなります。この切り替えがすばらしいです。私はフルヴェンさんと同じような速度でトリオ部分も等速で駆け抜けるCDを持っています(実は、それが一番のお気に入りです)が、私はどちらもありですし、好きですね。第九は古典派と捉えるのか、それとも片足を初期ロマン派に突っ込んでいるのかで表現は違ってくるでしょうから、わたしとしてはその違いだろうと思っています。先ほどのフェルマータの解釈に比べれば、小さいものだと思います。

一方、第3楽章はとてもゆったりとしています。これほど遅いのは、私はバーンスタイン以来久しぶりに聴きました。ただ、私としてはどちらかというとゆったり目のほうがすきなのです。結構普通に速いテンポで演奏されますし、べつにそれがいやなわけではないのですが、私はあるCDのゆったりとした演奏で一度男泣きに泣いてしまったのです。それ以来、私はゆったり目のほうが好きになりました。ただ、以前は絶対にゆったり目じゃないといやだったのです。どちらも受け入れられるようになったのはごく最近のことです。

ただ、これだけゆったりとしていて、中間部分でホルンがひっくり返らないのがすばらしいです。実は、第3楽章はこここそ聴き所で、プロでも難しい部分なのです。速いテンポで演奏するのには特にアマチュアの場合失敗をしないようにという側面があります。ゆったりですと息継ぎの関係でひっくり返ることが多いので。しかし、この演奏はそのむずかしい部分に真正面から果敢に挑戦しています。ただ、それが完璧かといえば・・・・・そうとは言えないと思います。

とは申せ、この部分は本当に難しいので、あまり責めるのはやめましょう。私はやれといってもできないですから。尊敬します。ただ一言、「創意工夫」で乗り切っているとだけ申し上げておきます。それはそれで、私は戦後日本の歩みとも重なり、すばらしい側面だと思います。恐らく、フルヴェンさんの指示でしょう。

そのあとのファンファーレ部分もこの楽章の聴き所の一つですが、それが神々しい・・・・・もう、うっとりです。

そして、第4楽章ですが、これが一転、速いテンポとなり、激しくなります。ただ、ゆったりとした部分もあり、今までのテンポをさほど変えないという姿勢を一転、テンポが部分部分でゆれます。それは歓喜の主題をくりかえす場面から顕著になります。それは、バリトン・ソロが入る手前で最高潮になります。

バリトン・ソロよりあと、合唱部分はテンポが落ち着きます。そして、この第九でも問題になるのが、vor GOtt!の部分のフェルマータです。指示は全音符で6拍伸ばせです。それを、フルヴェンさんはほぼ忠実に指揮しています。それがとてもすばらしいのです。ただ、歌う側はこれがとても大変なのですけどね^^;

直後の男声合唱から練習番号Mの混声四部までは比較的速めのテンポで演奏されますが、めちゃくちゃ速いわけではありません。比較的落ち着いています。そういう意味では、前のテンポを引き継いでいます。音の一つ一つが聴き取れて、それを聴きながら混声四部が始まりますと体が打ち震えるほど感動します。実際、私は涙が出ました。

そのあと、二重フーガまではゆったりとしたテンポになって、メロディアスに歌い上げます。しかし、二重フーガからは速くなります。このあたりのフルヴェンさんの解釈は面白く感じました。そして、ソリストの職人芸ともいえる部分を快速で通り過ぎます。このあたりもそれまでの落ち着いたテンポからは一転しますので、私には興味深いです。

さらに快速なのは、最後の部分、お祭り騒ぎとも言える「抱き合え、幾百万の人々よ!」の部分です。そして、クライマックスはものすごいスピードです。合唱団はさぞ大変だったことでしょう。オケは恐らく他の演奏で慣れているでしょうが・・・・・ただ、それからはとても熱いものを感じます。寒い中でも体が火照ってくるような、そんな感じすらします。もしかすると、それは1955年という時期がそうさせたのかもしれません。

時代に翻弄され続けたフルトヴェングラー。そんな彼の人生が詰まっているような演奏に、わたしには聴こえます。



さて、この「今日の一枚」というシリーズ、約1年にわたって続けてまいりましたが、ひとまずここで終えたいと思います。以後はリニューアルさせます。基本的に、3つに分けます。

一つは、既に開始しておりますが、「マイ・コレクション」シリーズ。これは私が今まで買ったCDが棚にほぼ購入順に並んでおりますので、それを順番にご紹介しようというシリーズです。

二つ目は、「神奈川県立図書館所蔵CD」シリーズ。これは昨年から私が通っています、神奈川県立図書館で私が借りてきましたCDをご紹介するものです。勿論、返却してしまっているものがほぼ全てですので、それをリッピングしたものを聴いてご紹介するということになります。著作権の関係もありますから、なるべくCD番号まで記載するようにしますので、ご購入の際にでも参考にしていただければありがたく存じます。

三つ目が、「友人提供音源」シリーズ。これは以前に友人から提供されたCDーRを中心にご紹介します。FM音源あり、合唱団の定期演奏会の記録あり、さまざまです。

そして、この3つをできるだけ組み合わせ、曜日を決めて取上げていく予定です。初めは曜日も決めずランダムにはじめると思いますが、そのうちに曜日を固定させたいと思っています。その中で、新規で購入したCDを取上げる「今月のお買い物」という新たなコーナーを設けます。これも曜日をゆくゆくは固定しますが、いくつかのコーナーと曜日をいっしょにしたいとおもっています。一枚しか買わない月もあれば、4枚買う月もあります。ですので、これだけである曜日を固定で使うということは現在考えておりません。

このように、紙面刷新をしてゆきますので、今後ともこのブログをごひいきのほど、よろしくお願いいたします。


聴いているCD
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第5番ハ短調作品67「運命」
「コリオラン」序曲作品62
フィデリオ」序曲作品72b
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱つき」
エリザベス・ゾーンルツコプフ(ソプラノ)
エリザベス・ホンゲン(アルト)
ハンス・ホーぺ(テノール
オットー・エデルマン(バス)
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
バイロイト祝祭管弦楽団&合唱団(第九)
(TC-102)