かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今日の一枚:バッハカンタータ全曲演奏シリーズ29

今回は、前回に引き続き私がその月に買ってきましたCDをご紹介しています。引き続き、BCJのバッハカンタータ全曲演奏シリーズで、今回は第29集です。

前回から、CDがSACDSUPER AUDIO CD)ハイブリッドになりました。輸入盤ですので熱に弱いのは相変わらずですが^^;でも、少し品質は以前より良くなった感じがします。前はもうパソコンにかけますと音とびはするわで大変なこともありました。

でも、それはほとんどありませんね。大体、もう熱でだめそうだなという時には兆候があるので前もってわかります。CDが止まったり^^;品質が良くなった分、それがきちんと判別できるようになりまして、コンポではなくパソコンで聴いている私にとりましては、随分助かっています。

収録曲は、第135番、第2番、第3番、第38番と今回も4曲。勿論、コラール・カンタータです。さらに特徴は、コルネット(現代の金管ではなく、現在ではドイツ語の「ツィンク」と呼ばれるもの)とトロンボーンが4曲とも登場するというものです。今回はこの二つの楽器に焦点が当てられています。それは、ここまでは収録時間が許す限り初演の時期が近いものでまとめてきましが、今回は飛んでいることからもわかります(第135番が1724年6月25日、第2番が1724年6月18日、第3番が1725年1月14日、第38番が1724年10月29日)。

特に、コルネットルネサンス期に良く使われた楽器で、バロックの時代になりますと使われなくなった楽器です。今回のアルバムはそこに焦点が当てられています。特に今回はブックレットに鈴木氏の製作ノートが掲載されているのですが、そこでは特にソプラノ・トロンボーンの変わりにコルネットを使っているとの記述があります(第2番と第38番)。

ツィンクにつきましては、ウィキペディアに説明と写真が載っていますので、参考にしてください。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%84%E3%82%A3%E3%83%B3%E3%82%AF

また、今回はBCJの他にコンチェルト・パラティーノというアンサンブルが参加しています。それが実は今回焦点を当てているコルネットトロンボーンのアンサンブルなのです。バロック時代のイタリアで編成されていたアンサンブルの復興を目指している団体で、それを参画させているところにも、鈴木氏の高い意識がうかがえます。

ただ、全体的に目立つのはトロンボーンで、特に通奏低音部分で低く、美しく響いているのを聴きますと、天上の世界にいるかのようです。コルネットの高い響きも、また独特ですが、楽器の特性上あまり目立たないのでよく聴いていませんと鳴っているのがわかりません。ただそれがいっそうバロックの時代へとタイムスリップしたかのように聴こえます。それでいて、時代錯誤的ではない演奏はすばらしいです。BCJだけではなく、コンチェルト・パラティーノのレベルの高さを感じます。

第135番「ああ主よ、哀れなる罪びとわれを」は実はこの次の第2番の1週間後に初演されたものです。なぜかこのアルバムでは順番がひっくり返っています。歌詞の内容は一言で言いますと「罪びとの改悛」です。ともすれば重くなるテーマを、バッハ得意の舞踏のリズムも使って聴きやすいものに仕上げています。特に、コルネットの高い響きがそれに貢献しています。恐らく、バッハはそれを念頭に置いて作曲したのではないかと思います。

第2番「ああ神よ、天よりみそなわし」は人類が神に背を向けることを嘆く内容です。BCJのブックレットではタイトルが「ああ、神よ、天よりご覧ください」となっていますが、このほうがよくわかるような気がします。人間が傲慢になって神を敬うことを失うことを憂い、神に見守って欲しいという切実な願いがこめられています。当時もこの曲は現代的課題として作曲されたようですが、それはまったく現在でも変わらない力を持つのではないでしょうか。

この曲ではトロンボーンの低く美しい低音が魅力です。

第3番「ああ神よ、いかに多き胸の悩み」は、まさしく「悩み」です。信仰を守り抜くために悩む姿が描かれています。それは何も信仰だけでなく、私たち自身が普段自らの「信念」を貫き通す姿にもかさなります。驚きましたのは第2曲目で、合唱とソロが交互に歌うという構造です。カンタータでは珍しいです。まるで受難曲のようです。

第38番「深き悩みの淵より、われ汝に呼ばわる」はこれも悔い改めがテーマです。それを温かく見るイエスの姿を歌い上げています。これもともすればつまらなくなりそうなコラールを生き生きとさせるような、例えば舞踏のリズムを使うなどの工夫がなされていています。

目立つ曲はありませんが、味のある、バッハらしさが前面にでた演奏だとおもいます。


聴いているCD
バッハ カンタータ全曲演奏シリーズVol.29
ドロテー・ミールズ(ソプラノ)
パスカル・ベルタン(カウンター・テナー)
ゲルト・テュルクテノール
ペーター・コーイ(バス)
鈴木雅明指揮
バッハ・コレギウム・ジャパン
コンチェルト・パラティーノ
(BIS SACD-1461)