2日ぶりのご無沙汰でした。今日はピアノソナタ第30番を取上げます。ここから、三連作ですね。
ウィキペディアではいろいろ詳しく書いていますが、この曲の特徴は以下の二つに集約されるかと思います。
・演奏時間が前作「ハンマークラヴィーア」のほぼ半分しかない
・最終楽章に重きを置いている
でも、形式的には三楽章です。一見しますと前時代的なわけですが、二つの大きな特徴からは、むしろこの曲の革新性を見て取ることができます。
古典派とロマン派の大きな違いというと、皆さんは何を思い浮かべるでしょうか。耽美的、でしょうか。あふれるほどのロマンティシズム、でしょうか。
いずれも間違ってはいません。しかし、形式的には古典派とロマン派は何一つ変わっていません。例えば、交響曲の第1楽章にソナタ形式を持ってくるのはどちらも一緒ですし、第1楽章の調性を主調と捉えるのも、少なくとも前期ロマン派までは一緒です。
では、何が違うのか。それは、終楽章に重きを置くかどうか、なのです。
そういう意味では、この30番でははっきりとロマン派へと移り変わるのを認識できるのです。
そして、それは音楽の内容でも認識することができます。それが、私は第3楽章だと思います。この楽章は変奏曲形式になっていて、この時期のベートーヴェンの作品の特徴でもあります(第九は、その際たる例です)。そのことだけでも意欲的な作品なのに、その変奏がフーガになっています。しかも、そのフーガは途中ジャズっぽくなります。
いや、これはジャズでしょう〜、どう考えても。そうとしか言いようがないフレーズから今度は古典派っぽいフレーズへと移ってゆきます。まさしく、変幻自在。
じっくりと聴いていますと、いやいやどうして、ハンマークラヴィーアに勝るとも劣らない名曲です。
第1楽章と第2楽章はさらっと終わってゆきますが、その「さらっと」具合がいいのです。たまりません。
この三作品にはいろんなびっくりが詰まっていますね。それは形式的なものもありますが、音楽的にもたくさんあり、まったくあきさせません。30番の第3楽章もぐいぐいと聴き手を引き込んでゆきます。
是非、そういう点にも注目して聴くと、楽しいのではないでしょうか。