今日は、ピアノソナタ第24番「テレーゼ」です。標題の理由は、献呈された伯爵令嬢の名前が「テレーゼ」だったからです。
テレーゼ・フォン・ブルンスヴィックという伯爵令嬢から彼女の絵をベートーヴェンがいただき、その返礼の意味もあったといわれます(ウィキペディア)が、そんな感じがよく現れている曲であるように思います。
形式的には2楽章と、ベートーヴェンが実験してきている形式ですが、その音楽はとても明るく、一言で言えば「素敵」なのです。まるで、朝、日の光がきらきらしているかのようです。その中で、緑が映え、何もかもが美しいような、そんな情景を想像してしまいます。
曲も約8分と短くてかわいく、ピアノソナタの中でも1、2位を争うほど短い曲です。
また、ソナタ形式も厳密なものではなくなっていて、とても気軽に聴ける曲です。そうなったのは献呈相手のせいなのかも知れませんが、もしかするとそれもこの時期のベートーヴェンが志向していた音楽性の表れなのかもしれません。
前の「熱情」から4年。それまでピアノソナタを書かなかったベートーヴェン。曲調はがらっと変わりました。「熱情」の激しさから一転、上記でも書きましたが、なんとしあわせに満たされた音楽なんでしょうか。まさか、不滅の恋人へ宛てたのでは・・・・・
でも、これは愛する人にささげた曲とも違うように私は思うんですね。なんとなく、曲に献呈された方への憧れのほかに、尊敬が感じられるのです。ひとつ身を引いたような、そんな感じです。決して、ハグするような感じではありません。積極的に愛を語っているわけでもありません。すこし距離を感じるのです。
ですので、これは「大切な人」へ宛てた手紙のようなものであり、それはラヴレターではなく、もっと気軽で、しかしながら尊敬と憧れがあるという関係のような気がします。もしかすると、彼にとっては恋愛だったかもしれませんが・・・・・
例え恋愛だったにせよ、関係としてはかなりプラトニックだったのではないでしょうか。それが曲からひしひしと感じられるのです。もう、ここには「遺書」の影はありません。前向きなベートーヴェンを見て取れます。もしかすると、だからこそ自分を客観視でき、これだけ冷静でかつ愛と尊敬に満ちた曲がかけたのかもしれません。
なんとなく、大河ドラマの「直江兼続」が頭に浮かんでしまうのは、私一人なのでしょうか。