かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:リスト ピアノ作品全集16

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、リストのピアノ作品全集を取り上げていますが、今回は第16集を取り上げます。

第16集はベートーヴェンの歌曲が主に取り上げられています。まず冒頭で演奏されるのが、トルコ風カプリッチョS388/R125。主題がベートーヴェンの音楽劇「アテネの廃墟」の、いわゆる「トルコ行進曲」です。ですから聞き覚えのある方も多いかと思います。

こういう作品がこの第16集には数多く収められていますが、このカプリッチョベートーヴェンの主題からリストの世界が構築されており、作品自身がベートーヴェンへのリスペクトになっている作品です。

続く「ゲーテによる6つの歌 S468/R123」では、ベートーヴェンの「エグモント」が使われており、特に最終曲の「太鼓は響く」はエグモントで最初に出てくる歌曲で、とても勇ましいものですが、リストは敢えてそれを最後に置きました。

3曲目は「アデライーデ」。ベートーヴェンの作品46のピアノへのトランスクリプションです。ピティナでは編曲となっていますが、楽譜を見てみないと分かりませんが、原曲がピアノと歌手という3パート(歌、右手、左手)あることを考えますと、ウィキのほうが正しいでしょう。ピアノが朗々と歌われるのはこれまた素晴らしいです。

4曲目は同じくベートーヴェンの「ゲレルトの詩による6つの歌」のトランスクリプション、S467/R122。ベートーヴェンを慕いつつ、ピアノを打楽器としてではなく、旋律演奏楽器として、これもまた十分に歌わせています。

最後が「遥かなる恋人に寄すS469/R124」。ベートーヴェンのロマンティックな点がピアノ作品としての「歌」として再構成されています。

演奏はユン・ウー・ヨー。リストがこれらの作品に込めたであろう、ベートーヴェンへの尊敬と、それを基にした自身の作品としての結実が見られるこれらの作品を、実にのびのびと表現しています。ベートーヴェンの旋律の部分は決してそのままではないので、その点を十分に考慮していますが、それが実にロマン派のピアノ作品であるという自己主張につながっており、リストの世界がここにしっかりと存在しています。

リストはベートーヴェンを神格化していましたが、その中にはやはり同じピアニストという側面もあったことでしょう。ユンはその点をしっかりと踏まえて、リタルダンドをしっかりとかけています。歌曲が原曲だからと言ってその原曲の通りにしてしまうのではなく、しっかりとロマン派しています。実に味わい深い演奏です。

他の作曲家の作品が見事にピアノ作品となってしまう・・・・・それがこれらリストのトランスクリプションの特徴ですが、この演奏からは、リストの「ベートーヴェンの作品は素晴らしいよね!」という、ニコっとした笑顔が見えてくるような気がします。しかも、リストがベートーヴェン交響曲をトランスクリプションする前の、まるで演習のような作品が、いやいやしっかりとすでにリストですよと、ユンに言われているような気がします。




聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
フランツ・リスト編曲
トルコ風カプリッチョベートーヴェンの「アテネの廃墟」の主題による)S388/R12
ゲーテによる6つの歌 S468/R123
1.ミニョン
2.彩られたリボンもて
3.喜びに満ち、悲しみに満ち(エグモント)
4.かつて王がいた(ファウスト
5.寂しさの喜び
6.太鼓は響く
アデライーデS466/R121
ゲレルトの詩による6つの歌S467/R122
1.神の力と摂理
2.願い
3.懺悔の歌
4.死について
5.隣人の愛
6.自然における神の栄光
遥かなる恋人に寄すS469/R124
ユン・ウー・ヨー(ピアノ)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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