かんちゃん 音楽のある日常

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コンサート雑感:府中市民交響楽団第92回定期演奏会を聴いて

コンサート雑感、今回は令和7(2025)年10月12日に聴きに行きました、府中市交響楽団の第92回定期演奏会のレビューです。

府中市交響楽団さんは東京は府中の市民オーケストラです。46年の歴史を重ねている団体で、府中の街に根差した活動をされています。

www.fuchu-cso.org

前回は5月に第91回を聴きに行っています。今年の4月まで、本拠としている府中の森芸術劇場が改修工事に入っていたため昨年は調布に日野と近隣のホールで開催していましたが、前回の第91回で本拠に戻り、今年2度目の演奏会となっています。

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どりーむホールは前回も感じたのですが、反響板を新しくしたのではと思うのですが・・・外壁だけという話なのですよね。今回実は開演時間に間に合わず1プロの第1楽章だけはホワイエで聴き、第2楽章からホールで聴いていますが1階でした。意外と響くんです。これは目からうろこでした。1階だと京都府長岡京記念文化会館くらい響くんです。ちょっと以降どりーむホールで聴く場合は座席を考えようかと思っています。なお2プロからは2階席で聴いたのですがやはり残響時間としてはデッドというほどではないですが2秒はない印象です。

今回のプログラムは以下の通りです。

モーツァルト 交響曲第38番「プラハ
ブルックナー 交響曲第7番

古典派と後期ロマン派の2つの交響曲という組み合わせ。最近本当に交響曲二つという組み合わせが多くなってきているように思います。前日聴きに行ったオーケストラ・オン・ピリオド・トウキョウさんも事実上モーツァルトベートーヴェン交響曲を1つずつでしたから。

前回の5月から5か月で定期演奏会ですが、府中市交響楽団さんは比較的半年ごとで演奏会をやられることが多いのですが今年は変則となりました。これはたいてい年末に府中市民第九が行われることが理由ですが前回第91回の時はまだ告知がなかったので予想していただけですが、今回はっきりとパンフレットにも記載がありさらに会場にポスターも掲示されていました。これで年末の府中市民第九も足を運ぶことがほぼ決まりました。

というか個人的にはすでにウェブサイトで確認していたのではありますが・・・そのうえで、今回のプログラムはかなり意欲的だったと言えます。第九の練習もあるのにモーツァルトブルックナーですから・・・簡単ではないです、この二人の作品は。

モーツァルト 交響曲第38番「プラハ
モーツァルト交響曲第38番は、17857年にプラハで初演された作品です。作曲は前年の1786年12月頃とされています。かなり短い期間で作曲されたことを意味します。3楽章制が採用されていますがそれゆえなのかは不明です。これはあくまでも私の推測ですが、第31番「パリ」が念頭にあったのではという気がします。「パリ」はパリ市民の好みに合わせて3楽章にされたと言われていますが、個人的にはむしろフランス音楽が進んでいるという意識の中で3楽章が選択されたのではないかと考えています。ただモーツァルト自身がフランス音楽が先進的だと考えていたかは疑問です。モーツァルトはドイツ音楽の「種」を蒔いた一人なので、簡単にフランス音楽が先進的だと考えていたわけではないと思います。ただヨーロッパではフランス音楽は先進音楽という意識はあったので、3楽章制を採用した可能性はあると考えています。この「プラハ」もそのうちの一つだろうと考えます。でなければこの作品が初演の場所から「プラハ」と呼ばれるようになったかが説明つかないからです。プラハからの要請で書かれたわけではないと言われてはいますが、個人的には想定して書いたものと言えましょう。そのプラハという街はドイツ音楽の影響下にあるはずですがおそらくフランス音楽を先進的だと考えている街だとモーツァルトが判断したが故だと推測できるのです。

ja.wikipedia.org

以下のウィキペディアのページは一見の価値ありです。モーツァルトプラハをどのように見ていたのか、おぼろげながらわかってくるかと思います。

ja.wikipedia.org

で、モーツァルトはフランス音楽あるいはその様式をどのようにとらえていたかと言えば、私の推測は遅れているものということです。上でモーツァルトはドイツ音楽の種まきをした人だと述べましたが、新しき音楽はドイツで今生まれつつあるという意識が或る程度あったのではと思います。それは後年ドイツ語によるオペラ「魔笛」として結実しますが、その経緯を考えると、モーツァルトの場合3楽章制には複雑な意識を持っていたように思います。フランス音楽は遅れたものという意識はある一方、フランス革命には心酔する側面もあったと考えられるからです。それが「パリ」と「プラハ」の編成に於いて、「パリ」にはクラリネットが配置されているのに対し、「プラハ」にはクラリネットが配置されていません。これは明らかに政治状況が異なることで社会の意識も違うことを作曲時考慮していると考えられます。フランス革命によって新しい社会になったパリ、まだ王政の下にある古い社会であるプラハ・・・同じ3楽章であっても、それが意味するのは異なると考えるのが適切だと思います。

「パリ」においては3楽章制は「自由」を意味すると推測されますが、「プラハ」においては古き象徴として扱っていると私は考えるわけで、それがクラリネットの有無です。

さて、通常アマチュアオーケストラの演奏会は、まず1プロで軽めの作品から始めるということが多いのです。今回の1プロは、私がモーツァルトが「古き象徴」と考えたと推測する「プラハ」。編成も簡素です。ゆえに今回1プロに選ばれたと考えています。ですがモーツァルトは和声が単純であるからこそ粗も出やすい曲です。また本拠である府中の森芸術劇場どりーむホールは1階は残響が長めですが2階は短めです。となるとその分粗が目立ちやすいわけです。残響が長いいいホールは残響で取り繕うことも可能です。ですがデッドなホールになればなるほど、演奏レベルがつまびらかになってしまう傾向があるのです。前日オーケストラ・オン・ピリオド・トウキョウさんを高く評価したのは、ホールの清瀬けやきホールがあまりにもデッドなホールだからです。それでもしっかりとしたアンサンブルを高いレベルで聴かせてくれました。

今回の府中市交響楽団はあくまでも市民オーケストラですから、様々な年代が参加している分、レベルとしては必ずしも均一とは言えません。それでもやせた弦の音などはほとんど聴こえてこないが常々素晴らしいと思っています。今回指揮は「わが祖国」の時も降られた大井剛史さん。昨年東京佼成ウインドオーケストラ音楽監督に就任しましたが、弦楽器もしっかりと歌わせる素晴らしい指揮者だと思います。吹奏楽音楽監督だけでは本当にもったいないと思います。ですが東京佼成ウインドオーケストラ音楽監督であるがゆえに、金管楽器も豊潤にならすのも魅力的。ホワイエで聴いていてもその演奏にはほれぼれします。

その上生き生きとした演奏でもあるんです。体はあまり動かしていませんが力強さもあり、アクセントもしっかりついているため生命力もしっかりと感じます。徹頭徹尾演奏を楽しんでいるためこちらも楽しくなってきます。モーツァルトの内面も表現しているかの要でした。市民オーケストラでここまで演奏できればもう御の字でしょう。

ブルックナー 交響曲第7番
ブルックナー交響曲第7番は、1891~1893年にかけて作曲されました。敬愛するワーグナーの死を予感しながら書いたとされていますが、実際第3楽章まではあまりブルックナー終止がないことも特徴です。

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確かにワーグナーチューバが使われていたり、編成の中でワーグナーを象徴するものもありますが、最もわかりやすいのはそれまでの交響曲とは異なりブルックナー終止があまり見られない点です。それは明らかにワーグナーの楽劇のスタイルを意識しているわけです。

ですがブルックナー交響曲はそれぞれ長いフレーズが多いのも特徴で、ブルックナー終止があるからこそ一息つけるわけですが、第7番ではそれは少ないわけです。その点もおそらく、今回1プロがモーツァルトだったという理由につながっているのではと思います。それって疲れるはずですから・・・決して若い人が多いとは言えないメンバー構成で、ブルックナー終止が少なくそのうえでフレーズが長いとなると、演奏するほうは体力勝負です。

さらに管楽器も、息をコントロールしないといけないわけです。その点今回指揮者が大井さんだったということは重要だったのではと思います。東京佼成ウインドオーケストラ音楽監督でもある大井氏だからこそ、特に金管楽器には適切な指示を出すことができるわけなので。演奏を聴いている範疇では、管楽器がおかしいということはほとんどありませんでしたし、全体的にしっかりと歌っている演奏でした。

ゆえにこの曲も1時間以上かかる曲ですがあっという間に過ぎ去っていきますし、また生命力もある演奏です。ある年代以上はブルックナーは聞きなれている曲でしょうが演奏するとなると全く違ってきます。ですがその作品をしっかりと表現できるわけですから、やはり一定のレベルを持っている団体だと言えるでしょう。最後ブラヴォウ!が方々からかかったのも当然だと言えます。ただもうちょっとだけ残響を待ってほしかった・・・コンマ1秒程度早かったです。ただそれだけ素晴らしい演奏だったのも事実なので、まあご愛敬です。

こういう演奏を聴きますと、俄然年末の第九が楽しみになります。実は今年は10月から第九の演奏が各地で目白押しで、すでに5日に京都シンフォニカさんのを聴きに行っていますが他にもう一つ10月に第九の演奏会に足を運ぶ予定を立てています。その今年最後の方の演奏が府中になりますが、ほんとに楽しみです。指揮者は大井さんではないですが、3年というインターバルを経てどんな演奏になるのか、今から楽しみです。またその後の第93回の定期演奏会ではなんとニールセン!そしてチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番。またまた府中市交響楽団さんの素晴らしい演奏が聴けるとなると楽しみです。

え?ならば小金井も聴きに行ってやれよって?はじめはそのつもりでしたが、実はそこで第九の演奏が重なりまして・・・今年も小金井よりも府中のほうを多く聞きに行っているという状況になっているのは申し訳なく思っています。ただかつて府中は在勤でもあったので、その点でご勘弁願いたいと存じます。

 


聴いて来たコンサート
府中市交響楽団第92回定期演奏会
ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト作曲
交響曲第38番ニ長調K.504「プラハ
アントン・ブルックナー作曲
交響曲第7番ホ長調
大井剛史指揮
府中市交響楽団


令和7(2025)年10月12日、東京、府中、府中の森芸術劇場どりーむホール

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。