コンサート雑感、今回は令和7(2025)年10月5日に聴きに行きました。京都シンフォニカさんの第56回定期演奏会のレビューです。
京都シンフォニカさんは京都のアマチュアオーケストラです。今年で創立40年を迎える団体です。
関東に住んでいる私がなぜわざわざ京都まで行ったかと言えば、今年7月に関西万博へ行くついでに聴きに行きました、京都ふじのもり管弦楽団さんの演奏会でチラシが挟まっていたからです。実は11月に神戸へコンサートを聴きに行く予定をすでに立てておりチケットも確保していたためどうしようかと悩みましたが、何とか資金的なめどが立ったためチケットを取りました。東京まで郵送していただいた事務方の方に感謝申し上げます。
ではなぜそれだけ迷ったのかと言えば、メインがベートーヴェンの第九だったからです。しかも今回、カップリングが同じベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」。関東民からすれば懐かしいプログラム。実はこれ、以前東京交響楽団さんが年末に第九を演奏する時のプログラムだったからです。それを京都のアマチュアオーケストラがやるとなれば、どうしてもうずく心を鎮めることは難しかったのです。
それにしても、関西のアマチュアオーケストラはあまりi amabileに掲載がないので、ほとんどチラシで広告しているみたいです。今回も実はどっさりとチラシをもらってきました。第九の演奏のチラシも予想通り入っていましたが資金計画上これ以上は関西へ遠征するのは難しいかと思います・・・できればi amabileあたりに早めに掲載してもらえると計画が立てやすく思います。
また今回指揮者とホールも魅力的だったのも行く決断をした理由の一つです。指揮者は茂木大輔さん。演奏家としてもまた評論家としても有名な方ですが、私は2年前に名古屋に第九を聴きに行った時の指揮者でもあったので興味がわきました。
今回実はちょうどJRの「秋の乗り放題パス」の期間に入っていましたが今回は使っていません。これを使ってしまうと関西で一泊せねばならず返って資金的に厳しいからです。ゆえに今回は行きに新幹線の「ぷらっとこだま」を使い帰りは夜行バスを選択しています。コンサートだけだと本当にもったいないのですが、万博はもうチケットを買っても入れない状況ですしそもそも資金的に厳しかったので、今回は在来線のみは選択をしませんでした。
茂木さんはこの名古屋の時の印象が残っていたため、興味がわいたのでした。さらに今回、ホールは京都コンサートホール。京都市交響楽団が本拠とする日本でも有数の響きのいいホールです。開館時にはNHKでも京都市交響楽団の演奏を取り上げたほどです。特に関西のそういったホールはまだ未経験だったので、ならば無理してでも行こうという決断に至りました。
名古屋の時も、茂木さんと愛知県芸術劇場という組み合わせでした。残響のいいホールと茂木さんという組み合わせが同じということもまた、今回足を運んだきっかけでもあります。
①ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番「皇帝」
ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」は、1810年に完成した作品です。ベートーヴェン最後のピアノ協奏曲で、初演をピアニストでもあったベートーヴェン以外の人物に任せたことでも有名です(そのピアニストが弟子のツェルニー。ピアノの練習曲で有名です)。
この曲の最大の特徴は、通常協奏曲にあるはずのカデンツァがないことで、アインガング程度です。ですがピアノはかなり流麗かつ壮麗な旋律を持っているため、オーケストラと対等でありつつピアノが主体にもなっている作品で、ピアニストとしては力が入る作品ではないでしょうか。
当日のピアニストは原由莉子さん。主に大阪で活躍しているピアニストでそうそうたる関西のプロオーケストラとの共演経験がある方です。全体的に音楽の表情も豊かで素晴らしい演奏なのですが、所々音が飛んでいるところが・・・プロでも間違う?それにしても多すぎます。
一方、オーケストラにはあまりそういう場面を見いだすことができません。やせた弦の音は一切なく初めから実力の高さを見せつけます。ホールの残響の使い方もうまいですし、東京のアマチュアオーケストラと比べても全くそん色ないどころかかなり高いレベルを持っています。
これはフィルハーモニカ―・ウィーン名古屋さんの時にもしてきましたが、恐らく茂木さんの指揮に原因があるように思われます。名古屋の時には打点がしっかりしているように見えましたが、今回の京都コンサートホールのほうがより見やすかったのは素晴らしいことでした。名古屋の時同様1階席から埋まっており後方席は比較的すいていましたが、その席からは愛知県芸術劇場よりもはっきりと茂木さんの指揮が見えるのですが、多少打点が甘いんです。ゆえにオーケストラは何とかリズムが取れているんですがピアニストが分かりずらかったのではと思います。いずれにせよ指揮者とピアニストとの連携が取れていないことが原因でしょう。
私が入っていたアマチュア合唱団「宮前フィルハーモニー合唱団『飛翔(はばたき)』」の音楽監督であった、亡くなった守谷弘は生前、「かっこいい指揮をしようとしていたがそれではいい演奏に繋がらないことを知った」と常々おっしゃっていました。茂木さんにも同じことが言えそうです。せっかくいい演奏でしたがその点だけが残念でした。
それが明白になったのが、ソリストのアンコールであるベートーヴェンの「6つのバガテル」から第3曲「アンダンテ・カンタービレ・エ・グラツィオーソ」を聴いたことでした。何と美しく歌うピアノでしょう・・・ミスするような要素は一つもありません。なのでほぼ間違いなく茂木さんの指揮に問題があるのだろうと考えます。
②ベートーヴェン 交響曲第9番
ベートーヴェンの交響曲第9番は「合唱付き」と呼ばれるほど第4楽章に合唱を伴う作品で、1824年に完成、初演されました。成立の経緯から専門家からはあまり評判がよくない作品ではありますが私の中では最もベートーヴェンのエネルギーを感じる作品でもあります。
その成立の経緯故難しい作品でもあります。ですがその難しい作品を簡単に弾いてしまうのが京都シンフォニカさんの素晴らしくレベルの高い点です。ティンパニも硬くぶっ叩いてくれますし。それでいてメリハリもあります。本当に京都の方は恵まれています。素晴らしいプロオケとアマチュアオーケストラと。関西に引っ越すなら京都の周辺を私は望むところです。
ppでは多少音が大きく感じられますがそれでもffとの差はしっかりとついていますし表情も豊か。第3楽章ではホルンもひっくり返りませんし全体的にレベルが高い!市民オケに近いスタイルだと思いますがその割には本当にレベルが高く、ここでもやはり私が言う、海外のオーケストラだけが素晴らしい時代は終わっており、日本のオーケストラもプロアマ関係なくレベルが上がっていることを実感した次第です。
さらに素晴らしいのは、合唱団。実は今回チラシでは京都シンフォニカ記念合唱団との記載がありましたが、ふたを開けてみればなんと!大阪フィルハーモニー合唱団だったのです!大阪フィルハーモニー交響楽団の専属合唱団という、つまりは姉妹団体で、
セミプロなのです。
こんな団体が合唱団として参加するのは私もあまり経験がありません。勿論アマチュアで上手な合唱団との共演のアマチュアオーケストラの演奏会は経験がありますが、まさかの大フィルの関係団体というのは正直初めてです。第4楽章で合唱が入ったとたん空気がいつもと違いプロオケの演奏を聴いているかのよう!それだけ京都シンフォニカさんの実力も高いことの証明でもありますが、さすがいつもはザ・シンフォニーホールで歌われている方々。力強くしかも軽い発声が存分にホールを見たします。その合唱で披露したのが口語体での演奏でした。ついに関西でも口語体で歌われるのかと、感動しました。時代は変わりました。マーラーではないですが「私の時代が来た」と実感せざるを得ませんでした。
合唱指揮は福島章恭さん。ウェブサイトのPDFをクリックしたらまあ素晴らしい経歴が・・・納得です。ウェブサイトには福島さん指揮の「みずのいのち」の動画もあるので是非とも聴いてみていただきたいところです。
https://www.osaka-phil.com/wp-content/uploads/2022/02/Akiyasu_Fukushima.pdf
そんな合唱団とそん色なくアンサンブルできてしまう京都シンフォニカさん・・・いやあ、本当に京都まで足を運んでよかったと思えました。
また、常に私が問題にする第4楽章vor Gott!ですが、恐らくこれは茂木さんのスタイルなのでしょう、名古屋と同じくvor1拍にGott!を4拍で済ませ、残り2拍を残響とした変態演奏!これもむしろ自然でした。名古屋の時に私が書いたものを掲載しておきます。
「第4楽章では何度感動した泣いたことか・・・・・しかも!第4楽章vor Gott!の部分、vor1拍に対しGott!は4拍。2拍分残響という変態演奏!なのに、感動しっぱなし。茂木さんもやりますねえ。」
実は今回ももうなく寸前、いやもう泣いていました・・・前日のフライハイト・コーアさん(府中の森芸術劇場ウィーンホール)といい、当日の大阪フィルハーモニー合唱団さん(京都コンサートホール)といい、本当に日本の合唱団が上手にホールを使えてきていることに感動するばかりです。京都シンフォニカさんの執行部たっての依頼だったのかもしれませんね、大阪フィルハーモニー合唱団さんが合唱を務めるのは。関西であれば大阪フィルハーモニー交響楽団さんの演奏会だって通う人も大勢いますし。ただ実は京都市交響楽団さんも姉妹団体に京響コーラスというのがあり、京都コンサートホールでの演奏経験も豊富です。今回あえてそれを選択せず大阪フィルハーモニー合唱団さんを選択したという所に、朝比奈さんへの敬意もあるように思います。また今年は秋山さんも死去しており、その追悼の意味もあったのかもしれません。そこまでは取材出来ていませんので断定はできませんが・・・もし団員の方が読んでおられましたらそのあたりコメントしていただけると嬉しいです。
全体的に本当にレベルの高い演奏で、大満足です。京都まで通うのは本当にお金がかかるのですが、京都シンフォニカさんだとそれだけの価値がある団体だと思います。次回は来年5月10日に今年京都ふじのもり管弦楽団さんの定期演奏会を聴きに行った京都府長岡京記念文化会館でとのこと。長岡京記念文化会館も比較的響のいいホールですから、また素晴らしい演奏を披露されることでしょう。ちょうど時期的にも資金に余裕が出始めるタイミングなので、関東でひいきにしている団体とバッティングしなければまた足を運ぶことになるかもしれません。その時を楽しみにしたいと思います。また大阪フィルハーモニー合唱団さんは大フィルの演奏でまたベートーヴェンの第九を年末だけでなく来年2月にもされるとのことなので、ちょっとお財布と相談しつつ判断したいと思います。実は来年はプロオケで群馬交響楽団さんを予定しているもので・・・そのあたりの兼ね合いもあるので、すぐに判断はできないことをご容赦くださいませ。
聴いて来たコンサート
京都シンフォニカ第56回創立40周年記念定期演奏会
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
ピアノ協奏曲第5番変ホ長調作品73「皇帝」
6つのバガテルより第3番「アンダンテ・カンタービレ・エ・グラツィオーソ」(ソリストアンコール)
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱付き」
中西千尋(ソプラノ)
影原真由美(アルト)
水口健次(テノール)
萩原寛明(バリトン)
大阪フィルハーモニー合唱団(合唱指揮:福島章恭)
茂木大輔指揮
京都シンフォニカ
令和7(2025)年10月5日、京都、左京、京都コンサートホール
地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。