かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~府中市立図書館~:小澤征爾とサイトウ・キネン・オーケストラによるブラームス交響曲全集2

東京の図書館から、2回シリーズで取り上げております、府中市立図書館のライブラリである、小澤征爾サイトウ・キネン・オーケストラによるブラームス交響曲全集、今回は第2回目です。2枚組の2枚目を取り上げます。収録曲は第2番と第4番です。

2枚目は偶数番号が組み合わさっているわけですが、私はこのアルバムの初版の出版をリアルタイムで見ていますが、実はこの全集、もともとは1曲ずつ収録されていたのです。それを組み合わせ現在では2枚組にしているのです。当時CDは基本的に74分までしか収録されなかったためです。ですがその後80分くらいまで収録できるようになったため、奇数と偶数でわければなんとか収録できるということになりました。現在ではストリーミングサービスおよびダウンロードなのでこの組み合わせにするのはあまり意味はないですが・・・

とはいえ、ブラームス交響曲の中では最も明るいとも言える第2番と、古典的な様式を持つがため暗い雰囲気が漂う第4番という異なった雰囲気の曲が組み合わさっていることで、ブラームスの芸術の神髄に触れることができる内容になっていることは重要です。

録音は、第2番が1991年にオランダのナイメーヘンで、第4番が1989年にドイツはベルリンのシャウシュピール・ハウスでです。ナイメーヘンのホールは記載がありませんが、前回も述べたコンセルトヘボウ・デ・フェリーニヒングだと思われます。

en.wikipedia.org

コンセルトヘボウ・デ・フェリーニヒングもシャウシュピール・ハウスも共に欧州でも有数の優れたホールです。収録当時の日本でも響きのいいホールはすでにいくつか出来上がっていましたが、優れたソリストが何人いようとも日本はネームバリューに囚われて使わせず金をいくら積むかで判断します。今でもアマチュアオーケストラが民間の響きのいいホールを使う時はそのような制約があります。

ゆえに、サイトウ・キネン・オーケストラは海外の優れたホールで収録し名を上げて、日本で優れたホールで演奏することを目指したとも言えるでしょう。その後音楽祭のオーケストラとして多目的ホールである長野県松本市文化会館で主な収録を行いますが、実はこの当時国内の響きのいいホールで収録しなかったわけではありません。私もエントリを挙げている、弦楽合奏曲を収録したアルバムがそうで、ホールは長野県は岡谷市のカノラホールです。かつてはカノラホールでもサイトウ・キネン・フェスティバル松本の公演が行われたこともあります。松本と岡谷、諏訪は一つの経済圏と言ってもいいので。廃藩置県のころはこの3市の地域で一つの県でした。

ykanchan.hatenablog.com

私が前回、サイトウ・キネン・オーケストラを甲子園初出場のチームが勝ち上がっていくのに譬えたのは、サイトウ・キネン・オーケストラはこの録音当時はある意味甲子園初出場のチームのようにあまり名が知られていなかったがためです。その後のサイトウ・キネン・オーケストラの躍進ぶりはまさに、甲子園初出場のチームが優勝する過程にそっくりです。唯一異なるのは、甲子園初出場のチームが勝ち進み優勝するケースはたいてい監督の手腕で試合ごとに成長していくのですが、サイトウ・キネン・オーケストラは初めから団員一人一人は優れたソリストでありまたどこかのオーケストラですでにしっかりとした活動をしている人が殆どであるということです。ただ、チームとして初めからまとまっていたわけではないところが似ているでしょう。ですが団員に共通するのが「斎藤先生の教え子」という点。そこでまとまれるわけで、その中でコーチ役を果たしたのが小澤征爾だったということです。日大三高出身の私としては小澤征爾は小倉元監督とオーヴァーラップします。

さて、演奏は第2番はステディですがこれもかなりオーケストラに歌わせています。共通の師匠というベースに基づいた信頼関係の中で培われるアンサンブルがなせる業でしょう。第4番では多少テンポが速め。ですがそれが全く軽薄ではないんです。リズムはしっかりと感じられるので生命力を感じます。それゆえに生き生きと聴こえる一方、レガートもしっかり感じられます。それが生命力を生み出していると言えましょう。

そう考えると、やはりこのエントリで紹介した演奏は、沖澤さんがどこか力が入っていなかったかな?という気がするのです。

ykanchan.hatenablog.com

どうしてもこの小澤のタクトと比べられてしまうわけで、力を入れるなと言っても難しいことでしょう。とはいえ、どちらも素晴らしい演奏に変わりありません。むしろこの30数年前の演奏を現代風にアレンジしたのが沖澤さんだったとも言えそうです。私もブラームス交響曲を海外オケや指揮者の演奏で数多く聴いてきましたが、この小澤のタクトも、そして沖澤さんのタクトも不満に思ったことはありません。特にトーマス・ツェートマイヤーの指揮を聴いてしまうと、小澤ですら保守的に聴こえますし。やはり数を聴くということは大事だなあと思いますし、「自分を耕す」ことなんだなあと思います。日大三高野球部元監督の小倉さんの座右の銘である「練習は嘘をつかない」はまさにその通りだと、この小澤の演奏を聴いてはっきりと感じるところです。サイトウ・キネン・オーケストラも、それぞれの活動がまさに「練習」でもあるわけで、その結果なのですから。

 


聴いている音源
ヨハネス・ブラームス作曲
交響曲第2番ニ長調作品73
交響曲第4番ホ短調作品98
小澤征爾指揮
サイトウ・キネン・オーケストラ

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。