かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:ミューザ川崎市民交響楽祭2025を聴いて

コンサート雑感、今回は令和7(2025)年8月31日に聴きに行きました、ミューザ川崎市民交響楽祭のレビューです。

ミューザ川崎市民交響楽祭は毎年8月にミューザ川崎で行われているコンサートです。川崎アマチュアオーケストラ連盟に加盟する4つの団体が持ち回りで幹事を務めています。昨年は宮前フィルハーモニー交響楽団でしたが、今年は麻生フィルハーモニー管弦楽団が幹事を務めました。なお、代表は宮前フィルハーモニー交響楽団団長の土肥さんです。

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私の中では、8月のミューザと言えばフェスタ・サマーミューザとこの市民交響楽祭です。フェスタ・サマーミューザがプロオケの祭りであり、市民交響楽祭はアマチュアオーケストラの祭りです。市民交響楽祭では4つのオーケストラから参加者を集い、かわさき市民オーケストラとして演奏をします。交響楽団の名を使わないのは、すでに連盟に加盟している団体に川崎市交響楽団があるからです。

かわさき市民オーケストラとしての演奏はこのミューザ川崎市民交響楽祭だけで、年末のかわさき市民第九では4つのオーケストラが持ち回りで担当しています。今年は川崎市交響楽団が担当と発表がありました(なおそちらは今年は府中市民第九と重なるため今回は行きません)。

今回の幹事オケは麻生フィルハーモニー管弦楽団。実はまだこの麻生フィルハーモニー管弦楽団だけはコンサートに足を運んでいない団体です。それ以外の団体は一度は足を運んだことがあるのですが、現在東京に住む私としては宮前フィルハーモニー交響楽団以外はなかなか行けずにいます。それだけ東京のアマチュアオーケストラが充実しておりレベルも高いからですが、川崎市内のアマチュアオーケストラも年々そのレベルを上げてきているのも確かです。今回ちょうど宮前フィルハーモニー交響楽団定期演奏会でチケット販売をしていたことから購入しました。当日も各団体のブースが設けられ定期演奏会のチケット販売もしていました。割引で買えるのもお得。川崎市内の方は一度は足を運ばれてはいかがでしょうか。

さて、今回のプログラムは以下の通りです。基本的にはレスピーギの「ローマ三部作」なのですが・・・

レスピーギ 交響詩「ローマの噴水」
ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番
レスピーギ 交響詩「ローマの祭り」

あれ?ローマの松が抜けていますねという、ア・ナ・タ。そうなんです、なぜかローマの松だけ抜けています。これには実は仕掛けがありました・・・

レスピーギ 交響詩「ローマの噴水」
レスピーギは19~20世紀のイタリアの作曲家です。有名な作品が「ローマ三部作」と言われる交響詩群で、ローマの噴水はその第1作目にあたります。ローマにある4つの噴水の情景を表現したもので、通常は楽章がないことが多いのですがこの曲は4楽章制と古典的な交響曲を思わせる形式を取っています。ただ、ソナタ形式などがはっきりと使われているわけではなくそのためカテゴライズとしては交響詩になります。

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マチュアオーケストラでもこのローマ三部作はコンサートピースの一つにはなっていますが演奏頻度は少ないと個人的には感じます。それは編成がとにかく大規模だからということがあります。特に川崎の4つのアマチュアオーケストラは市民オケなのでなかなか人数が集まらず、ゆえに4つの団体相互でエキストラをやり取りもしているとのこと。そこが東京のアマチュアオーケストラとは異なる点です。東京にも市民オーケストラはありますが圧倒的に多いのはネットなどでつながって居住地関係なく集まっているアマチュアオーケストラが多いのです。これが東京とそれ以外の地域との明確な差です。

ゆえに、レスピーギの作品を演奏するということはまさに今回のようなコンサートで実現できることだと言えます。さらに、この曲にはオルガンも必要。それも今回のコンサートにぴったりです。ミューザ川崎にはホールオルガニストがいらっしゃいまして、それがこのブログでも何度か取り上げている大木麻里さん。ミューザ川崎サン=サーンス交響曲第3番「オルガン付き」が演奏されるときは必ずと言っていいほど駆り出されるオルガニストです。今回も実はソリストなのですがしれっとかわさき市民オーケストラ2025のメンバーに名を連ねていました。今年ホールオルガニストとしての任期が最終年度ということもあり、そこでオルガンが活躍する曲をということだったのかもしれません。またオーケストラメンバーとして名を連ねるということは、恐らくですが大木さんが任期を全うされるということで実現した企画だったのではと思います。またそれだけ4つのアマチュアオーケストラが信頼されているということでもあるかと思います。

ミューザ川崎建設には、さいか屋の会長であられた岡本さんが関わっており、私も宮前フィルハーモニー合唱団「飛翔」で同じ団員でした。その岡本さんの理念が今回大木さんの参加という形に結実したのかもと思うと、感無量です。

作品が大規模であるがゆえに、パイプオルガンの響きと何と溶け合うことか!かつオーケストラにはやせた音が一切聴こえず、表現力も豊か。パイプオルガンが加わることで単なる風景を切り取ったものではなくそこには悠久の歴史の流れすら感じさせる作品ですが、まさにその時の流れを想起させるだけの説得力があるのです。それがアマチュアオーケストラの演奏で味わえて、かつオルガニストは一流・・・なんと贅沢な時間でしょう!しかし、当日の贅沢はこれで終わらなかったのです。

ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番
ラフマニノフは19~20世紀のロシアの作曲家ですが、後にアメリカへ移住しています。作品はロシアにいた時に大部分が作曲され、このピアノ協奏曲第2番もそのうちの一つです。交響曲第1番が酷評されたことからうつ病を発症し、癒えた後に成立した作品としても知られています。そのせいなのか、特に第1主題が始まる前のまるで鐘の音が鳴っているかのような出だしが特徴的です。

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今回ピアニストは三舩優子さん。今回もまたビッグネームが登場です。指揮者の和田さんもこれまた比較的知る人ぞ知るという方で、海外や国内オケを数多く指揮されている方。タクトも明確でわかりやすいのはオーケストラにとっては演奏しやすかったのではないでしょうか。

また三舩さんのピアノもロマンティシズムにあふれ抒情的。それにしっかり協奏するオーケストラ。ppからffまでのダイナミクスも表現の幅が広く豊か。目をつぶって聴いていればおそらくプロオケだとはなかなか気づきにくいと思います。かろうじて金管が時折不安定になることでアマチュアオーケストラだとわかるくらいのレベルの高さ。それを聴いてしまえばピアニストも力入りますよね~。最初のまるで鐘が鳴るような重々しい曲は、第3楽章では喜びの歌に変わり壮麗に終わります。ソリストもオーケストラも喜びを分かち合うような演奏でした。

鳴りやまぬカーテンコールに後押しされ、ソリストのアンコール曲は同じラフマニノフの「鐘」。ラフマニノフがその音型に込めた想いを掬い取るような、感情のこもった演奏はさすが三舩さんでした。

レスピーギ 交響詩「ローマの祭り」
レスピーギの「ローマの祭り」は、彼が作曲した「ローマ三部作」の最後を飾る作品で、1928年に完成されました。ローマで行われる祭が歴史の時系列で並べられています。

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この曲の第1楽章「チルチェンセス」はローマ皇帝ネロが開催した見世物。ここで扱われているのはその前座として行われた人間VS動物の対決で、その中でも人間がキリスト教徒である場面を切り取っています。バンダ隊が参加しますがそれは祭りのファンファーレの役割を担っており、当日はパイプオルガンの脇、正面から見て左側に陣取りました。キリスト教徒を表現するのはパイプオルガンで、これは大木さんが演奏。ここでは「ローマの噴水」のように壮麗にオルガンが鳴り響くということはなくむしろ呻き声のような感じ。このあたり大木さんの表現力が光ります。その点ではバンダ隊の力強いファンファーレと静かに呻くようなパイプオルガンとの対比もまた素晴らしかったです。

第2楽章の50年祭では一転、キリスト教ローマ帝国の国教となりその後滅んだあとヨーロッパに広がった後のロマネスク時代のローマが舞台。ここでもまたオルガンは静かな演奏に徹します。レスピーギがこの曲に込めたのはローマの噴水同様、単なる風景ではなくそこに至る歴史の流れのように感じます。またその解釈が舞台上にあがっているメンバー全員に共有されていると感じます。

優美な第3楽章を経て、第4楽章は主顕祭。時代はすでに現代まで来ており、その名からは程遠いようなどんちゃん騒ぎが描かれます。その騒ぎっぷりの表現も素晴らしい!酔っぱらいも散見されもうそれこそお祭り騒ぎ。まあ、私も諏訪の御柱でよく見た光景です。ですがこの曲で描かれる騒ぎっぷりは御柱をはるかに超え、もう収拾が付かないくらい・・・それをまたしっかりと表現されているのもアマチュアオーケストラだと気付かないくらいです。

またここでわかるのが、祭りがテーマになっていますが実は裏テーマがキリスト教の変遷です。迫害から国教化、そして大衆化して、近代では権威が失われどんちゃん騒ぎにという歴史を踏まえたものにもなっているわけです。それを踏まえた演奏でこれもまた唸りました。

さて、プログラムはここで終わりですが素晴らしい演奏でカーテンコールは鳴りやまず。ですが私は不思議に思っていました。実はパイプオルガンの両脇に譜面台があったのですがバンダ隊が鎮座したのは最後のローマの祭りだけ。片方はいまだ使われていません。ということはアンコールで使われることを意味しています。さて、何がアンコールで来るのかとワクワクしていました。ソリストは同じラフマニノフだったので、恐らくオーケストラは同じレスピーギで来るのではないか、と。

じきにソリストの三舩さんが、団員が弾いていたピアノに座ります。え?三舩さんがオーケストラのアンコールでも?と驚くのはまだ早いです。オルガニストの大木さんもその場を離れず新しい譜面を出してセットしているではありませんか!そこに登場したのが新たなバンダ隊。そこには宮前フィルハーモニー交響楽団の団長で川崎アマチュアオーケストラ連盟の代表の土肥さんがトロンボーンをもって他3名とともにスタンバイ。ここでほぼローマの松ではないかと予想。その予想が見事的中!アンコールはレスピーギの「ローマの松」最終楽章、アッピア街道の松だったのです!

ソリストの三舩さんと、団員に名を連ねてはいますがホールオルガニストであるため事実上のソリストの一人である大木さんのコラボレーション・・・なんと贅沢な!静謐な音楽がやがて圧巻の壮麗さと共に終わる音楽はまるで夢見心地・・・最後私もついにブラヴォウ!をかけました。アマチュアオーケストラの祭典に相応しい、全員が参加しての大円団でした。これもまた、大木さんへの感謝の印だったのかもしれません。4つのアマチュアオーケストラから参加した団員たちとソリストとの連帯もまた素晴らしい時間でした。

来年は高津市民オーケストラか川崎市交響楽団が幹事となるはずですが、いまや東京都民の私ですが来年もまた聴きに行きたいと思うと共に、東京多摩地域でも同様のコンサートを是非とも開いてほしいと願います。府中市交響楽団小金井市民オーケストラ、国立市民オーケストラや小平市民オーケストラ、あるいは学生オケですが中央大学管弦楽団東京外国語大学管弦楽団東京農工大大学管弦楽団など、実力を備えたアマチュアオーケストラはたくさんあります。主会場を府中の森芸術劇場どりーむホールやパルテノン多摩、あるいはJ:COMホール八王子としてミューザ川崎市民交響楽祭のようなコンサートが開かれれば、また違った地平が開かれるように思います。すでに小金井市民オーケストラと小平市民オーケストラとではエキストラの交流が行われており、是非とも実現してほしいと思っています。すでに多摩市民第九で同様の形が取られており、ミューザ川崎市民交響楽祭も毎年のかわさき市民第九から発展したことを踏まえますと、十分下地はできていると感じています。是非ともミューザ川崎市民交響楽祭を参考にしていただきたいと思います。

 

聴いて来たコンサート
ミューザ川崎市民交響楽祭2025
オットリノレスピーギ作曲
交響詩「ローマの噴水」
セルゲイ・ラフマニノフ作曲
ピアノ協奏曲第2番ハ短調作品18
幻想的小品集より前奏曲「鐘」嬰ハ短調作品3-3(ソリストアンコール)
オットリノレスピーギ作曲
交響詩「ローマの祭り」
交響詩「ローマの松」より「アッピア街道の松」(オーケストラアンコール)
三舩優子(ピアノ)
大木麻里(オルガン)
和田一樹指揮
かわさき市民オーケストラ2025

令和7(2025)年8月31日、神奈川、川崎、幸、ミューザ川崎シンフォニーホール

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。