神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、シリーズでダニエル・バレンボイムが弾くベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集を取り上げてきましたが、今回第10集を取り上げます。
いよいよ最後の第10集。第31番と第32番が収録されています。どちらも静謐というか、静かな中にエネルギーが満ちているという演奏。これもまた、違った世界を見せてくれていて、うなります。
特に、第32番はジャズの曠野とも言われる作品ですが、ジャズっぽくもあり、しかしクラシック的でもあるという感じで弾いており、むしろわざとノリノリにしていない点が特徴です。はじめからノルのではなく、だんだんノッてくる感じです。ちょっと違ったリズムを作ってみたら、後世ジャズと言われるようなものになってしまった・・・・・というような「ノリ」です。
この辺りのバレンボイムの繊細さはもう見事としか言いようがありません。この全集を通してこの繊細さは貫かれていますが、この第10集に収録されている2曲でも徹底されており、それでいてダイナミックさや雄大さも感じられる、まさにベートーヴェンの作品を「借景」にしたバレンボイムの「世界」あるいは「宇宙」というものがはっきりと浮かび上がります。
確かに構造をよく知っていないと難しいとは思いますが、構造だけではこうならないと思います。まさに自分の持てる技術を表現としてどう使うかという意識が明白だからこそ、できる演奏であると確信しています。こうなると、ほかの作曲家の作品もどう演奏するのか、気になるところです。それはさほど遠くない時期に、取り上げることになろうかと思います!
聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
ピアノ・ソナタ第31番変イ長調作品110
ピアノ・ソナタ第32番ハ短調作品111
ダニエル・バレンボイム(ピアノ)
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