かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:天平の甍 オリジナル・サウンドトラック

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回は武満徹の「天平の甍 オリジナル・サウンドトラック」を取り上げます。

武満徹は数々の映画音楽を作曲したことでも有名です。そのうちの一つが、この「天平の甍」です。ちなみに、甍は「いらか」と読みます。

天平の甍」は、1957年から連載された井上靖の小説で、のちに熊井啓監督により映画化されます。その時音楽を担当したのが、武満でした。

ja.wikipedia.org

そもそも、天平の甍は上記ウィキの通り、主人公は若き二人の僧、普照と栄叡です。そして栄叡は途中帰らぬ人となります。その人間模様も見どころの映画です。ですが武満はむしろ、引いて牧歌的でまるで風景のような音楽を書いています。この映画、封切りの時に父に連れて行ってもらい見ていますが、特に栄叡の死を悼む普照のシーンは印象的で、感情移入したのを覚えています。

その意味で、武満は実に優れた仕事をしたのだと思います。あえて人物の感情を音楽で表現せず、ひとつの風景の中に落としこむことで、映画の表現と一体となっているのです。だからこそ、最後鑑真和上が来日し、唐招提寺へとたどり着くシーンは泣けずにいられません。

このサウンドトラックはほぼ映画のストーリーに沿っており、今やDVDがないこの映画のストーリーを思い出すのを助けてくれます。映画用の録音なので、DSEE HXをきかせてもそれほど臨場感があるわけではありませんが、それでもダイナミックな映画のシーンはよみがえってきます。

ただ、このサウンドトラックを聞いていますと、ひとつの旋律が何度か繰り返されており、それが一つの主軸となっています。そもそも出発の時に女性と別れ、さらに在唐中に次々と仲間と死別してゆくさまは、今から思うと本当に悲劇的ですが、その困難を乗り越えて使命を果たす僧侶の物語は、涙なくしては見ていられません。

指揮するのは佐藤勝、演奏は東京コンサーツ。映画音楽などではおなじみの楽団なのですが、淡々と演奏しているようで実は感情も入っているこの演奏、実に感動的です。久しぶりに映画が見たくなりました。

 


聴いている音源
武満徹作曲
天平の甍」オリジナル・サウンドトラック
佐藤勝指揮
東京コンサーツ

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