かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:エリザベス朝のヴァージナル音楽

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回はイギリスはエリザベス朝のヴァージナル音楽を集めたアルバムをご紹介します。

ヴァージナルとは、いわゆるチェンバロのことで、その解説は以下のエントリでやっております。

ykanchan.hatenablog.com

実は、内容的には結構かぶる作品も多いのですが、ではなぜあえて借りてきたかと言えば、理由は二つ。そもそも、上記エントリはグールドがではモダン・ピアノで弾いてしまおうという企画のものであったのに対し、このアルバムは原曲通りヴァージナルで演奏しているという点。そしてもう一つは、そのロケーションがヨーロッパではなく日本の、しかも富山は魚津である、ということです。もちろん演奏するのが日本を代表するチェンバリスト、中野振一郎である、ということもあります。

一部はチェンバロで演奏していますが、基本的な構造は一緒なので、ほぼほぼヴァージナルでと言ってもいいのではないでしょうか。やはり、そもそもの楽器での演奏で聴きますと、音ゆえのきらびやかさもありますが、弦を「はじく」からこその、一つ一つの「溜」だったり、素朴さだったりは一目瞭然だと思います。もちろん、ピアノでもそん色ないのですが。

この演奏を聴きますと、逆になぜグールドがモダン・ピアノで強迫的に弾かなかったのかが明確になります。ヴァージナルだからこそふさわしい作品をあえてピアノで弾くのですが、その「らしさ」を大切にしたいという想いがあったのでは?と気づくわけなのです。

中野振一郎はのびのびと弾いており、作品に常にリズムがはっきりしているために生命を感じます。そういった生命らしさと言った点も、グールドは重視していたんだなと感じます。中野の演奏は、むしろグールドの演奏とは何か?と私に考えさせるに十分なインパクトがあります。

もちろん、中野がグールドの演奏を意識して弾いているとかはないと思います。しかしながら、演奏者としてグールドが弾いたモダン・ピアノのものを知らないわけはないと思います。参考にしながら、自分はヴァージナルで弾くんだ、あるいはチェンバロで弾くんだという「個としての表現」が充実しています。こういうプロらしさ、好きですねえ。この演奏を聴きますと、もう一度グールドのモダン・ピアノのものも聴きたくなるから、不思議です。そのうえで、この演奏を排する気にもなりません。

こういった演奏を待っていた!という気がします。

 


聴いている音源
ジョン・ブル作曲
①イングリッシュ・トイ
トーマス・モーリー作曲
パヴァーヌガリアルダ イ調
パヴァーヌ
ガリアルダ
ナイチンゲール(作曲者不詳)
オーランド・ギボンズ作曲
⑤プレリュード イ調
ウィリアム・バード作曲
パヴァーヌガリアルダ ト調
パヴァーヌ
ガリアルダ
ジョン・ブル作曲
⑧王の狩
マーティン・ピアソン作曲
⑨桜草
⑩太鼓と笛(作曲者不詳、ウィリアム・バード?)
ウィリアム・バード作曲
⑪ネヴェル夫人のグラウンド
マーティン・ピアソン作曲
⑫落ち葉
ウィリアム・バード作曲
パヴァーヌガリアルダ ハ調
パヴァーヌ
ガリアルダ
ジョン・ブル作曲
⑮グッドナイト
ウィリアム・バード作曲
⑯戦闘前のマーチ、またはオックスフォード伯爵のマーチ
中野振一郎(ヴァージナル、チェンバロ⑤・⑧・⑮~⑯)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。