かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~府中市立図書館~:アラウが弾くベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集5

東京の図書館から、府中市立図書館のライブラリをご紹介しています。11回シリーズでお届けしているアラウが弾くベートーヴェンのピアノ・ソナタ全集の、今回は第5集を取り上げます。

第5集には第13番から第15番が収録されています。ちょうど作品27の二つが一緒になっているのです。

これ、これまでのアラウの収録とはちょっと違うなって思っています。今までなら、組み物でも録音時間に入らなければ二つに分けることだってあったにも関わらず、作品27は二つが一緒になっているのです。これは録音当時のメディアの収録時間を考えたとき、奇跡としか言いようがないんですよね。

ということは・・・・・これはあくまでも私の推測ですが、アラウはこの二つは一緒に収録したかったのではないか、だからこそほかの作品はやむを得ず二つに割ったとすれば、納得がいくんですね。

第14番「月光」は、ベートーヴェンのロマンティストとしての側面が語られますが、瀬川玄氏のアナリーゼによると、むしろ第1主題は「うらみつらみうらみつらみ~♪」だというのです。なぜならば、その直前、ベートーヴェンは失恋しているから、です。

ja.wikipedia.org

enc.piano.or.jp

まるでベートーヴェンをあざ笑うかのように結婚するグイチャルディ。その悲しみに耐えるベートーヴェン・・・・・ああ、そのほうがしっくりくるねと私も思います。その失恋という「喪失感」を手放すために作曲したのが、この作品だとすれば、臨床心理学的にも腑に落ちます。

アラウの演奏は、第3楽章の嵐のような部分にも実は繊細なタッチを使っており、決して力任せではないんです。そのうえで、前後の作品、第13番と第15番をまるで鏡像のように配置して、第14番の存在を際立たせる・・・・・しかも、第13番もとても感情の起伏があるように演奏し、まるで感情のさざ波に私たちが洗われるかのようなのです。こういう点はニクイですね、アラウ。

歌うアラウは再び健在なのですが、その歌い方がさらに繊細さを増しているように思いますし、とても激しいのに丁寧さもあるという、神経を使っている演奏です。アラウはどこでこんな感情の表現を見出したのだろうって思いますが、とにかく、ともすれば単調にも弾けるこれら3つの作品を繊細に扱い、複雑な心理を表現するのはあっぱれです。

これで4つ目の全集ですが、ほんと、演奏はより多く聴くべきですね、できるだけ。しかも図書館でかりてきてリッピングするだけですから場所も取らない。なんでもっと早くそういうことに気付かなかったのかなあって思います。それだけ早く魂が豊かになったはずなのに・・・・・ちょっとだけ悔しいです。

 


聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
ピアノ・ソナタ第13番変ホ長調作品27-1
ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調作品27-2「月光」
ピアノ・ソナタ第15番ニ長調作品28「田園」
クラウディオ・アラウ(ピアノ)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。