東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリをご紹介しています。今回はラフマニノフが作曲した聖金口イオアン聖体礼儀作品31を収録したアルバムをご紹介します。
なんとかロイオアン?って思いますよね?これ、「金の口を持った聖人イオアン」という意味なのです。え?そんな作品なぞないぞ、「聖ヨハネ・クリソストモスの典礼」が正しいのだ!と主張するア・ナ・タ。実は、それが違うんです。
聖人名はロシア語と欧米とで異なるので、そこは別にいいんです(まあ、重箱の隅を突っつくように言えば聖が二つw)。いずれにしても聖ヨハネ・クリソストモスという意味が「金の口を持った聖人」という意味なので、それがイオアンを指すからです。問題は、「典礼」。
私もロシア正教には詳しくないので調べてみると、なるほど、いわゆる西方教会でいう典礼だと、意味が広すぎてしまって間違ってしまうんですね、東方教会では。
ゆえに、以下のウィキの説明は正しいということになります。
それにしても、中世の宗教作品も聴いている私からすれば、それほど歌えない作品なのかなあって思うんですけれどね。それだけ、ロシア正教会は保守的だったといえるんだと思います。まあ、西方教会よりは古い文化が息づいているのが、東方教会の特徴ですけれどね。
実は、この音源も訳は「聖ヨハネ・クリソストモスの典礼」となっており、誤訳をそのまま使ってしまっているといえるでしょう。まあ、仕方ない部分はあります。東方教会はおろか、西方教会、つまり基本的にカトリックやプロテスタントすら理解しようとしないクラシックファンはごまんといますから(だからこそ韓国叩きだって起きているわけですから)。
1910年の作曲の割には、しっかりした旋律線と和声。けれども、声楽のみ、つまりアカペラ。アカペラとは「ア・カペラ」ですから、それが教会式という意味になるんですが、全く持って教会様式で作曲したものであるわけです。けれどもおそらく、和声が問題になって正教会では歌われなかったんだと思います。その意味では、二重の意味で悲劇の作品だといえるでしょう。正教会がボイコットしたにもかかわらず、宗教作品だという理由で今度はソビエト政権下では歌われなくなるんですから(歌われても歌詞なし)。
この演奏は聖歌隊の演奏ではなくロシアの室内合唱団の演奏ですが、ロシア人の魂の中にいかにロシア正教があるのかを垣間見るものになっています。質素なれどもダイナミックさも兼ね備える合唱は、静謐さの中にエネルギーを感じるものになっています。こういう作品は今こそ、聴かれるべき作品だと思います。日韓がいがみ合っている今だからこそ・・・・・
聴いている音源
セルゲイ・ラフマニノフ作曲
聖金口イオアン聖体礼儀 作品31(CD記載は「聖ヨハネ・クリソストモスの典礼」)
アレクサンダー・ランニェ(司祭:テノール)
セルゲイ・トゥシプカーロ(輔祭:バリトン)
ナターリャ・コルニエーワ(ソプラノ)
ニコライ・コルニエフ指揮
サンクトペテルブルク室内合唱団
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