かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から〜小金井市立図書館〜:コルンゴルト 歌曲と室内楽の作品集2

東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリをご紹介しています。シリーズでコルンゴルトの歌曲と室内楽の作品集を取り上げていますが、今回はその2枚めをご紹介します。

2枚めには、このアルバム出版時には世界初録音だった、4つのシェイクスピアの歌 作品31が収録されています。1937年と、ちょうどコルンゴルトアメリカとウィーンを往復し、ナチスの台頭でそろそろ亡命をと考え始めていた頃の作品です。ドイツ人でありながらドイツ語にちっともこだわっていないところが、ある意味時代なんですよね・・・・・

だって、世の中はすでに国民国家の時代なのに、それよりも前の、汎ヨーロッパ主義なんですもの。だからコルンゴルトにとって英語の歌詞なんてちっとも厭わないし、不思議なことでもありません。自分が書きたいから書く。それだけです。

けれども、国民国家は敵を作るため、コルンゴルトが自らの意志で作曲することを許しませんでした。まるで絶対王政のような、けれども絶対王制とはまた違った抑圧です。英語の歌詞など敵性音楽。さらには、退廃音楽指定すら受けてしまいます。まるでこれは、現代日本をデジャヴするかのようです・・・・・今の日本ならば、保守からは敵性音楽だ!と言われ、リベラルからは、精神性のない退廃音楽だ!と言われてしまったこととおなじなんですね・・・・・多分、日本人はそこが理解できていないので、未だにコルンゴルトを低く見、罵倒するんだと思います。

続く「3つの歌 作品22」も、このアルバムが出た当時世界初録音。耽美的でありつつも、しっかりとしたサウンドは、コルンゴルトの健康的な精神を反映しているように思います。本当に健康的ってなんなんでしょうね。ナチスの台頭により、精神性がないと不健康の烙印を押され、退廃音楽指定されるのですから・・・・・

室内楽コーナーに移って、「2つのヴァイオリン、チェロ、左手のピアノのための組曲 作品23」。ウィキでは単に「組曲」とだけ記載がありますが、左手というのがミソですね。ラヴェルも左手用に協奏曲を書いていますが、解説を書き写していないので断言はできませんが、おそらく第1時大戦により右手を失った人のために作曲されたと想像されるわけなんです、ラヴェル同様。作曲が1930年なので・・・・・どこが精神性がないだ!っていいたいです。これだけ繊細な魂を持っているのに・・・・・

ピアノが左手だけなので、コルンゴルトは和声的に後期ロマン派にこだわらず、不協和音もふんだんに使っています。その深さと言ったら!保守はもとより、リベラルすら、ナチスと同様になっている現代日本に、強烈な危機感を私は感じます。コルンゴルトの音楽は私に問題意識の刃を突きつけます。

最後が歌劇「死の都」作品12から、マリエッタの歌。このアルバムが弦楽四重奏が基本の編成なので編曲版ですが、実にコルンゴルトらしい耽美的と健康的な間の絶妙なバランス!ちょうどいい感じで酔えるのはすばらしい!

演奏も、フォン・オッターのしっかりとした発声がすばらしい!もちろんんなことはプロとしてあたりまえだと言えますが、英語でも浅めの発音もあるわけなんです。けれどもその発音じゃなければ何を言っているかは伝わりません。永井女史がビブラートにこだわりすぎて日本語の発音がぼやけてしまっているのとは大違いなんです。どんな言語でも、自分が何を歌い、それはどんなメッセージを持っているのかをしっかり理解していないと、演奏そのものがぼやけてしまうと思います。もちろん、それは難しいことは、元合唱屋なので百も承知ですが・・・・・けれども、プロなのですから。

ピアノ四重奏の演奏はまるで美しい絹のよう!それでいて、不協和音をしっかり鳴らすことで内面もえぐっています。こういった演奏がどんどん増えれば、コルンゴルトの再評価はどんどん進んでいくのではないでしょうか。さすがそもそもはドイツ・グラモフォン。いい演奏を録音するなあって思います。

いずれにしても、このアルバムは前回も言及しましたが小金井市立図書館の「図書館戦争」だったのではと思っています。未だにコルンゴルトを低く見る左右を見ていますと・・・・・




聴いている音源
エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト作曲
4つのシェイクスピアの歌 作品31
3つの歌 作品22
2つのヴァイオリン、チェロ、左手のピアノのための組曲 作品23
マリエッタの歌(歌劇「死の都」作品12から、詩:パウル・ショット〔ユリウスとエーリッヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト〕、ベンクト・フォシュリペによる声、ピアノ、弦楽四重奏のための編曲版)
アンネ・ゾフィー・フォン・オッター(メッゾ・ソプラノ)
ベンクト・フォシェリペ(ピアノ)
ヒェル・リュセル(ヴァイオリン)
ウルフ・フォシュペリ(ヴァイオリン)
エルス=エリク・スパルフ(ヴィオラ
マッツ・リドストレム(チェロ)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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