かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:オフィス・アプローズ「ラ・ボエーム」を聴いて

コンサート雑感、今回は平成30年9月9日に聴きに行きました、オペラ「ラ・ボエーム」を取り上げます。

え、オペラは取り上げないのではなかったのですかって?勿論、通常はそうです。なぜなら、オペラはどうしても動画を見ないといけないから、です。忙しい私としては原稿書きはマルチタスクになりがちです。オペラだとそれは滞るからです。

しかし、この公演に関してはそうもいかなかったのです。なぜなら、この公演はオフィス・アプローズとあるように、実はコア・アプラウスとその合唱指揮者である稲見女史が関わっているから、です。

いや、実際には稲見女史は、主役のミミです。稲見先生がどれだけ可憐なミミを演じることができるのか。そしてもう一つの注目は、合唱団がどれだけのパフォーマンスを発揮するか。

実は、こうやってオペラ全体を見ることはとても重要なのです。やはりオペラは舞台ですから。特に後期ロマン派以降は歌唱による舞台芸術です。音楽だけでは理解半減なのです。

とはいっても、カラヤンは素晴らしい仕事を残しましたが・・・・・これも、本来は動画で見てみたい一つです。

マイ・コレクション:カラヤンが振る「ラ・ボエーム
https://yaplog.jp/yk6974/archive/479

カラヤンの抜粋はとても適切に抜き出していると思いますが、それでもエッセンスでしかありません。やはり全編見てなんぼです。特にこのラ・ボエームは・・・・・

ラ・ボエーム (プッチーニ)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%83%BB%E3%83%9C%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%83%A0_(%E3%83%97%E3%83%83%E3%83%81%E3%83%BC%E3%83%8B)

あらすじはウィキに譲って、とにかく、このオペラはその歌詞が素晴らしい!フランス革命後の市民が社会の中心になりつつ、かつての貴族も市民としてともに歩むという時代のなか、ロドルフォとミミは出会います。じつはここは物語にとってとても重要なのですが・・・・・

と言うのは、多分、恋愛経験豊富なら、ロドルフォとミミは合わないんじゃないかって思うはずなんです。夢想家のロドルフォ、夢想するけれども堅実なミミという、恐らく出自の異なる二人が出会い、「詩的」という点で結ばれていく・・・・・でも、夢想家のロドルフォはそのミミのけなげな姿によって自分を責めてしまう・・・・・それゆえに、ミミに対して時としてきつく当たってしまう・・・・・それが現実のものとなるのが、第3幕ですが、ミミによって周りの人達は魂が救済されていくのが、哀しい第4幕です。

第2幕での存在感溢れるムゼッタのエロティシズムと愛。それが第4幕では同じ女性として、人を愛した経験者として、ミミを心配し、探し、最後の願いをかなえます。ムゼッタの奔放な性に隠された感情すら、そこには表現されています。じつに素晴らしいドラマです。部屋での4人のかけ合いも絶妙!

だからこそですが、男性ソリストはもう少しカンタービレしてもよかったかなあって思います。主役に遠慮してだったのかもしれませんが、それはこのオペラの意味を半減させると思います。思い切ってカンタービレしてよかったと思います。一方の女性二人。まずはミミですが、稲見先生絶妙!調子が良かったのか、実に伸びやかでカンタービレする歌唱で、可憐でしかし芯のある女性を演じることができていたと思います。どことなく若くなっているように思うのはわたしだけ?

もう一人の、ムゼッタを演じた稲垣女史。いやあ、第2幕サイコー!大抵どの舞台でも足を出してもつま先だけなんですが、なんと!思い切って生足披露!なんといやらしい!でも、第2幕のムゼッタはそういう女性です。多分に機能不全家族出身と思わせるムゼッタですが、それを絶妙に演じていたのは素晴らしかったです。第2幕のエロティックなムゼッタがあって、第4幕の清廉なムゼッタが生きるんですから。あ、ムゼッタって本当はいいやつなんだな、って。それは図らずもミミの歌詞にある「ムゼッタは本当はいい人よ」を如実に証明することになっています。

これが、ラ・ボエームというオペラの本質なんです。登場人物は貧乏かもしれない。内面に問題を抱えているかもしれない。けれども、清廉な部分もあり、それが人間と言うものなんだという、人間賛歌に溢れているんです。

その点を、女性二人は充分に表現できていたと思います。男性がもう少し表現できて入れば、完全だったかなって思います。

そして、合唱団。第2幕第3幕ともにすばらしい!実はアマチュアなんですね。母体はコア・アプラウスのメンバーですが、そこに地元墨田区の方々も入られてでしたが、その歌唱がほんとうに素晴らしかった!プロ顔負けの表現力!

ボエームは、合唱団も動いて表現するだけに、非常に難しい作品であるはずなんです。多分ワーグナーの「タンホイザー」の「歌の殿堂を讃えよう」のほうがよほど簡単なはずです。それを実に素晴らしい、力強く生命力あふれる演奏だったのはもうどこに突っ込みようがあるのかと思います。打ち上げに呼んでいただき、そこで実は出だしがうまく行かないところがあったと言われましたけれど、実際の上演ではまったく問題なかったと思います。ただ、演出通りではなかったんでしょうね。それが演出通りならもっとすごいことになっていたと思うと、ゾクゾクします。

その点、オケが多少アンサンブルがあっていないと言うか、濁っていると感じました。アマチュアのような痩せた音ではないんですが、室内オケの編成の欠点をそのまま出してしまったような感じで、もったいなかったと思います。アマチュアでもその欠点を必死にカバーしようとしますので、そこはプロだけにこれで室内オケ?という驚きを感じたかったなって思います。

さらに、演出も素晴らしかったです。特に第4幕。普通、ミミのベッドは横向きで置かれるんですが、今回は真正面なんです。これだと、席によってアングルが異なりつつも、ミミの最期を存分に見ることができます。またソリストも表現がしやすいという点もありました。特にミミ役の稲見先生は・・・・・役に入り込んでいるのが手に取るようにわかり、もう涙を禁じ得ませんでした・・・・・

来年は蝶々夫人。大抵が曳舟文化センターである公演が、蝶々夫人の時だけは白寿ホールという今までを踏襲するのか、それとも曳舟でやるのか・・・・・どちらにしても、蝶々夫人も悲劇。それを肩ひじ張らず稲見先生がどこまでやるのか。来年も楽しみです。




聴いて来たコンサート
オフィス・アプローズ「ラ・ボエーム
総監督・演出:砂川稔
ミミ:稲見理恵(ソプラノ)
ロドルフォ:岡本泰寛
マルチェロ:成田博之
ムゼッタ:稲垣貴子
ショナール:清水良一
コルリーネ:矢田部一弘
べノア/アルチンドロ:佐藤泰弘
助演:柴山秀明
パルピニョール/税関:井東譲
サノン・フィルハーモニー合唱団(合唱指揮:稲見理恵)
グルッポピッコリーニすみだ(合唱指揮:稲見理恵)
工藤俊幸指揮
ウッドランドノーツ

平成30(2018)年9月9日、東京墨田、曳舟文化センター劇場ホール

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。



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