かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から〜小金井市立図書館〜レイフス サガ・シンフォニー

東京の図書館から、小金井市立図書館のライブラリを御紹介しています。今回はアイスランドの作曲家、レイフスの「サガ・シンフォニー」を取り上げます。

小金井市立図書館はある意味不思議な図書館で、全集とかはあまりなく有名曲単独のアルバムが多いのが特徴ですが、たまーにこんなアルバムが有ったりするんですよねー。

そもそも、レイフスを知らない人のほうが圧倒的に多いのではないでしょうか。アイスランドにもクラシック音楽の作曲家がいたのかという驚きのほうが先に来るかもしれません。

ヨン・レイフス
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A8%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%95%E3%82%B9

時代的には、十分20世紀音楽と新古典主義音楽の影響を受けています。ですが、レイフスの音楽はむしろ、伊福部などのに近いんです。以下は参照したサイトで、そのサイト主さんもウィキを参照してはいますが、ドビュッシーに似ているというのは、まあ、確かにそうなんだけど、じっさいの音楽としてはどうなんだろうって思います。ただ、解説としてはとても優れています。

M-191

 レイフス 交響曲第1番Op.26(「サガ・シンフォニー」)
http://www7a.biglobe.ne.jp/~hainn-hitorigoto/m-191leifs.html

そもそも、サガって何?って思いますよね。上記サイト主さんもその説明がすっぽり抜けてしまっているので、単なるグァーンガシャーンという音楽となってしまう訳なんですが、それで何を表現してるのかが、この作品の本質なんです。

で、さて、サガってなんでしょう?え、SAGAサガ!でしょ?って?あのー、それははなわでしょー。ちーがーう!

サーガと伸ばせば、ああ、そっちねとゲームや映画好きな人ならわかるはずです。そう、物語とか伝説とか訳されるものです。

サガ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%AC

ほら、ウィキにもしっかりと出ているんですよ、検索すれば。この作品でレイフスがしたかったこととは、アイスランドの自然を完全描写することではなく、その伝説や物語を、音楽で映画のように表現すること、なんです。

しかもこのウィキのが優れているのは、サガは基本的にノルウェーアイスランドの伝説を物語として扱っているという記述がある点なのです。ですからサガ・シンフォニーということは、アイスランドの伝説の数々を、音楽で表現しようとしたもの、というのが基本です。もっと言えば、わたしはこの作品は、和声こそ20世紀でどんちゃん騒ぎ系ですが、ベートーヴェンの「ウェリントンの勝利」やチャイコフスキーの祝典序曲「1812年」の系譜に連なる、というかそれらの作品を念頭に置いている作品だと考えています。

ウェリントンの勝利
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%B3%E3%81%AE%E5%8B%9D%E5%88%A9

1812年 (序曲)
https://ja.wikipedia.org/wiki/1812%E5%B9%B4_(%E5%BA%8F%E6%9B%B2)

この二つの作品と、レイフスに共通するものって、なんだと思いますか?まず二つに共通する物。それは、銃を音楽の表現として取り入れている、と言う点です。どちらもナポレオンの対外戦争を描写したものですから、当然だと言えます。それはとりもなおさず、戦場を表現したものです。翻ってレイフスのサガ・シンフォニーでは、金属音が第3楽章以降たくさん出てきます。それは、第3楽章以降、戦闘が関わる伝説が多いから、なんです。つまりは、剣が合わさる音、です。

ですから、レイフスのこの作品は、単なる爆音系と理解してはだめで、むしろ映画「ゴジラ」のように、アイスランドの自然を背景にしつつ、5つの伝説を描いたもの、なんです。もっと言えば、映画のBGMをそのまま交響曲にしてしまおう、というような意欲作だとも言えるでしょう。

それも、単なるBGMでもない、BGMと映画本編の音楽的融合とも言うべき作品です。ですからある意味、とても分かりやすいんです、私たち映画やゲームに囲まれた世代にとっては。しかも、音楽史を俯瞰すればより理解しやすい側面すらあります。

けれども、確かにクラシックが長年培ってきたものは殆ど破壊されています。その点で分かりずらい部分はあるでしょう。けれどもそれは何もレイフス一人ではありません。20世紀、特に戦後の作曲家達は殆ど、クラシックが長年培って来たものの破壊を試みてきたのです。例えば、ジョン・ケージがその代表でしょう。私は残念ながら和声が好きな人なので、ジョン・ケージの例えば「4分33秒」はいまだに聴けません。けれども、このレイフスなら聴けますし、しかも楽しいです。

ヴァンスカは、このようなサガ・シンフォニーの本質をよく理解して振っていると思います。オケのアイスランド交響楽団も、ヴァンスカ同様、作品の本質を理解し、共感しているからこそ、爆音はシャープですし、静かな和声的な部分では、透明感に満ちています。そのコントラストが、背景にアイスランドの自然を、メインに物語をという、まるで舞台か映画のような世界を現出させるのに成功しています。演奏がしっかりしているからこそ、作品の本質が浮かび上がっています。こうなると、レイフスの他の作品も是非聴きたくなりますが、もう棚が・・・・・

そろそろ、幾つか売り払わないといけないかも、です。




ヨン・レイフス作曲
交響曲第1番作品26「サガの英雄」(「サガ・シンフォニー)」
オスモ・ヴァンスカ指揮
アイスランド交響楽団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




このブログは「にほんブログ村」に参加しています。

にほんブログ村 クラシックブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ 合唱・コーラスへ
にほんブログ村