かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:ヴィヴァルディ 宗教音楽全集2

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、ヴィヴァルディの宗教音楽全集を取り上げていますが、今回はその第2集を取り上げます。

第2集は第1集のよろこびに満ちた音楽からは一転、きりっとした音楽が取り上げられています。とはいえ、第1集の音楽を否定したいのではありません。

第2集では、ヴィヴァルディのイメージとしてある「どこか明るい」というイメージすら、一変する音楽に満ちているのです。例えば第2曲である「主がわが主に仰せになった ニ長調 RV.594」や最後に収録されている「幸いなるかな 変ロ長調RV.598」がそうなのですが、長調でありながら、短調が絶妙に使われていることで、深い信仰が表現されています。

ヴィヴァルディの音楽の素晴らしさは、その音楽の「深さ」にあると、私は思います。例えば、ヴィヴァルディの音楽で最も有名な「四季」を例に取れば、第1曲の「春」のイメージが強すぎて、私達はそのイメージでヴィヴァルディという作曲家を判断しがちなんですが、同じ「四季」の中で「夏」は短調をうまく使って夏の憂鬱さを絶妙に表現していますし、また「冬」では、その厳しさがこれまた短調で絶妙に表現されています。

そう考えれば、ヴィヴァルディの音楽と言うものは決して明るさだけではなく、短調を絶妙に使うことで、音楽に深みがあることが分かります。まさにこの第2集の、上記に上げた2曲はその「四季」のような深みを持っている作品で、ヴィヴァルディという作曲家の表現力の豊かさを物語る作品だと思います。

よくよく考えてみれば、ヴィヴァルディという作曲家はバロックの作曲家でありながら、古典的な様式の協奏曲を書いた作曲家でもあります。それは確実に前期古典派の音楽家を通して古典派の作曲家に受けつがれていったと言えるわけです。

その意味では、この全集がここまでモダンオケのイギリス室内管を採用しているのは良い判断だと思います。ぺライアの指揮とピアノでモーツァルトのピアノ協奏曲全集も収録したことのある実力のあるオケですが、まさに室内オケだからこそ、バロックの作品でもぴったりだと言えるでしょう。特にこの第2集に収録されたような、短調をうまく使って絶妙なアクセントを付けている作品を演奏させれば絶品です。合唱団の聖歌隊もビブラートがきいているとはいえ、第1集の「グローリア」に比べればすっきりとした発声になっているのも私とすれば好印象です。それは力強さと透明感が絶妙に同居することで、作品が持つ信仰の「魂」がしっかりと表現されているように思うからです。

指揮するネグリも、オケと合唱団の魅力を良く引き出していると思います。特に聖歌隊が本当に素晴らしく、きりりとした音楽がどこか喜びをもって迎えられているのを感じるんですよね。歌う宗教であるキリスト教らしさが全面に出ているのもとてもいいと思います。仏教の声明もこのブログではご紹介しています、なかなかこのようには行かないですよ。般若心経を喜びをもって唱和することもないですしね(そもそも、般若心経自体がそんな讃美のお経ではないですし)。

今月のお買いもの:黛敏郎 涅槃交響曲
http://yaplog.jp/yk6974/archive/1117

上記エントリに収録されている薬師懈過と、このヴィヴァルディの音楽を比べれば、それは単純に言えばキリスト教と仏教の差です。本来は仏教にも仏への賛美の経典があるので、どなたかが作曲すればそのほうがもっと比較になるのだと思いますが、日本は長らく葬式仏教だったので・・・・・これからを期待したいと思います。このヴィヴァルディの作品の演奏をきいて、なら私は仏教の、仏を賛美する経典を歌詞に使って作曲をしてみよう、という作曲家、出でよ!っていうとこですかね。

でも、例えば東大寺修二会も、仏を賛美するものではあるんですけどね・・・・・やはり、このヴィヴァルディのような明るさと深さはないです。それは仏教の世界観ですし、それはそれで私は魅力的なんですが、このヴィヴァルディの、教会音楽にたずさわった人生が生み出した喜びと深さに満ちた音楽もまた、かつて大学時代に古美術ファンとして修二会にのめり込んだ人間としては、また聴いていて喜びが湧き上がってくる音楽でもあるのです。




聴いている音源
アントニオ・ヴィヴァルディ作曲
草原にて歌え RV.636(主がわが主に仰せになった ニ長調 RV.594の導入)
主がわが主に仰せになった ニ長調 RV.594
マニフィカート ト短調RV.611
幸いなるかな 変ロ長調RV.598
マーガレット・マーシャル(ソプラノ)
フェリシティ・ロット(ソプラノ)
サリー・バージェス(ソプラノ)
スーザン・ダニエル(メッゾ・ソプラノ)
アン・マレイ(メッゾ・ソプラノ)
リディア・フィンニ―(コントラルト)
アン・コリンズ(アルト)
アンソニー・ロルフェ・ジョンソン(テノール
ロバート・ホル(バス)
オルガ・ヘゲドゥス(チェロ)
エイドリアン・べアース(ダブルベース
ジョン・コンスタブル(オルガン)
ジェフリー・テイト(オルガン)
アルステア・ロス(オルガン)
ジョン・アルディス聖歌隊
ヴィットリオ・ネグリ指揮
イギリス室内管弦楽団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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