かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:メンデルスゾーン 交響曲全集2

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、前回からシリーズでメンデルスゾーン交響曲全集を取り上げていますが、今回はその第2集を取り上げます。

一応、収録は番号順になっており、この第2集では第2番が収録されていますが、第2番は作曲順としては5作中の4番目のなる作品です。

交響曲第2番 (メンデルスゾーン)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC2%E7%95%AA_(%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%B3)

このウィキの解説は丁寧でいいですね。特に歌詞が載っているのが親切です。やはり、声楽がある作品は歌詞が分かってなんぼ、です。

で、ウィキの解説はページの関係で省かれている部分があります。ではなぜ、グーテンベルクの印刷技術開発400年記念で、歌詞が聖書なのでしょうか?

それは、メンデルスゾーンが当時敬虔なプロテスタントだったから、です。プロテスタントカトリックに対抗しえた一つの要因が、活版印刷という新技術によって、プロテスタントの聖書がヨーロッパに広まったからです。中学・高校あたりで世界史を選択した人は、ピン!と来たかと思います。世界で最初に印刷されたのは、聖書、しかも、プロテスタントの聖書だったからです。

グーテンベルク聖書
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%BC%E3%83%86%E3%83%B3%E3%83%99%E3%83%AB%E3%82%AF%E8%81%96%E6%9B%B8

だからこそ、メンデルスゾーンは作曲するにあたって、ルターが訳した聖書から歌詞を採ったわけなのです。向こうの人たちからすれば、それできちんと祝祭のメッセージが伝わるわけです。

多分、そのあたりがメンデルスゾーン交響曲全体が日本では評価が低い原因の一つなのでしょう。作品一つ一つは決してどれも素晴らしく、低く見る要素があるとすれば古典的という部分くらいしかないはずなのですが、それでも演奏機会が他のロマン派の作曲家よりも少ないのは、恐らくその背景が分かりにくく、その分共感しにくいという点なのでしょう。

確かに、この第2番は「賛歌」と標題が付いているにもかかわらず、印刷技術に関する歌詞は全く出てきません。そのため余計この第2番はアマチュアですら演奏機会が少ない作品なのでしょう。でも、プロテスタントの人たちからすれば、これで十分賛歌の意味が分かる訳なんです。

つまり、この作品はとても宗教的な作品だと言えます。そのせいか、後年の「エリア」にそっくりな旋律が沢山出てきます。

エリヤ (メンデルスゾーン)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%83%A4_(%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AB%E3%82%B9%E3%82%BE%E3%83%BC%E3%83%B3)

とみると、この「賛歌」は別の側面が浮かび上がってきます。メンデルスゾーンはもともとはユダヤ教徒でした。それがプロテスタントへと改宗しています。新約聖書だけではなく旧約聖書も歌詞に取り入れていることからすれば、この作品はメンデルスゾーンの当時の宗教観への問題提起を、静かに行っているとも言えます。作曲当時はそういった複雑な意味が、第2部の歌詞だけで聴き手に伝わったことでしょう。

そうなると、これはたんなる賛歌ではありません。メンデルスゾーンの内なる苦しみを手放すための作品だとも言えます。そういう視点で聴くと、また違ったメッセージが私たちに届くのではないでしょうか。

演奏は、ワールトの指揮が見事です。端正でありながらドラマティックな解釈は、作品が持つ祝祭性の中に潜む複雑に隠されたものを表に出します。それはおそらく、プロテスタントが辿った道筋がメンデルスゾーンに重なるからなのでしょうし、ワールトがその点を重視して解釈し、タクトを振っていると言うことだと思います。オケも生き生きとしており、合唱団は伸びやかです。共感の生命力が作品全体にみなぎり、演奏者一人一人がまさしく様々な想いを内包しつつ祝祭の声を上げている、そんな音楽に仕上がっています。

余計なごてごてした祝祭感はなく清潔感溢れており、でも作曲当時の複雑な背景にも想いが馳せられており、さすがワールトだと思います。




聴いている音源
フェリックス・メンデルスゾーン=バルトルディ作曲
交響曲第2番変ロ長調作品52「賛歌」
アンネゲール・シュトゥンプヒウス(ソプラノ�T)
キム・ヤンへ(ソプラノ�U)
マティアス・ブライドルン(テノール
エド・テ・ワールト指揮
オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団・合唱団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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