かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:ヴァインベルク トランペット協奏曲、交響曲第18番

今月のお買いもの、平成27年8月に購入したものをご紹介します。今回はディスクユニオン新宿クラシック館にて購入しました、ナクソスのヴァインベルクの作品アルバムをご紹介します。

ヴァインベルク。また知らない作曲家が出てきました。ポーランド生まれで旧ソ連で活躍した作曲家です。

ミェチスワフ・ヴァインベル
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%82%A7%E3%83%81%E3%82%B9%E3%83%AF%E3%83%95%E3%83%BB%E3%83%B4%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%83%99%E3%83%AB%E3%82%AF

シンフォニストだったとも言えますし、また、弦楽四重奏曲も多くのこしています。ベートーヴェンが好きな人ならば、けっこう聴けるのではって思います。

ウィキでははっきり書いていませんが、所謂ユダヤ人なのですね。それゆえに、亡命した先のソ連でも迫害を受けると言う、苦難の人生を送った人です。

そして、ショスタコーヴィチとも親交があると来れば、ピン!と来ます。なるほど、ショスタコユダヤに対して寛容だったのは、ヴァインベルクとの出会いがあったことも一因なのだなと。

このアルバムでは管弦楽作品二つが並んでいますが、いずれ弦楽四重奏曲も聴いてみたいと思う作曲家です。

さて、まず1曲目のトランペット協奏曲から行きましょう。1967年作曲された作品で、バリバリにショスタコの影響を感じる作品です。いや、ショスタコなんじゃない?と言われても不自然さはないくらいです。

第3楽章でメンデルスゾーンの「結婚行進曲」が引用されているのも、ショスタコばりですが、それはまたヴァインベルク自身がユダヤ人であるという自覚から出るものでもあります。単にショスタコーヴィチのマネをしたわけではないのですね。

此の協奏曲を聴いて、ふと思い出した映画があります。「オーケストラ!」です。

オーケストラ!
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%82%B1%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%A9!

感動する映画ですが、実は二つの歴史的事件を背景にしています。一つはソ連崩壊、そしてもう一つが、旧ソ連時代のユダヤ迫害なのです。映画はまずその二つの歴史的事件をかたってから、クライマックスのコンサート(チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲)へと向かっていきます。

実に、旧ソ連において、ユダヤ人迫害が大きなウェイトを占めているかということを、この映画は示していますし、そして、それをさらに裏付けるものが、ショスタコーヴィチの作品であったり、そしてこのヴァインベルクの作品だったりするのですね。

わが国では、変な陰謀論からユダヤが悪人扱いされることが多いのですが(そのくせ、何もアクションは起こさないのですが)、ユダヤがなぜアメリカにおいてロビー活動をするのかと言えば、第2次大戦における迫害が大きな要因です。そしてその対象になったのは、主に芸術家など文化人でした。

これって、どこか現代の日本にそっくりではありませんか?反知性主義が政治のトップに君臨する、この国の現状はじつにユダヤ人を迫害した時の旧ソ連そっくりですし、共産党政権に似ています・・・・・

それを皮肉って作曲する人が、日本でも出てほしいものです。このヴァインベルクのように・・・・・亡命しないと、難しいのかもしれません。

次に、交響曲第18番「戦争、これより惨い言葉はない」ですが、1986年と、トランペット協奏曲から20年後に作曲されました。ヴァインベルクの青年時代の記憶から作曲されています。前後の第17番、第19番とセットで作曲されており、「第二次大戦をふりかえる」がテーマになっている反戦作品です。旧ソ連の詩人セルゲイ・オルロフとアレクサンドル・トアルドフスキーの詩、そして民謡に由来するテキストが用いられた、言わばオラトリオのような作品です。

第1楽章が言わば序章のようになっており、合唱は第2楽章から入ってきます。劇的なシーンがあるのかと思いきや、オラトリオらしくむしろ静謐な音楽が進行していきますので、人によってはつまらん!となってしまいがちです。しかし、トランペット協奏曲とセットで聴きますと、それは敢えてやっているということははっきりするのです。これはいい編集ですね〜。

歌詞が分かればもっといいのですけどね。とりあえず、ブックレットの英語を見てみますと、戦場の悲惨さが歌われているのはわかります。日本語へ訳せればいいのですが、何分私もそれだけの時間がないので・・・・・申し訳ないです。それは他の人に託せねばなりますまい。

ただ、伝統的な4楽章形式にしていると言う点は、ベートーヴェンの第九を彷彿とさせます。様々な要因、或は「想い」というものが交錯する作品だと言えるでしょう。タイトルだけで判断するのは早計であるように思います。若き日に戦争を経験し、その上その戦争によって亡命を余儀なくされたうえで亡命先で迫害を受けた人が、素直な作品を書くとは、到底思えないので・・・・・

演奏はナクソスにしてはダイナミックレンジを多くとって録音されているせいか、とてものびのびとしたものになっています。特に、交響曲第18番では、合唱団の伸びのある声が、悲惨な事態に対する悲しみを十二分に表現することにつながっており、素晴らしいです。端正であるだけなく、ダイナミックさもあるのですが、全体としては静謐さが貫かれている・・・・・祈りの音楽を、徹底的に祈りで満たしていきます。ゆえに、作品が持つ「哀しみ」が、切々と聴き手に伝わってきます。

いい作曲家に出会えたように思いますし、演奏者にも感謝したいと思います。




聴いているCD
ミェチスワフ・ヴァインベルク作曲
トランペット協奏曲作品94
交響曲第18番「戦争、これより惨い言葉はない」合唱と管弦楽のための 作品138
アンドリュー・パリオ(トランペット)
タティアナ・ペレヴォズキナ(ソプラノ)
エカテリーナ・シクノヴァ(アルト)
ウラディーミル・ドブロホウスキー(テノール
ザハール・シクノフ(バリトン
サンクトペテルブルク室内合唱団
ウラディーミル・ランデ指揮
サンクトペテルブルク国立交響楽団
(Naxos 8.573190)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




このブログは「にほんブログ村」に参加しています。

にほんブログ村 クラシックブログへ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシック音楽鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ クラシックCD鑑賞へ
にほんブログ村
にほんブログ村 クラシックブログ 合唱・コーラスへ
にほんブログ村