今月のお買いもの、平成27年7月に購入したものをご紹介しています。銀座山野楽器にて購入した「勝利三部作」の最終回は、第3作目である「アフロディーテの勝利」です。
1951年に書かれた、つまり第2次大戦後に書かれたこの作品は、再びオーケストラを伴奏していながら、第2作のシンプルさも失っておらず、むしろ第1作のカルミナを聴き慣れている人は、この第3作目のほうがすんなり耳に入ってくるだろうと思います。
Trionfo di Afrodite
https://en.wikipedia.org/wiki/Trionfo_di_Afrodite
日本語の方がいいと言うのであれば、このブログなどは如何でしょう?
愛は勝つ 〜《カルミナ・ブラーナ》余談
http://blog.livedoor.jp/masamifc/archives/1316528.html
うーん、確かに私もO.R.Fのカルミナも見ているので、バレエ用としても行けるとは思いますけれど、そもそもオルフがバレエ用として作曲したとは思えないんですよねえ。勿論、バレエとしても使えるようにとは作曲したとは思いますが・・・・・・
実はその点にこそ、私はこの作品、或は勝利三部作の本質があるのではないかって思っているのです。
アフロディーテの勝利に関しては、私も初めて聴く作品であり、なおかつ日本語訳がないので何とも言えないのですが、様々な資料を基に総合すれば、これはギリシャ神話を借りた結婚式の物語である、ということです。
これは面白いと思います。なぜなら、それまでの2作品は、恋愛およびその遍歴などが主体であって、時として卑猥な方向もあったからです。ところが、この第3作では、それは影をひそめ、ひたすら結婚の喜びを、時としてこれもエロティックにすら表現しているのです。
むしろ、卑猥さがあるとすれば、その結婚を前提としたエロティックさであると言えるでしょう。となると、この作品が3つの作品の中で持つ役割というものが、浮びあがってきます。それは、男女の関係の最終段階は、結婚であるということです。
それは些か古いかもしれませんが、でも、様々な男女の関係をかたってきた三部作の中で、比較的健康的な内容を持つこの作品が、なぜ三部作として作曲されたのかを考える時、不可避ではないだろうかと思うからです。酒池肉林のどんちゃん騒ぎである「カルミナ」、男女遍歴を描いた「カトゥーリ」、そして結婚をテーマにした「アフロディーテ」。私としては人間の成長を描いたものとしても受け取れるのですね。
となると、カルミナだけが評価されているというのは、どこかにバイアスがかかっているような気もします。勿論、カルミナが作品として素晴らしいという事は言うまでもありません。しかし、もしオルフとしては、三部作としている以上、「セット」であったとすれば、意味することが全く分かってくるからです。カルミナはたんなる序章に過ぎないともとらえることができるからです(ただ、演奏時間はカルミナが一番長いのですけどね)。
さらに、オルフは三部作すべてに合唱を入れています。これが私が「そもそもバレエ用ではない」と判断する理由です。え、そんなことがと言う方もいらっしゃるかもしれませんが、これらは基本的にカンタータとなっています。つまり、視点を変えれば、三部作はバッハリスペクトだと言えるわけです。その上で、第2作「カトゥーリ・カルミナ」では編成でストラヴィンスキーのバレエ作品と一緒にしたわけで、同時代の作曲家たちへのリスペクトにもなっています。そこには、オルフの音楽史を俯瞰した「眼」というものが存在していると言えるでしょう。
その上で、この「アフロディーテの勝利」では、はっきりとバレエ志向をもっていると言えるでしょう。オルフ祝祭合唱団がバレエも取り入れて演奏したのは、この作品に関してはまさしく作曲者の意図した方向だったと言えるでしょう。
このケーゲルの指揮も、その躍動感が徹底されています。時として野性的な暴力性すら感じ取れますし、高音部のエロティックな美しさと言ったら!さすが旧東独の合唱団だなあと思います。シンプルな発声が、人間の素直な心理を現出させているように思います。
この三部作のもう一つのテーマはおそらく「欲」だと私は思っていますが、そのテーマがこの演奏からは真っ直ぐ聞き取れるのです。花嫁が欲しい!結婚したい!も立派な欲ですから。それがなんと嫌味なく伝わってくるのだろうと思うと、エロティックさがある作品でも、感動します。ケーゲルという指揮者は、本当に人間が好きだったのだろうなあと思います。
ケーゲル党と言われる人たちの、はまる心理が一つ理解できたような気がします。確かに、私もケーゲルが指揮した第九は好きですしね〜。
それにしても、古代ギリシャやローマに還るようなこの三部作。それ自体も何かのメッセージを含んでいるように思いますし、おそらくそこもケーゲルがおさえているように演奏からは聞き取れるのですが、それはあまり触れないほうがいいのかもしれません。一つのルネサンスであるとも言えるわけですから・・・・・
それはおそらく、20世紀という時代が持っていた「狂気」の裏返しなのだと思います。
聴いているCD
カール・オルフ作曲
演奏会形式の音楽劇「アフロディーテの勝利」
ヘルベルト・ケーゲル指揮
ライプツィヒ放送交響楽団
ライプツィヒ放送合唱団他
(Brilliant Classics 95116-2)
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