かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買いもの:ショスタコーヴィチ 映画音楽「馬あぶ」「五日五夜」組曲

今月のお買いもの、平成27年6月に購入したものをご紹介しております。今回はショスタコーヴィチの「馬あぶ」と「五日五夜」のそれぞれ組曲が収録されたアルバムをご紹介します。ディスクユニオン新宿クラシック館での購入です。

ショスタコーヴィチと言えば、このブログでも交響曲の全集を取り上げたかと思いますが、じつはショスタコーヴィチのライフワークの中で重要なものの一つに、映画音楽があることも、言及したことがあるかと思います。

コンサート雑感:オーケストラ・ダスビダーニャ第22回定期演奏会を聴いて
http://yaplog.jp/yk6974/archive/1273

ただ、我が国において、ショスタコーヴィチの映画音楽がコンサートピースとして取り上げられることはめったにありません。ダスビなど、一部のアマチュアオケだけと言ってもいいかと思います。ただ、その映画音楽にも、交響曲に匹敵するほどの、様々な材料が詰まっていることに、聴きますと気が付かされるのです・・・・・

そもそも、このアルバムを購入するきっかけになったのは、ダスビが映画音楽を取り上げていたからにほかありません。このアルバムに収録されている作品の内、「馬あぶ」はダスビも取り上げており、そのプログラムの解説がネット上にアップされていますので、ご紹介しておきますとともに、説明をそちらにゆだねることとします。

映画『馬虻』の音楽による組曲 作品97a
(L.アトヴミャーン編)
http://www.dasubi.org/dsch/kaisetu/11_1.html

なぜ、説明もゆだねてしまうかと言えば、このアルバムの編曲も、アトヴミャーンだからなのです。それはカップリングの「五日五夜」も一緒です。

馬あぶは、1955年ですからショスタコの人生としては晩年に相当する時期になりますが、ようやく国家からの抑圧が緩んだ時期であると言えましょう。舞台はイタリアですが、そのテクストがソ連という国家が成立する過程に似ていたため、絶賛されたのかもしれませんが、人気になった映画でした。組曲となった音楽一つ一つはとてもわかりやすいものばかりで、それも高評価だったのかもしれません。

一方の「五日五夜」。「馬あぶ」からさらに5年後の1960年に作曲された映画音楽ですが、これはもっとショスタコーヴィチらしい音楽だと言えるでしょう。それをかたるには、以下のサイトをまずご覧になってみてくださいませ。これほど的確に表現されているものよりは、残念ながら私は超えることが出来ません。

ショスタコーヴィチ
映画音楽「五日五夜」 作品111 より ドレスデン解放
http://www2u.biglobe.ne.jp/~smacky/kakure.dsch.fiveday.htm

上記サイトで言及されているのは、「ドレスデン解放」だけなのですが、ショスタコーヴィチが映画音楽でも自らが交響曲弦楽四重奏曲でも使っている「引用」を用いていることに気が付かされるのです。そして、これも私がこのアルバムを購入しようと思ったきっかけでした。

ショスタコーヴィチは実は保守的な音楽を書く人であったことは、私も何度か言及していると思いますが、そのルーツをたどって行けば間違いなく、バッハに辿りつくわけで、バッハ自身も他人や自作から引用して作曲をした人でしたし、バロックではそれは特段珍しいことではありませんでした。

それを、20世紀の、映画音楽で、自分の作曲した交響曲弦楽四重奏曲などと同様に作曲したに過ぎない・・・・・私はそう思います。ただ、だからと言って上記ページが間違っているとかではないのです。その延長線上によって、当時のショスタコーヴィチが自らのつらさを吐露したのと同様に、言いたいことを表現したのだとという事です。

このアルバムでは、オケはウクライナ国立交響楽団ですが、きちんとしたプロオケが演奏すれば、どれも綺羅星のような質の高さをもっていることに気が付かされます。映画音楽だからというレッテル張りが、いかにいい加減な論評を生み出すのかという警鐘のように、私には受け取れました。

確かに、このアルバムに収録された音楽一つ一つは、ショスタコーヴィチ交響曲弦楽四重奏曲のように、不協和音の嵐が吹き荒れ、心の内面の吐露のようなものはほとんどないと言っていいだろうと思います。しかしながら、だからと言って薄っぺらいのかと言えば、そんなことはないと言えましょう。音楽は上質ですし、楽しめ、また人によっては魂で何かを感じる人もいるでしょう。

万人受けするがゆえに、まるで刃のような鋭さはないので、それを期待する人には物足りないかもしれませんが、ショスタコーヴィチの「語法」というものをよく知っている人にとっては、音楽によっては作曲者の「魂」を受け取れるものなのだという事を、上質な演奏がはっきりと言及しているように、私には聴こえるのです。その真偽を、是非とも皆さんで聴いて判断していただきたいと思います。




聴いているCD
ドミトリー・ドミトリエ―ヴィチ・ショスタコーヴィチ作曲
映画音楽「馬あぶ」組曲
映画音楽「五日五夜」組曲
テオドレ・クチャル指揮
ウクライナ国立交響楽団
(Naxos 8.553299)

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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