かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:バッハ 管弦楽組曲2

神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、バッハの管弦楽組曲の第2回となります。第2集の第3番〜元第5番である組曲ト長調BWV1070の3曲が収録されています。

はい、ですので訂正します。この音源、かつての形で収録されているものなんです。いずれにしても、前回ご紹介したかつての私のエントリを書くときに参考にした演奏の一つが、この音源であることは、訂正することなく間違いありません。

でも、やはり第5番は違和感があると言うか、独特であることは一目瞭然です。ただだからといって、偽作と言ってしまうのはどうなのだろうかという視点は、今でも持っています。

勿論、おそらくBWV1070の作曲はヨハン・セバスティアンではなく、フリーデマンだと私も思います。ただ、管弦楽組曲という作品集そのものから、偽作だからと言って除いてしまうのはどうなのだろうか思うのです。

もう一度例示しますが、我が国鎌倉時代の国宝仏で、東大寺南大門金剛力士像があります。これを運慶快慶作ではないから偽作だ!と言ってしまえばいいのかという事になってしまうんですね。少なくとも日本美術史に置いては、その二つは運慶と快慶が携わったものとして、端的には「作」と言われるのです。

その二人の下に大勢の小仏師がおり、運慶と快慶の二人は、その大勢の小仏師を束ねる棟梁として、「大仏師」を名乗ったのでした。バッハも言わば「大仏師」であったと考えることは可能なのではないでしょうか。

バロックという時代は、自作を編曲する時代でもある訳で、場合に寄ってはルネサンスからの伝統でパロディすらあります。となると、編集という作業もあった可能性があり、それがバッハにおいて明確なのがこの管弦楽組曲であるとも言えるわけです。

実際、第1番と第2番は完成後手が加えられており、その形で現在伝えられています。しかも、ヨハン・セバスティアンの長男フリーデマンに対する溺愛は、様々な史料が学者によって呈示されており、私はこの管弦楽組曲も史料の一つであるように思えるのですが・・・・・

となると、管弦楽組曲の性格ががらりと変わります。J.S.バッハの真作を集めたものではなく、バッハ・ファミリーの作品あるいは手による編曲を集めた、バロック最後のフランス風序曲集の集大成である、と。勿論、その中にはヨハン・セバスティアンの真作も入っています。

そう考えれば、この音源のように第5番まで入れることは、なんの不思議もないという事になります。リフレインをpもしくはppにするなどはまさしくバロック当時の演奏様式に則ったものです。その上で注目なのが、有名な第3番のエール、「G線上のアリア」とも呼ばれる音楽は、ppで演奏されているという点です。

少なくとも、この作品をppで演奏するということが通例ではなく、fで演奏されている例も多いのですが、この音源ではppもしくはpです。高音部もあるのに、です。

古典派までの演奏様式は、高い音を強く、低い音を弱くです。その様式を、バロック期の演奏様式にのっとっているオケがやるには意味があるはずです。では、何に依っているのか?考えられるのは、やはりヨハン・セバスティアンという作曲家が生きた時代です。バロックであると同時に、そのバロックという時代は終わりを告げようとしていた時代に、バッハは作曲をしているのです。

管弦楽組曲のほとんどはケーテン時代までに成立しているとされていますが、実は第3番は1731年とされており、むしろライプツィヒに移ってからなのです。しかも、その後手が加えられている様子もある。となると、様式として何を選択するのかという点で、様々な時代が混在する可能性もあると言うわけです。

最後にフリーデマンの作であろうとされるBWV1070を入れているのがその証明であるように、私には思います。フリーデマンが活躍した時代は、すでにバロック期ではなく、前古典派と呼ばれる多感様式の時代です。であれば、高音部をpで演奏するケースは、稀ながら出てきます。特に、古典派に入ると、モーツァルトの合唱曲の傑作「アヴェ・ヴェルム・コルプス」が一例として挙げられます。めずらしくppの指示があるこの作品と同じように演奏することは、必ずしも悪いとは私には思えません。

勿論、原則は「高音は強く、低音は弱く」なのですが、手稿譜にppなどの指示有となれば、話は全く異なってくるからです。このあたりは、手稿譜を見ていない私には何とも言えない部分なので、異論をはさむことが出来ません。ですから、また面白いと感じるわけでもあります。

様々な音楽記号は、作曲者が付けた句読点でもあるので、おろそかにはできない問題ですが、ついていない場合、様々頭を巡らせることになります。そのめぐらせようが、この音源は興味深く、また素晴らしい演奏につながっているのが、妙味であるなあと思います。




聴いている音源
ヨハン・セバスティアン・バッハ作曲
管弦楽組曲第3番ニ長調BWV1068
管弦楽組曲第4番ニ長調BWV1069
組曲序曲ト長調BWV1070
ロス・ポプル指揮
ロンドン祝祭管弦楽団

地震および津波により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福をお祈りいたします。同時に原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方に、感謝申し上げます。




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