神奈川県立図書館所蔵CDのコーナー、今回から2回に渡りましてリムスキー=コルサコフの交響曲を取り上げます。今回はその第1回目として、第1集に収録されている第1番と第2番「アンタール」を取り上げます。
さて、リムスキー=コルサコフと言いますと、皆さまはどういう作品を想像されますでしょうか?恐らくほとんどの人が、「シェエラザード」を想起するかと思います。確かに、リムスキー=コルサコフのその作品は素晴らしいものです。しかし、彼は交響曲も書いているのです。しかも、作品番号1が、です。
ニコライ・リムスキー=コルサコフ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8B%E3%82%B3%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%83%A0%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC%EF%BC%9D%E3%82%B3%E3%83%AB%E3%82%B5%E3%82%B3%E3%83%95
その作品番号1こそ、交響曲第1番であるのです。
交響曲第1番 (リムスキー=コルサコフ)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC1%E7%95%AA_(%E3%83%AA%E3%83%A0%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC%EF%BC%9D%E3%82%B3%E3%83%AB%E3%82%B5%E3%82%B3%E3%83%95)
この作品はおそらく、シェエラザードのイメージで聴いてしまうとなーんだとなってしまう部分があるかと思いますが、管弦楽法としてはまだまだ未熟な時代なので仕方ないと思います。それでも、旋律線がはっきりしている作品であり、後期ロマン派の流れを汲む、国民楽派の作品だと言えましょう。
しかも、後に改訂された時にアマチュア向けに優しくされており、それもこの作品の評価を下げる結果となってしまっているでしょう。ただ、私は作品としての評価はたしかにそれほど高くはないと思いつつも、リムスキーーコルサコフの教育者としての後の顔がそうしたのであろうなあと思っていますので、退けるほどではないです。
こういった作品があることが、アマチュアにとっていいことであるのは間違いないと思います。勿論、アマチュアといってもレベルは様々ですから、例えばナデージダやダスビのように難しい作品に挑戦するオケがあってもいいですし、宮前フィルのようにまだ後期ロマン派に留まっているオケがあってもいいわけなので、簡単な作品こそいいとは言いませんが、こういった作品があることは、オーケストラに挑戦しようとする敷居を低くする役割をもっていると思います。
さて、次の第2番こそ、私は本当のリムスキー=コルサコフが始まると思っているのです。
アンタール
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%AB
「アンタール」とは、6世紀に実在した詩人の名前です。その詩人が夢で実現を約束された3つの夢を見るというものです。標題音楽の色合いが濃い作品であり、しかもテクストは殆ど「シェエラザード」と同じという作品です。
第1楽章などは、殆どシェエラザードと同じ構造をもちます。アンタールの主題がまず提示されて、その後女王のテーマが呈示されて、それは話しかけるという意味を持つ・・・・・この作品を初めて聴いた人は殆どみな、「シェエラザードだ!」と口をそろえて言いますから不思議です(笑)
というのも、この作品、某SNSのイベントで取り上げられたことがあり、そこに私も参加しておりました。そう、この全集を借りようと思ったのは実はそのイベントがきっかけなのです。そのイベントで私自身も同じように発言したのを思いだしますし、多くの人が私と同様の発言をしていたからこそ、「シェエラザードだ」と口をそろえますと言うのです。
で、私がこの作品をどうとらえているかと言いますと、シェエラザードの元になった作品である、ということです。なぜか?
まず、シェエラザードがどんな作品なのか、見てみましょう。
シェヘラザード (リムスキー=コルサコフ)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%83%98%E3%83%A9%E3%82%B6%E3%83%BC%E3%83%89_%28%E3%83%AA%E3%83%A0%E3%82%B9%E3%82%AD%E3%83%BC%EF%BC%9D%E3%82%B3%E3%83%AB%E3%82%B5%E3%82%B3%E3%83%95%29
殆どアンタールと同じであることに驚かれるでしょう。楽章数も同じですし、中東を扱っている点でも同じです。シェエラザードも交響曲とする計画であったという点でも共通します(アンタールはそもそも第2番として作曲されたのですから!)。
となると、なぜここまで似たのかということを、私のこのブログでは分析する必要があるでしょう。つまり、偶数の作品は交響組曲的にしたかった・・・・・という推測です。
実はこの様式、20世紀の交響曲にはよくある様式です。それが特に顕著なのが、前回まで特集していたショスタコーヴィチです。となると、リムスキー=コルサコフは新しい交響曲の様式を模索していた・・・・・と言えば言い過ぎになってしまうかもしれませんが、シェエラザードの存在は、このアンタールにおいてそのような意識を持っていたと考えてもおかしくないほど、新たなものに満ちています。
いや、すでに交響詩があるでしょ?と言われる方もいらっしゃるかと思います。勿論です。しかし、それを循環形式のように使い、さらには発展させたりするこの作品の様式を考える時、単に交響詩が4つ並んだとは言いがたいと思います。やはり交響曲を意識して作曲していると言えるでしょう。
スヴェトラーノフは、所謂変態演奏という人ではないんですが、しかしダイナミックな部分はオケに全開で演奏させており、テンポも適度の速さを持っています。ですからきいていて飽きることなく、緊張感の中に常に驚きと喜びが交錯し、楽しさに満ちあふれています。リムスキー=コルサコフという作曲家にリスペクトしているその表現は、私達にこの作曲家がそもそもはシンフォニストを初め目指していたのだということを、明確に教えてくれています。
聴いている音源
ニコライ・リムスキー=コルサコフ作曲
交響曲第1番ホ短調作品1
交響曲第2番(交響組曲)嬰ヘ短調作品9「アンタール」(1876年版)
エフゲニー・スヴェトラーノフ指揮
ロシア国立交響楽団
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