今月のお買いもの、今回はグラズノフの交響曲を取り上げます。ナクソスから出ているシリーズから、第2番と第7番が収録されているものを購入しました。ディスクユニオン新宿クラシック館での購入です。
グラズノフという作曲家は、名前は聴いたことがあるんだけど・・・・・という方も多いと思います。実際、私も音楽史の中では習っても、その音楽は聴いたことがないという作曲家でした。
ところがこの人、音楽史上ではとても重要な役割を担った人でした。実際、以下のウィキの項目は充実しています。
アレクサンドル・グラズノフ
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%89%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%82%BA%E3%83%8E%E3%83%95
弟子にプロコフィエフ、ショスタコーヴィチがいるというのが注目です。多分、グラズノフが居なければ二人とも世に出ることはなかったのではないかと、個人的には考えています。
また、ユダヤ人演奏家の数々も、彼が居なければその命すら危うかったかもしれません。簡単に言えば、ロシア革命後20世紀のクラシック音楽シーンは、グラズノフがいなかったら成立しえなかったといっても過言ではないのです。
ところが、それだけの人なのですが、音楽の特徴は折衷主義であるがゆえに、特にショスタコが登場した後からはあまり評価されなくなってしまったため、いわば埋もれた作曲家扱いになってしまったのは否めません。最近になってようやく再評価が進んできた作曲家です。
確かに、このCDに収録されている第2番にしても、第7番にしても、国民楽派ともいえないですし、後期ロマン派とも言えません。しかし、旋律線のはっきりとした音楽が存在することだけは確かです。そしてそれは決して、存在感が薄いなんてものではなく、むしろ強烈な存在感を私達に放っています。
第2番は1886年に作曲された作品で、実は初演はパリの万博で行われました。ウィキではその点が薄いのですが・・・・一応、URLを掲載しておきます。
交響曲第2番 (グラズノフ)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC2%E7%95%AA_(%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%82%BA%E3%83%8E%E3%83%95)
第1番の成功の後、グラズノフはペリャーエフの援助の下海外旅行などを経て、第2番を作曲します。初演がパリであったというのも、当時のグラズノフの人気ぶりを象徴します。特にリストに認められたのが大きく、この第2番もそのリストへの尊敬の念が込められているといわれています。
第7番はもっと後の円熟期に書かれた作品で、ベートーヴェンを意識しているといわれてはいますが、所謂ベト6よりは絵画的だといえます。ベト6の場合は風景の中にいる人の感情までもが表現されていますが、このグラズノフの「田園」ではそこまでは追及されておらず、風景を一枚の絵として扱い、それを音楽で表現したものになっています。
交響曲第7番 (グラズノフ)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BA%A4%E9%9F%BF%E6%9B%B2%E7%AC%AC7%E7%95%AA_(%E3%82%B0%E3%83%A9%E3%82%BA%E3%83%8E%E3%83%95)
第7番は実はもう20世紀の作品ですが、マーラーが完全に20世紀音楽にならなかったのと同じように、グラズノフもまた、完全には20世紀音楽にはなっていません。しかも音楽的にはマーラーより多少古風な音楽が鳴っているわけで、かつ当時はドヴォルザークの存命の時代で、そんな背景の中で彼の音楽は埋もれていく運命にあったといっていいでしょう。それでも、決して音楽をあきらめなかったのは立派だといえるのではないでしょうか(私はそこに「侍」をみます!)。
でも、今聴いてみますと、なんと心休まる音楽がそこに存在するのでしょう!グラズノフの音楽は当時のロシアの二つの音楽勢力から一歩引いていたため、現在では何とも不思議なほっとする音楽に私には聴こえます。「音を楽しむ」と漢字で書く日本において、グラズノフの音楽は決して存在感薄いものではなく、むしろ私は受け入れやすいものであるとさえ思います。
実際、グラズノフの交響曲の全体的特徴は、民謡の多用にあるのです。これはじつは19世紀から20世紀にかけてのヨーロッパの流行でしたし、けっして当時の流行から言えば時代遅れの音楽などではなかったんです。それを私達日本人が再発見し、世界に問うていくことも、非常に大事なのではないのかなあと思います。
演奏はアニシモフ指揮モスクワ交響楽団。ロケーションが映画音楽用のスタジオであるせいなのか、とても残響がよくふくよかな音がそこに存在します。全体的に軽めなのですが、しかし軽薄ではないですし、端正な中にもダイナミックさもあり、真摯な姿勢は好印象です。なかなか奇をてらわずに心を鷲掴みにするというのは難しいのですが、この演奏はそれに成功しているように思います。グラズノフの音楽の魅力を淡々と演奏で語る、名演であると思います。
聴いているCD
アレクサンドル・グラズノフ作曲
交響曲第2番嬰ヘ短調作品16
交響曲第7番ヘ長調作品77「田園」
アレクサンドル・アニシモフ指揮
モスクワ交響楽団
(Naxos 8.553769)
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