かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

コンサート雑感:テレマン室内オーケストラ横浜公演を聴いて

今回は久しぶりにコンサート雑感をお届けします。聴きに行きましたのは、横浜みなとみらいホール小ホールで行われました、テレマン室内オーケストラの横浜公演です。

はい、読者の方からおすすめいただきまして、行ってきました!無事休暇が取れて良かったです・・・・・

私としましては、何年かぶりのプロオケで、値段もひっさしぶりの4000円。いやあ、清水の舞台から飛び降りる気持ちで買いましたよ(って、うそうそ)。しかし、その4000円は決して無駄にはならない、素晴らしい演奏でした。

オール・モーツァルト・プログラムで、演目は以下の通りです。

1.ディヴェルティメントヘ長調K.138
2.クラヴィーア協奏曲第14番変ホ長調K.419
3.交響曲第40番ト短調K.550

このほかに、アンコールが2曲入りました。

横浜みなとみらいホール小ホールは、本来室内楽向きのホールです。客席のキャパシティもさることながら、舞台がそもそもそれほど広くはないからです。そこで、室内管弦楽団が演奏するという試み、それがさらに大阪のテレマン室内であるということを鑑みれば、いても立ってもいられないものでした。

実は、このホールは私が以前入っていた合唱団が第5回定期演奏会で使ったホールです。その時はすでに私は退団して他の団へ移っていましたが、定期演奏会には足を運んでいます。その時も実は、室内オケを使っているのです。

ですから、小ホールをオーケストラがつかうというのはアマチュア合唱団においては実は特段珍しいことではないのです。ですから、その編成はどういったものなのだろうという興味があったのです。

その団体(宮前フィルハーモニー合唱団「飛翔」)は、貧乏合唱団であったため室内オケもさらに編成がとてもコンパクトな、たとえばヴァイオリンが第1、第2を含めても4、5名は当り前、それに管楽器がせいぜい2人くらいという、本当に見かけは貧弱なオケでしたが、しかしほんとに実力がある人が演奏すれば、合唱団員の人数からすればちょうどいいのです。

そういった経験をしていたので、実は当日のオケの人数を見て「これなら、大丈夫」と演奏前からわくわくしていました。最後の第40番での最大編成は、18人。「飛翔」がつかったオケよりももっと多いです(たぶん人数は倍)〜^^

え、でも演奏貧弱なんじゃないの?という、ア・ナ・タ。ソリストもできる人たちをなめてはいけません。これが素晴らしいアンサンブル!

プログラムにはプロの評論家が説明を書いてくれていますので、ちょっと緊張しますが!私はわたしなりに・・・・・

まず、ディベルティメント。弦だけなので、人数は11人。ええ、ホールの大きさを考えればちょうどいいどころか、それでも大きすぎるくらいです。全く小さなアンサンブルという感覚がありません。それもそのはず。曲の間に指揮者の延原氏の説明が入るのですが、その時の楽器紹介で演奏された方がさらりと演奏されたのがほとんどモーツァルトの協奏曲の、ソロ部分だったのですから。

つまり、ソリスト集団であるわけなのです。その点も、単に時代楽器をそろえているのではなく、演奏スタイルがそもそもバロック〜古典派を踏まえている団体である、ということなのです。

テレマン室内オーケストラ
http://www.cafe-telemann.com/artists/orchestra.html

このオケ、実は世界の古楽シーンに多大な影響を与えていまして、プログラムの説明には、ガーディナーやホグウッド等が参考にするために録音を持ち帰ったという逸話が紹介されている程です。当然ですが、BCJもその一つに数えられるでしょう。ものすごい団体なのです!(実は、そういったことも私が聴きに行った理由の一つでもあります)

以前も、BCJの説明や、或いはガーディナーの録音の問題でバランスと当時のソリストの力量と編成について語ったことがあるかと思いますが、それは当然、延原氏がこのオケで意図しようとしていることを私も念頭に入れているということなのです。

さて、そのガーディナーの問題で以前、私はこう語っています。

神奈川県立図書館所蔵CD:モーツァルト クラヴィーア協奏曲全集4
http://yaplog.jp/yk6974/archive/391

「いつかはコンサートに行き、自分の耳で確めなければ、と思っています。」

このコメントをしたエントリの第1曲目こそ、今回の第2曲目の第14番だったというのは、偶然なのでしょうか。勿論、このエントリが念頭にあったからこそ、聴きに行ったのです。その第14番。全くバランスが崩れず、最初のピアノは埋もれ気味でしたが、音はしっかりと浮き上がっています。さらに全くバランスが崩れず、オケに負けていません。特に、pは聞こえなくなりそうということはありませんでした。

さすが延原氏です。そのバランス感覚たるや、素晴らしい!サインをいただいておいて(しかもCDを購入せず)、これを直接伝えなかったことをどうかお許しくださいませ。オケが17人で、クラヴィーア含めて18人。これで当時大変裕福な貴族のオケと説明されましたが、まさしく私の合唱団経験から言いましても同感です。そんな程度でも十分すぎるくらいですし、実際この人数でもフォルテに於いてはオケの音が飛び出ていたくらいでした。

ここでピアニストのアンコール。モーツァルトのロンドは素晴らしい演奏でした。��田氏の今後の飛躍を祈念いたします。すでに日本は海外の古楽団体の演奏を頼らなくても国内で素晴らしい人材がごろごろいることをこの演奏だけでも思い知らされているというのに・・・・・

休憩明けの第40番は、もっと素晴らしかったのです。まず、テンポ。以前ご紹介したサヴァリッシュ/チェコ・フィル以上にはやかったのです。

マイ・コレクション:モーツァルト 交響曲第40番・第41番「ジュピター」
http://yaplog.jp/yk6974/archive/347

この時、私は漫画「沈黙の艦隊」を引き合いに出して、こう述べています。

「テンポが速く、激しさすらあります。後年、モーツァルトが書く短調には彼の気持ち、精神状態が多分に反映されているということを知ったとき、この演奏のすばらしさを実感することになりました。と同時に、海江田艦長が仰っていた言葉の意味の一端がわかったような気になりました。

40番には二つの側面があると思います。ひとつはあふれるばかりのロマンティシズム。そしてもうひとつは激しさとドグマ。どちらに立脚して音楽を作り上げるかは、指揮者次第です。これこそ、ひとつの音楽をひとつの演奏だけで考えてはいけないということを私に教えてくれた教材となりました。」

今回、延原氏が選んだのは、このチェコ・フィル同様のスタイルでした。その上で、第3楽章ではチェコ・フィルよりも速いテンポで演奏させていました。確かに、テンポ指示はアレグレット。とても速いメヌエットが私たちにつたえたいものとは、いったい何なのだろう・・・・・考えますと楽しいですし、キリがありません、帰りの電車の中ですら、それを考えますと止まりませんでした。

さて、全体的な演奏面に参りましょう。古典派における約束事、つまりはリフレインは弱くですとか、低い音は弱く高い音は強くをほぼ基本通りに演奏されていたことはとても感動しました。一部それが異なる点がありましたが、恐らくそこは延原氏がわざとそうしたのであろうと思います。そこがコメントでおっしゃられていた「私たちは楽しむ」ということなのだろうと思います。所謂名演という意味の「変態演奏」が今後どんどん出る予感がしますし、いや、第40番は十分変態演奏であったと思います。終わりそうで終わらなかった主題再現部の最後でそれが現出されていましたし、そんな演奏に立ち会えたことはとても幸せな瞬間だったと思います。

また、曲の間に指揮者自らマイクを握り、説明をするというスタイルも楽しかったです。大阪人らいいジョークや言葉遣い、そして人間関係で聴衆を楽しませてくれました。その上で、楽器の発展やそれが作品に与えた影響とその歴史のわかりやすい説明も素晴らしかったですし、まさしく私の意見をすべて代弁してくださった!と喝采です。横浜でもっと演奏してほしい!と思ったくらいです。

ただ、惜しむらくは、pやppはもっと思い切って弱くしてもよかったかなと思います。人数が少ないので少し強めにしたのかもしれませんが、フランチャイズいずみホールに比べ、狭いホールでしたので、思い切って弱くしても充分だったと思います。恐らく、それをオケは感じ取ったのでしょう、第40番の第4楽章後半ではそれが徹底されていまして、よかったです!

出来れば、大阪まで行って聴きたいくらいの濃い演奏。これで4000円は安いくらいだったと思います。LCC元年ですし、今年の年末は思い切って「100人(某放送局の1000人じゃないですよ!)の第九」、聴きに行きましょうかね〜

・・・・・いや、それは仕事上恐らく無理かと。

しかし、機会を見つけて是非とも大阪まで馳せ参じて、聴きに行きたいくらいの団体です。また一つ、好きな国内オケができました。



聴きに行ったコンサート
横浜芸術アクション事業 2012室内楽シリーズみなとみらい的�U
ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト作曲
ディヴェルティメントヘ長調K.138
クラヴィーア協奏曲第14番変ホ長調K.419
交響曲第40番ト短調K.550
アンコール
ロンド
ディベルティメントニ長調K.334より第3楽章「ロンド」
��田泰治(フォルテピアノ
延原武春指揮
テレマン室内オーケストラ

平成24(2012)年7月21日、神奈川県横浜市西区横浜みなとみらいホール小ホール



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