かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:グルダのベートーヴェンピアノソナタ全集7

今日は諸般の事情により、エントリを二つ立てます。

神奈川県立図書館所蔵CDのグルダベートーヴェンピアノソナタ全集のシリーズ、今回は第7集を取り上げます。収録曲は第23番から第27番までになります。

この5曲はベートーヴェンの作品時期区分では中期であり、その最後を飾る作品群ですが、ここでグルダは丁寧な演奏に立ち返っています。勢いで弾いても雑な点がなく、一音一音がきちんと聴き取れる、素晴らしい演奏を披露しています。

となると、ここまでの演奏を俯瞰しますと、やはりグルダベートーヴェンピアノソナタの変遷、あるいは発展過程を踏まえて演奏しているなと私は判断しています。その中にはイレギュラーであるソナチネの第19番と第20番があり、そのあたりでグルダはやはりこれを順番にしてしまったのは・・・・・という想いがあるということが見て取れます。

勿論、それはベートーヴェンもそうだったのではという解釈であろうと思いますが、それだけではなくそれはグルダの想いでもあるということが、第21番における演奏の「乱れ」に感じるわけです。

この第7集の演奏を聴けば聞く程、そのグルダの気持ちがこちらに伝わってきます。果たして、それをどれだけ私たちはきちんと受け取っているのだろうかと、いろんなレビューを見ますと思います。

確かに演奏は素晴らしいものです。しかし、グルダがいい加減に弾いている部分はいったいどうとらえるのかが明快でない評論が多いような気がします。もう老年なんだよ、いや、ベートーヴェンが嫌いなのさ・・・・・

本当に?

この録音は、借りてきた当時のCDには記載がなかったのでわからずじまいですが、恐らくウィキで記載のある60年代の演奏です。となると、グルダの若かりし時代の演奏です。年を取って指が回らない、あるいはもう弾くだけの体力がないなんてことはあり得ません。同時にベートーヴェンが嫌いということも当てはまりません。特にこの第7集の第23番「熱情」は、第1楽章のとても速いパッセージは一音一音がきちんと聞き取れるのです!

むしろ、モーツァルトだといい加減に弾くことも有ったと言われるグルダが、ベートーヴェンを尊敬していると様々なところで言われるのに尊敬していないなんてことはあり得ません。

以上の理由から、いい加減に弾いているのには、曲に対するグルダの想いが出ているだけであると言えるわけです。ただ、その時にも危険な判断は、「この曲つまらん!だからいい加減に弾いてやれ!」としてしまうことです。果たしてそうなのでしょうか?其れへの反証が、まず第1曲目の「熱情」にしっかりとあらわされています。

第21番がいい加減であったのは、何度も言いますが気持ちがそこに込められていたからだと考えます。つまり、本来は第4番、第5番とならねばならない第20番と第19番を第18番と第21番の間に弾かねばならない自分と、そしてそうなった時のベートーヴェンの気持ちは如何ばかりであったろうという、グルダの解釈と気持ちであるということなのです。その証拠に、同じように早いパッセージであり、第21番よりさらに発展したはずの「熱情」では、いい加減さはみじんもないという、この差をどう考えればいいのでしょう?

これで、曲がつまらないという理由は当てはまらないことがよくわかります。グルダが受け取ってほしいメッセージは「ベートーヴェンピアノソナタを杓子定規に番号順で弾く、そして聴くことの浅はかさ」なのではないかと私は思います。

もし順番であるならば、山根弥生子さんのように作曲順であるという、グルダの意思表示とも言えるかと思います。だからこそ、私はいまだに携帯には山根弥生子さんのを入れています。グルダは元音源に多生の音飛びがあるということも理由の一つですが、それよりも、グルダに「日本にはいい解釈をしているピアニストがいるでしょ?」と突きつけられたような気がするからでもあるのです。



聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
ピアノソナタ第23番へ短調作品57「熱情」
ピアノソナタ第24番ヘ長調作品78「テレーゼ」
ピアノソナタ第25番ト長調作品79
ピアノソナタ第26番変ホ長調作品81a「告別」
ピアノソナタ第27番ホ短調作品90
フリードリッヒ・グルダ(ピアノ)



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