かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

神奈川県立図書館所蔵CD:シューリヒトとコンセルヴァトワールの第九

今回の神奈川県立図書館ライブラリは、またまた「第九」です。シューリヒト指揮、パリ音楽院管弦楽団他です。

コンセルヴァトワールの第九なのです!

パリ音楽院管弦楽団
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%AA%E9%9F%B3%E6%A5%BD%E9%99%A2%E7%AE%A1%E5%BC%A6%E6%A5%BD%E5%9B%A3

なぜ借りたのかと言えば、その理由は二つあります。まず、演奏がパリ音楽院、つまりコンセルヴァトワールのオケだということです。二つ目は、それをドイツ人であるシューリヒトが振っているという点。つまり、「ドイツ人がフランスのオケでドイツものを振っている」という点なのです。

昔からこんなことが言われています。フランスのオケはドイツものを得意とし、ドイツのオケはフランスを含めたラテン系の音楽を得意とする、と。しかし、そういった演奏を私はこれを借りた時にはあまり聴かずに来ていました。

そこで、実際はどうなのか聴いてみようと思い立ち、借りたのがこの一枚でした。

この音源を借りたほぼ2年前、私は第九の古い演奏を中心に借りてみようと集中的に借りています。先日のクレンペラーもそうです。クララ・シューマンの他はすべて第九だったと思います。この音源はその一枚でした。

まず、シューリヒトという指揮者について説明しましょう。1880年に生まれ1967年に亡くなったドイツ人の指揮者です。キャリアはまさしくドイツそのものという人が、この音源ではコンセルヴァトワールを指揮している、というわけなのです。

カール・シューリヒト
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%83%92%E3%83%88

ウィーン・フィルベルリン・フィルライプツィヒドレスデン・・・・・ため息が出るようなドイツ本流のオーケストラでキャリアを積んでいます。しかし、図書館にはこのコンセルヴァトワールのものがあったというわけです。スイス・ロマンドとの共演が縁なのだと思います。

それにしても、彼の指揮でコンセルヴァトワールはしなやかかつ力強い演奏をしています。アインザッツは強烈で、美しい中に重厚な音楽を聞かせてくれます。

第1楽章の中間部や、第2楽章出だしなどがその最たるものでしょうし、また第4楽章でもそれは随所に炸裂します。フランスのオケだからアンサンブルなんて、とおっしゃる方はこの音源をお聴きになられたら腰を抜かすでしょう。そのアンサンブルの素晴らしさを。それはさすが、ウィキのこのエピソードがあるくらいだなあと思います。

「シューリヒトはかなり高齢になってから世界的名声を得た人であり、特に晩年はリューマチの悪化により杖をつきながらかなり長い時間をかけて指揮台に登場するのであった。しかしひとたび指揮台に上がると、年齢を全く感じさせない輝かしい生命力が彼の指揮姿からもその音楽からも湧き出て、聴く者に(そしてオーケストラの楽員にも)大きな感銘を与えたのである。能力のない指揮者に対しては口が悪いウィーン・フィルの楽団員に対しても、毅然とした態度で臨んだ。たとえば、1955年3月の初めての顔合わせのとき、だらけたウイーンフィルの演奏態度に腹を立てたシューリヒトは、ブルックナーの第9番を熱血あふれる指揮ぶりでひっぱり、見事にオーケストラを立ち直らせた。こうしたことがあって口さがないウイーンフィルの楽団員もシューリヒトには一目置いて、「偉大な老紳士」と称して特別に敬愛していたという。」

まさしくそのままの演奏を、この第九で現出させています。特に、第4楽章合唱が入るあたりからはあきらかに高揚感があります。そもそも第九が作曲されるきっかけには多分にフランス革命が影響を与えていますが、その本家ともいうべきフランスのオケが「情熱と冷静の間」の絶妙なバランスを取りつつも熱狂して突入していくのが手に取るようにわかります。

特に、vor Gott!の部分は前のめりになっていくのが分かります。しかし、ここでシューリヒトは絶妙の指揮をしています。Gott!の全音符のフェルマータは六拍伸ばすのが正しいわけですが、それを実はきちんとやっています。一見しますとやっていないように聴こえますが、vorの二分音符を一拍として振りますと、きちんと六拍伸ばしているのです!

これは絶妙ですね〜。しかし、合唱団としては振りなおしてもらわないとなかなか合わない部分なんですが、しかし合唱団はしっかりとアンサンブルして完璧な演奏を聞かせてくれます。

さすがシューリヒト・・・・・これには、今でもですが借りた当初も息を飲みました。

考えてみますと、パリ音楽院管(現在はパリ管弦楽団へ改組)はフランスにおけるベートーヴェン受容の歴史を作ってきたオーケストラでもあります。そういった歴史も、この演奏にはあるのだと思います。いろんな縁がここでまさしく「同朋」の如く混然一体となり、音楽という芸術へと昇華していった結果のように私には思え、何度聴きましても興奮してしまいます。

第四楽章冒頭の激しい演奏。思いっきり「ひっぱたいて」くれているのに上品さを失わないティンパニ。それを合図にするかのように突進するオケとソリスト、合唱団。

何もかも、素晴らしいです!



聴いている音源
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
交響曲第9番ニ短調作品125「合唱」
ウィルマ・リップ(ソプラノ)
マルガ・ヘフゲン(アルト)
マーレイ・ディッキー(テノール
ゴットロープ・フリック(バス)
エリザベート・ブラッスール合唱団
カール・シューリヒト指揮
パリ音楽院管弦楽団



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