今日のマイ・コレは、チャイコフスキーの幻想曲集です。その題材としてシェイクスピアをとりあげたものを特集しています。
実はこれ、ナクソスです。私にとって初のナクソスとなりました。ナクソスの出たての時代に当たり、クラシックも1000円(当時)で売る時代なのか〜と思いました。私が高校生時に買った自衛隊演奏のマーチが3000円・・・・・隔世の感でしたね。
しかし、1000円という値段にネガティヴな面を感じていたのも確かです。これ、信用置けるんかいな?と。しかし、それを払しょくしてくれたのが、実は昨日ご紹介しました輸入盤だったというわけです。同じ指揮者とオケが、ナクソスで別のアルバムで演奏していましたから。
ちょうど日本は「失われた10年」が本格化していた時期です。その上で、私自身も合唱でいろんな活動をするようになり、給料が減らされていくのに物入りという状態。となると、何かを削らなければいけないわけで、そこで目を付けたのが、廉価盤だったのです。
ただ、それまでも廉価盤は買っていましたし、それには日本語解説がついていました。ところが、ナクソスはパッケージは日本語ですが、中のブックレットは英語のみなんですね。その点も購入を逡巡させていた理由の一つでしたが、とにかく「食わず嫌いでは始まらない」と思いまして、買ってみたのがこれでした。
1曲目の「ロメオとジュリエット」はロイヤル・フィルですから文句のつけようがありません。アンサンブルも秀逸ですし、表現力もあります。ただ、2曲目のテンペストになりますと、やはり廉価盤で使われるオケらしい、ちょっとした乱れというものが見受けられます。しかしそれも別に気になるほどではありません。実際、チャイコフスキーの「シェイクスピア幻想曲」というような形でパッケージしてくれるようなものは国内盤では見ることが出来ませんから。
チャイコフスキーが好んだ文学者が実はシェイクスピアでした。そういった点から解説してくれるものはあまりありません。しかし、文学とクラシックはとても関係が深く、ベートーヴェンが一時期ゲーテと親しかったのは有名ですし、そのベートーヴェンがシラーの「歓喜に寄す」に作曲したのが、ほかならぬ交響曲第9番であるわけです。
このとりあげられている3曲とも「幻想序曲」と言われていますが、ナクソスのパッケージではテンペストだけ「交響的幻想曲」とされています。いずれにしても形式としては「演奏会序曲」であり、一つのグループにまとめてしまっていいと思います。
「ロミオとジュリエット」はもちろん悲恋の物語として有名なものですが、音楽としてはこのチャイコフスキーよりはもしかするとプロコフィエフのほうが今では有名になってしまっているかもしれません(「のだめ」で)が、私としては断然このチャイコフスキーです。なんといってもその劇的な展開は途中息をつかせません。時間的には20分程度ありますが、まるで歌謡曲が流れているかのようにあっという間に終わってしまいます。
「テンペスト」は実はこの3つの中では一番好きな曲です。物語の内容は以下を参照してください。
テンペスト (シェイクスピア)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%B3%E3%83%9A%E3%82%B9%E3%83%88_(%E3%82%B7%E3%82%A7%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%82%B9%E3%83%94%E3%82%A2)
単に情景を描いたというわけではなく、幻想曲らしく、原作を音楽で表現しようとしています。これもあっという間に終わってしまう感覚を受けてしまうほど、内容がドラスティックで聴く者の心を捉えて離しません。最初、まさしく霧の中ような幻想的な雰囲気で始まり、それがだんだんドラマティックになっていき、いよいよドラマが展開されてゆきます。そして最後は静かに終わります。
最後の「ハムレット」も同様にドラスティックです。こう3曲を聴き比べますと、一つの法則があります。それは、短調であり、最初静かに始まり、途中ドラマティックになって紆余曲折を表現し、最後静かに終わる(ロメオとジュリエットだけ例外)というものです。それがこの3曲では徹底されています。まるで交響詩のようです。そういってもいいのかもしれませんが・・・・・あくまでも、形式としては演奏会用序曲の範疇に収まっています。
チャイコフスキーは「ロシア的ではない」と当時批判を受けていますが、確かにこれらの曲を聴きますとそんな気もしないわけではありません。しかし、だからこそ、彼は当時のロシアの作曲家のうち、ヨーロッパで広く演奏された作曲家でもあり、それがロシアの名声を高めたということは、現代の私たち日本人にも、何かを訴えかけているように思うのです。
聴いているCD
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー作曲
幻想的序曲「ロメオとジュリエット」
交響的幻想曲「テンペスト」作品18
幻想的序曲「ハムレット」作品67a
エイドリアン・リーパー指揮
ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(「ロメオとジュリエット」)
アントニ・ヴィト指揮
ポーランド国立放送カトヴィツェ交響楽団(テンペスト」、「ハムレット」)
(Naxos 8.553017)
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