かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

今月のお買い物:ベートーヴェン 弦楽三重奏曲集 第1集

毎週土曜日にランダムに来る「今月のお買い物」コーナー、今回だけは木曜日に登場です。今回はベートーヴェンの弦楽三重奏曲です。

正確には、これは今月のお買い物ではありません。先月のお買い物です。原稿作成の関係上、先月分が今月にかかりました。ご容赦くださいませ。

これは偶然出会いました。いつものようにBCJを選び、集めると決めたピアノ・トリオも買って、まだ予算は1000円ほど残っている。さて、何を買おうかな、何もなければ、今月はもうこれでいいかなと思っていましたら、ふとナクソスの棚にこれを見つけました。

これですから、ナクソスはやめられないですね〜

実は、このCDは一度神奈川県立図書館で借りているのです。ただ、そのときは盤面状態が良くなくリッピングはおろか、まともに聴けなかった一枚だったのです。ナクソスであるのはわかっていましたから、実はことあるごとに探していた一枚でした。

予約して取り寄せれば済む話ではありますが、ただ当時いろんな曲に食指が動いていた状態でしかもそれほどお金はない。ですから、優先順位を泣く泣く下げた一枚なのです。

もしかすると本来「神奈川県立図書館所蔵CD」のコーナーでご紹介していたかもしれない一枚です。それが、こんなタイミングで出会うとは!しかも、ほんとに何気なく、それも掘り出し物がないかなあとだめもとでみていたナクソスの棚で、です。

これはもう、運命だと思いました。即決で購入を決定しました。ちょうどその日は同じナクソス音源のクララ・シューマンを県立図書館で借り直すことができた日。運命をとても感じる一日になりました。

ベートーヴェンの本当に初期の作品である弦楽三重奏曲です。弦四に比べますと明るく、サロン的な部分が多い内容ですが、作品3はこんなことが帯に書かれていました。

「作品3はモーツァルトの同編成のディベルティメントK563と同じ調性、楽器数となっていて」

え、ディベルティメント?これ、弦楽三重奏曲でしょ?

と思って「モーツァルト事典」を参照してみますと、実はK.563はディベルティメントとなっていますが新モーツァルト全集では弦楽三重奏曲に分類されているんですね。確かに、事典でも編成を見ると弦楽三重奏曲です。

また、楽章数が6楽章と同じであるだけでなく、その構成もアンダンテとアダージョが入れ替わっただけという、確かにベートーヴェンモーツァルトの弦楽三重奏曲を参考にしたのはほぼ間違いないだろうとおもいます。どのような形で、どのような機会でかまではわかりませんが、いわゆるベートーヴェンの個性でもある高貴さは影を潜めています。

ただ、ところどころアインザッツが強い部分が要求される点は、すでに弦四の萌芽が見え隠れしています。

弦楽三重奏曲という形式自体、私もあまり知らないですから、驚きの連続です。しかし、それでも曲自体はとてもゆったりとしていて、今書いていても少し眠くなるくらい・・・・・いや、つまらないのではなく、気持ちいいのです。これは、ベートーヴェンの作品では非常に珍しいかと思います。ただ、それは最終的には第九の第3楽章へとつながってゆくのかななんて思ったりもしました。

カップリングのセレナードニ長調もゆったりとした曲。こんなに落ち着いた曲をベートーヴェンは書いていたか!と目からうろこが取れるとはこのことです。こんなにゆったりとした落ち着いた曲が、私にとってはもう驚きの連続なのです。

musuker氏の言葉「室内楽にこそ、本当のベートーヴェンが見える」というのをいまさらながら感じています。そう、私は彼のその言葉をいまかみ締めているからこそ、ベートーヴェン室内楽を聴きまくっているのです。

勿論、ベートーヴェン管弦楽曲をすべて聴いたわけではまだありません。しかし作品番号における管弦楽曲はほとんど聴いています。ところが、作品番号の実は多くを占める室内楽や器楽曲はまだほとんどが手付かずです。それらの魅力に弦四とピアノ・ソナタで気づいてしまってから、もう私の室内楽への傾倒は止まることがありません。

このディスクも、その知識欲を満たすのには充分すぎるほどですが、ただそれゆえ逆に不満もでてきまして、これならばナクソスではなく国内盤を買うべきだったと今は後悔しています。実はベートーヴェンの弦楽三重奏曲はさすがのウィキペディアでも解説ページがなく、さらにはそれ以外にも解説があるHPが全くないという状態なのです。

つまり、ナクソスを買ってきたということは、「ベートーヴェン事典」が必要であるということをこのジャンルでは示しているわけです。ある意味、日本における室内楽の地位を考えさせられる一枚です。

私たち日本人の、クラシックに対する姿勢も問われているような一枚なのではないか、そんな気もする一枚です。



聴いているCD
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
弦楽三重奏曲変ホ長調作品3
セレナード ニ長調作品8
アティラ・ファルヴォイ(ヴァイオリン)
ヤーノシュ・フェへールヴァーリ(ヴィオラ
ジョルジ・エーデル(チェロ)
(ナクソス 8.557895)