かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

マイ・コレクション:R.シュトラウス 交響詩「ツァラトゥストラかく語りき」作品30

今回の「マイ・コレクション」は、リヒャルト・シュトラウス交響詩ツァラトゥストラかく語りき」です。朝比奈隆指揮、大阪フィルハーモニー交響楽団です。

この時期、私は菊池桃子に夢中になりながらクラシックでは後期ロマン派への世界へと興味が向き始めていました。そんなときに出会ったのが、リヒャルト・シュトラウスです。

ちょうど、リヒャルト・シュトラウスの幻の作品、皇紀2600年祝典序曲の楽譜が見つかったという番組を見まして、その楽曲にまつわるリヒャルトの家族を守ろうとする姿勢に感動を受けました。そんな中で、リヒャルトの作品が聴きたいと思って買い求めたのがこのCDです。

高校時代、私は私鉄と発足後のJRを乗り継いで高校へ通っていました。その乗り換え駅に細いスペースのレコード店がありまして、そこで買い求めました。まだ当時は都心へ出てCDを買うなど夢のまた夢。渋谷までは30分ほどの場所ですが、いくら近いといっても先立つものはお金です。お小遣いしかもらえないのにそのための交通費も馬鹿にならない時代。その小さいレコード店で探した一枚です。

ですので、この一枚には思いいれが強いのです。

しかも、このCDは実は大フィルが当時新築されたザ・シンフォニーホールで録音した最初のCDでもありました。ザ・シンフォニーホールが日本で初のコンサート専用の音響のいいホールです。ですから、このCDは日本のオケが始めて日本でコンサート専用ホールで録音したCDでもあるのです。他にも名演といわれる演奏が並んでいたと記憶していますが、それでもこの朝比奈さんのこのCDを選んだ理由はそこにあります。

このCDを最初に聴いたとき、何と美しい響きなのだろうとうっとりしました。勿論、それがツァラトゥストラだったということもありますが、それまで日本のオケのサウンドとしてはやはりNHKホールなどの多目的ホールの響きしか知らなかった私にとりましては、それは衝撃と驚きと、そして羨望が入り混じったなんとも不思議で、かつしあわせな瞬間でした。

演奏としては、朝比奈さんと大フィルですから悪かろう筈はないのですが、ただ残念なのは恐らくこういうすばらしいホールでの演奏が初めてだったということもあるかとは思いますが、最後の弦で静かに終わる部分がきれいでないという点です。もっと本来は透明感のあるきれいな、まるで天上の世界にいるかのような和音で終わるのですが、それがうまく決まっていないのです。

それでも、未だにこの一枚以外買ってはいません。勿論、この曲は哲学的な部分を音楽にしたということもあり私もとても好きな曲なのでもう一枚は持っていたい曲なのですが、それでもこの大フィルの演奏のテンポ感が私にとてもあっているせいもあり、なかなか他の演奏まで手が回らなかった曲でもあります。そのせいで未だに一枚しかこの曲は持っていません。それに、このCDは日本で初のコンサート専用ホールでの演奏の記録ですし、そうそう他の演奏と代わるものではありません。

同じパターンの演奏を私はマーラーの「復活」でもっていますが、以外に当時からそういう記念の演奏を取っておくというのは好きでした。結局それが私をして博物館へと興味を向かわせるきっかけにもなったのですが・・・・・

この演奏をウィンドウズ・メディアプレーヤーで聴いていますが、デッキよりこちらのほうが断然いい音で鳴っているように思います。スピーカは非力なのに・・・・・恐らく、伝送系のせいではないかと思っていますが、うっとりします。ただ、そのプレーヤーには演奏者などのいわゆるCD情報が出てきません。他のプレーヤーで聴いてみませんとなんともいえませんが、つまりはCDDBにデータがないということなので、今はもう廃盤になっている可能性が高いです。

ブルックナーオーソリティとして既に当時確立されていた朝比奈さんの、後期ロマン派へのアプローチの一端を見ることができます。この演奏こそ、いつかは朝比奈さんでブルックナーが聴きたい!と思わせたのですから。そして、このCDに注目させるきっかけを作ったのが、先日ご紹介した朝比奈さんの第九の演奏だったのです。

東京にコンサート専用ホール(サントリー・ホール)ができたのは、この後でした。


聴いているCD
リヒャルト・シュトラウス作曲
交響詩ツァラトゥストラかく語りき」作品30
岡田英治(独奏ヴァイオリン)
久保田清二(オルガン)
朝比奈隆指揮
大阪フィルハーモニー交響楽団
(キングレコードFIREBIRD K38Y1)
※1983年6月20日、大阪、ザ・シンフォニーホールでのライブ録音です。