東京の図書館から、今回は府中市立図書館のライブラリである、マリス・ヤンソンス指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団によるマーラーの交響曲第3番のアルバムを取り上げます。2枚組ですが今回は一つとして取り扱います。
マーラーの交響曲第3番は最も演奏時間の長い曲としても知られている作品で、合唱パートもある作品です。
この録音でも、演奏時間は1時間38分10秒。いやあ、長い・・・マーラーの交響曲が演奏される場合はほとんどカップリングがないということが多く、この第3番は典型だと言えます。これに休憩を含めると2時間なので・・・まあ、ショスタコーヴィチの交響曲を主に演奏するオーケストラ・ダスビダーニャの定期演奏会では2時間30分というコンサート時間になることもありますのでマーラーの第3番でもあり得なくはないですが・・・
ですが、つい最近、NHKの「クラシック音楽館」でもNHK交響楽団がマーラー・フェスティバルに招待された演奏が紹介されましたが、意外とその演奏時間が苦にならずあっと言う間に過ぎていきました。図らずも、この演奏もオーケストラがロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団(かつてのアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団)なので、当然ホールはアムステルダムのコンセルトヘボウ。NHK交響楽団がマーラー・フェスティバルで演奏したホールと同じなのです。その意味では、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団はむしろマーラーの交響曲を演奏し慣れていると言えます。古いクラシックファンであれば、結構ご存じだとは思いますが。
コンセルトヘボウの響きは、あまりぼんやりせずオーケストラの各セクションの音が意外とはっきりと聴こえるのが特徴だと個人的には感じますが、NHK交響楽団と同様、このロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の演奏でも同様でむしろよりくっきりと各セクションの音が聴こえてきます。それはさすがフランチャイズオーケストラだと言えるでしょう。
作品はニーチェの思想とキリスト教とが同居しているのが特徴で、二つは対立するかのように書かれることが多いのですが、個人的にはそれほど対立しているように思いません。むしろこれが19世紀~20世紀初頭のヨーロッパに於ける精神世界だったろうと思います。マーラーは当時、ユダヤ教徒であったがために差別を受けており、この第3番を作曲した当時も同様です。それがゆえにキリスト教に改宗せざるを得なかったわけですが、本来宗教が関係ない時代であればそんな差別はないはずなのです。ですが実際は改宗を余儀なくされているわけで、それは明らかにいまだヨーロッパに宗教が根付いていた時代だと言えるわけです。教会の権威や権力が落ちて世俗権力が握っただけであり、その中でのニーチェの思想であり、その精神性をマーラーが理解していたからこその作品だと言えます。
その意味では、よく言われる「神なき時代の宗教」ではなく、実際には神がいるわけで、その神を絶対視せず相対化して人間の精神を探求したのがニーチェであるとも言えるわけです。その点を、指揮者であるヤンソンスは十分に踏まえているように思います。その当時の精神世界が織りなされている音楽を、明確に示した演奏だと言えます。
それはまた、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団というオーケストラが、マーラーの薫陶を受けた指揮者によりたたき上げれた伝統に基づくがためとも言えます。祖国オーストリアでは迫害を受けたマーラーですが、外国に於いて評価を受けていたわけです。その歴史に立脚している演奏です。
またソリストと合唱団も表現力豊か。コンセルトヘボウの明瞭な響きが、合唱団が歌う歌詞も明瞭にさせており、テクストがわかりやすたがため、あっという間に演奏が過ぎ去っていきます。難解だと思われがちなマーラーの精神世界が、くっきりと浮かび上がり、一つのしっかりとしたテクストがあることを知ると、何と豊かで感慨深い内面なのかと思わざるを得ないのです。その説得力がある演奏になっています。しかも、女声合唱と児童合唱という意味も、演奏が語っているのも素晴らしい!人間の欲望、それがなす「十戒」を犯す行為。その救済のために神に祈るということ・・・明らかに一つにつながっているわけです。世界とは何ぞやと、マーラーが二つの合唱のテクストも借りて語ることを、明確に示した演奏だと言えるでしょう。
聴いている音源
グスタフ・マーラー作曲
交響曲第3番ニ短調(カール・ハインツ・フュッスル校訂版)
ベルナルダ・フィンク(メゾ・ソプラノ)
オランダ放送女声合唱団
ブレダ・サクラメント児童合唱団
ラインモンド児童合唱団
マリス・ヤンソンス指揮
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
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