かんちゃん 音楽のある日常

yaplogから移ってきました。日々音楽を聴いて思うことを書き綴っていきます。音楽評論、想い、商品としての音源、コンサート評、などなど。

東京の図書館から~小金井市立図書館~:ポリーニ、アバドとベルリン・フィルによるブラームスピアノ協奏曲全集1

東京の図書館から、今回と次回の2回に渡り、小金井市立図書館のライブラリである、ポリーニのピアノ、アバド指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏によるブラームスのピアノ協奏曲全集のアルバムをご紹介します。

まず今回の第1回では、1枚目に収録されています、ピアノ協奏曲第1番を取り上げます。激しいオケのユニゾンから始まる印象深い第1番。ソリストもかなり激しい演奏になることも多い作品ですが、この演奏では激しさというよりは情熱の嵐と表現するほうが適切なように思います。

また、この録音の特徴は、ロケーション。ベルリン・フィルであればベルリン・フィルハーモニーだとつい思いがちなのですが、実はウィーン楽友協会大ホール。そう、ウィーン・フィルの本拠地です。しかもライヴ録音。いうなればアウェイなんです。しかし名手ぞろいのベルリン・フィル。まるで本拠地であるかのように演奏し、ハーモニーと響きを作り出してしまうのですから、さすがです。

ポリーニのテクニカルかつ情熱的なピアノは、まるで熱弁です。ブラームスのピアノ協奏曲第1番というとどこかおどろおどろしい印象もあるのですが、いやいややっぱりピアニストブラームスという部分が大きいように思える演奏となっています。

後期ロマン派のピアノ協奏曲の、一つの頂点ともいえるブラームスの二つのピアノ協奏曲。その第1番はブラームス若かりし頃の作品。その若さゆえの、まっすぐな情熱が、ピアノから、そしてオーケストラからも感じられる演奏です。そして、もうそんなまっすぐな情熱だけで生きて行けるだけの年齢ではない私が、どこか憧憬を見ているような心地になってしまう、不思議な演奏です。

キュン!と胸が締め付けられるような感じではないんですが、しかしどこか若いころ感じた甘酸っぱい感じも受けるような演奏・・・・・ポリーニの表現力と、世界最高峰の一つであるベルリン・フィルというオーケストラがなせる業、というべきでしょう。まっすぐに情熱的な演奏、これぞブラームスの作品にふさわしい演奏ではないかという気がします。

 


聴いている音源
ヨハネス・ブラームス作曲
ピアノ協奏曲第1番ニ短調作品15
マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ)
クラウディオ・アバド指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。

今月のお買いもの:ビエロフラーヴェク指揮チェコ・フィルによるドヴォルザーク交響曲と協奏曲全集3

今月のお買いもの、令和4(2022)年5月に購入したものをご紹介しています。12回シリーズで取り上げております、e-onkyoネットストアで購入しましたハイレゾ録音である、イルジー・ビエロフラーヴェク指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏によるドヴォルザーク交響曲と協奏曲全集、今回は第3回目です。

第3回目に取り上げるのは交響曲第2番。作品番号4というかなり若いころの作品ですが、しっかりとした構成をもつこの作品を、堂々とかつ生き生きと演奏しています。どっしりとした感じも受けつつ、筋肉質な演奏は、作品がもつ生命を引き出しているように感じます。

ドヴォルザーク交響曲には、どこかしらに鉄道の香りを感じるのですが、この第2番でも第1楽章や第4楽章に機関車が走っているような描写が見えてきます。ビエロフラーヴェクのタクトは特に鉄道を意識しているわけではないと思いますが、しかし過度に揺らさずテンポを保ちつつも歌うオケからは、自然と機関車の息吹が聴こえてくるんです。

こういう演奏は、鉄道ファンの私としてはとてもうれしいです。コロナによって特に昼間の利用者がへり、鉄道各社による減便ダイヤの改正が相次いでいる昨今、こういう鉄道の息吹が見える演奏はとても幸せな気分になります。また青春18きっぷを使ってドヴォルザーク交響曲を聴きながら旅をしたいなあという気分が湧き上がってきます。

かつて私は、松本まで用事があり、東京からJR中央線普通列車で向かったことがあります。その時に聴いていたのがドヴォルザーク交響曲でした。新幹線ではちょっと早すぎるきらいがありますが、在来線の普通列車に乗っているとちょうどよいテンポだったりするんです。特にこのビエロフラーヴェクとチェコ・フィルの演奏だと鈍行に似合います。

ゆったりするテンポからはともすれば生命力などが失われることもありますが、この演奏ではそんなことがないのが魅力です。楽章ごとの切り替えが適切なんだろうなあと思います。オーケストラがチェコ・フィルだからということもあるのかもしれませんが、よく耳を傾けていれば、一定のテンポの中で、オーケストラの各パートが歌っていることがわかってきます。これこそが、楽譜通りに演奏しているとしても生命力が宿っている理由なのでしょう。

指揮者がいようがいまいがどんな指示があろうが、どれだけオケは歌えるか。それは作品に生命を宿らせる生命線なのではないかと思います。

 


聴いているハイレゾ
アントニン・ドヴォルザーク作曲
交響曲第2番変ロ長調作品4
イルジー・ビエロフラーヴェク指揮
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
(DECCA flac96kHz24bit)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。

東京の図書館から~府中市立図書館~:マゼール指揮ウィーン・フィルによるチャイコフスキー交響曲全集4

東京の図書館から、4回シリーズで取り上げております、府中市立図書館のライブラリである、ロリン・マゼール指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏によるチャイコフスキー交響曲全集、今回はその最後の第4集を取り上げます。

第4集には、第6番と「ロメオとジュリエット」が収録されています。第6番は「悲愴」という標題がついていますが、この演奏からはさほど悲愴感が感じられず、むしろ人生のアイロニーを強く感じます。勿論、最後はさみしく終わるこの曲ですが、マゼールは決して悲しみだけを極端に出すような解釈をせず、むしろウィーン・フィルを存分にただただ歌わせます。

ですので、寂しさは感じますが、悲しさを感じないのです。だからと言ってこの演奏が自分に合わないかと言えばむしろとても共感するもので、さすがプロだなあと思います。

以前から言及していますが、プロの演奏を聴く醍醐味は、ひとえに仮に自分の美意識とぶつかったにせよ、納得させられる演奏が聴けることです。指揮者も人間ですから、楽譜から掬い取るものは違って当然です。ゆえに聴き手の美意識とぶつかることもあるはずなのです。その時に「なるほど!」と腑に落ちる演奏を提示することができるか・・・・・これがプロの仕事だと思います。

もちろんそれはアマチュアでも起こりえることではありますが、プロであれば引き出しをたくさん持っているがゆえに、アマチュアであれば「この演奏はなあ」と思うものが少ないとはいえるわけなのです。それがプロの演奏を、高いお金を払って聴く醍醐味だと思います。

特に今私は体が不自由で、かつお金も決して自由とは言えない身分です。辛い思いをして会場へとたどり着き、高い金を払っただけの演奏は期待したいところです。しかしそれは自分の美意識から絶対外れてくれるな!というものではなく、むしろ外れていても「おお、こういう見方もあるのか!」と目からうろこが落ちるような演奏を期待するのです。それこそ、プロゆえの「表現力」であるからです。

「ロメオとジュリエット」は私好みの激し系で、溌溂さすら感じるものです。一方の第6番は私が持つ「悲愴」という曲のイメージを変えるだけの表現力を持っています。こういう演奏に出会えることこそ、幸せなのです。

この全集はあたりだと以前書きましたが、やはり間違いありませんでした。そういえば、マゼールの指揮ではずれというものをあまり経験したことがないように思います。マゼールなら安心できる、と言えるかもしれません。

 


聴いている音源
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー作曲
交響曲第6番ロ短調作品74「悲愴」
幻想序曲「ロメオとジュリエット」
ロリン・マゼール指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。

東京の図書館から~府中市立図書館~:マゼール指揮ウィーン・フィルによるチャイコフスキー交響曲全集3

東京の図書館から、府中市立図書館のライブラリである、ロリン・マゼール指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏によるチャイコフスキー交響曲全集、今回はその第3回目です。

3枚目に収録されているのは、交響曲第4番第3楽章と第4楽章、そして第5番です。そのため、唐突にスケルツォのピチカート・オスティナートが始まるので違和感しかありません。演奏は非常に生き生きとして素晴らしいのに・・・・・

確かに、枚数は少ない方が値段は下げられます。しかし、違和感のあるアルバムになる可能性もあるわけで、これはどうにかできなかったかなあという気がします。

特にこの全集、録音状態も良く、1960年代の録音であるにも関わらず、再生時にソニーのMusic Center for PCにてDSEE HXを動作させて聴きますと、ホールの空気感が伝わってくる可能ような再生になっているのです。たいていこの時代はレコーディングエンジニアがいじくっているのでかえって不自然になることもあるのですがそれが全くなく、むしろチャイコフスキー交響曲で目指した霊感の再現が実に見事です。

それだけに、第4番を一気呵成に聴けないというのは商品としてどうなのかなあという気がします。わたしなら図書館で借りておらず購入を希望するなら、ハイレゾを選びます。勿論、疑似ハイレゾになりますが、それでもいいという判断をこの全集に関して言えば下すと思います。第4番が一気呵成に聴けないよりはいいだろうという判断です。

マゼールのタクトも生命力をオケから引き出しており、情熱的でかつ引き締まった演奏で、魂が揺さぶられる素晴らしい演奏に仕上がっています。それだけに非常に残念です。

今後はこのようなアルバムは減っていくのかなという気がします。そうじゃないと、もう先を行く人はハイレゾを選ぶでしょうから。まあ、私などは時間もあるのでファイルを編集するなど手間をかけますが、CDから移行する人はやはりハイレゾを選んでいくでしょう。そうやってCDは淘汰されていくのかもしれません。

 


聴いている音源
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー作曲
交響曲第4番ヘ短調作品36(後半)
 第3楽章:スケルツォ(ピツィカート・オスティナート~アレグロ
 第4楽章:フィナーレ(アレグロ・コン・フォコ)
交響曲第5番ホ短調作品64
ロリン・マゼール指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。

今月のお買いもの:ビエロフラーヴェク指揮チェコ・フィルによるドヴォルザーク交響曲・協奏曲全集2

今月のお買いもの、令和4(2022)年5月に購入したものをご紹介しています。e-onkyoネットストアにて購入しましたハイレゾ、イルジー・ビエロフラーヴェク指揮チェコ・フィルハーモニー管弦楽団の演奏によるドヴォルザーク交響曲と協奏曲全集を12回シリーズで取り上げていますが、今回はその第2回目。チェロ協奏曲を取り上げます。

交響曲は番号順で収録されているこの全集、なぜか協奏曲は作品番号順ではなく、比較的有名なものから取り上げているようで、今回取り上げるチェロ協奏曲は作品104ですが、交響曲第1番「ズロニツェの鐘」と交響曲第2番の間に収録されています。

ドヴォルザークの協奏曲と言えばずば抜けて有名なのがこのチェロ協奏曲(なので、ピアノもヴァイオリンも協奏曲があるにも関わらず通称「ドヴォ・コン」と呼ばれます)ですが、どうも私は最初に聴いたのがヨーヨー・マだったり、ロストロポーヴィチだったりしたので、チェロを思い切り感情豊かに、強めに弾く演奏に魅力を長らく感じてきました。しかし、この演奏は決してそうではなく、むしろ爽快感を徹頭徹尾感じます。

しかし、だからと言って魅力的ではないのかと言えば、むしろ歌いまくるチェロに感動しきり。おお!こういう繊細なアプローチもあるのか!と目からうろこです。

そのソリストは、アリサ・ワイラースタインアメリカ出身の女性チェリストです。

www.universal-music.co.jp

どこか枯れた感じすらするチェロ協奏曲に、爽快感を得られるなんて!この驚きはなかなかないもので、こういう演奏にあたることがクラシック音楽を聴く醍醐味であり、喜びです。ビエロフラーヴェクも筋肉質なタクトで、合わせて歌うチェコ・フィルも素晴らしいサポート。こんなに楽しく、喜びに満ちた「ドヴォ・コン」を聴いたのは初めてです。まるで母親が楽しそうにキッチンで料理をしながら鼻歌を歌っているのに、その鼻歌がプロ並みの完成度の高いものという感じで、どんな料理ができるんだろうと食卓でワクワクしながら出来上がりを待っている子供のような錯覚に陥ります。

私はこのチェロ協奏曲を、秋に聴く定番曲として長らく扱ってきたのですが、そんな季節感など関係なく、この作品は聴けるものなのだということを強烈に教えられた気がします。勿論そんな季節感なんて私自身が勝手に思ってきたことなのですが、特にヨーヨー・マのソロはそんな秋が似合う枯れた感じがする情熱的な演奏で好きですが、しかしその対極にあるかもしれないこの演奏も、私の魂を揺さぶる演奏なのです。

多分、私自身も歌いたいんでしょうね。体が不自由でもやもやしている中で、どこか自分を上げたいという気持ちがあるのかもしれません。しかし無理やり挙げたところでろくなことはないのですが、しかしこの演奏は自然と自分を「上げてくれる」演奏です。まさかこんな演奏に出会えるとは・・・・・

全く人生は「塞翁が馬」であると思います。

 


聴いているハイレゾ
アントニン・ドヴォルザーク作曲
チェロ協奏曲ロ短調作品104
アリサ・ワイラースタイン(チェロ)
イルジー・ビエロフラーヴェク指揮
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
(Decca flac96kHz/24bit)

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。

東京の図書館から~府中市立図書館~:マゼールとウィーン・フィルによるチャイコフスキー交響曲全集2

東京の図書館から、4回シリーズで取り上げております、府中市立図書館のライブラリであるロリン・マゼール指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏によるチャイコフスキー交響曲全集、今回はその第2回目です。

第2回目の今回は第2集を取り上げます。第3番「ポーランド」と第4番の第1楽章と第2楽章が収録されています。まあ、チャイコフスキーの6つの交響曲を4枚組にしようというわけですから、こういうケースも出てくるであろうということはありますが、できれば第4番もひとまとまりのほうが良かったのではないかという気がします。

というのも、この第3番と第4番の演奏、エネルギッシュで生命力にあふれる、素晴らしい演奏だから、なのです。マゼールの引き締まった解釈に、ウィーン・フィルの熟練したアンサンブルが作り出す、豊潤かつ生き生きとした生命讃歌。ロシアのシンフォニストの中では初めてといってもいい、人間の内面を見つめて作曲された第4番以降。そしてそのきっかけとなった第3番「ポーランド」。魂のレベルでの共感が演奏の中から響いてきます。

その分、第4番がぶった切られるのはなあ・・・・・という意識はあります。まあ、私などはもう借りてきたときにリッピングしてデータで持っているわけなので、いくらでも加工出来ますからこれでも構いませんが、いまだCDで聴いている人は借りても大変だろうなあと思います。その意味では、ハイレゾはそんなことがないので助かります。

いい演奏なのですが、マイナスなのが第4番が分断されているということ。後半の第3楽章と第4楽章は3枚目になるわけなので、ある意味いいところでCMを入れるテレビ番組に似ています。

とはいえ、本当に演奏はぴか一。自分の魂に語り掛けてくる演奏は、これぞチャイコフスキーの魂なのではないか!と思ってしまうくらいです。この全集は基本的に当たりだと思います。

 


聴いている音源
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー作曲
交響曲第3番ニ長調作品29「ポーランド
交響曲第4番ヘ短調作品36
 第1楽章:アンダンテ・ソステヌート~モデラート・コン・アニマ
 第2楽章:アンダンティーノ・イン・モード・ディ・カンツォーナ
ロリン・マゼール指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。

東京の図書館から~府中市立図書館~:マゼール指揮ウィーン・フィルによるチャイコフスキー交響曲全集1

東京の図書館から、今回から4回シリーズで、府中市立図書館のライブラリである、ロリン・マゼール指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏によるチャイコフスキー交響曲全集を取り上げます。

この時期にチャイコフスキーを取り上げるのはなかなか難しいかなとも思いましたが、あえて取り上げることとしました。プーチンは本当にチャイコフスキーの芸術をわかっているのかと疑問に思ったからです。

チャイコフスキーの一部の作品が、演奏するのは妥当ではないとされたことから不満を漏らしたとされていますが、それはチャイコフスキーの作品の該当作(例えば、「1812年」)がロシア・ナショナリズムを想起させるからであり、チャイコフスキー交響曲の多くはいまだ演奏され続けられています。それはナショナリズムとは一線を画すものであるからです。

もちろん、ロシアン・ロマンティシズムはあるだろうと思いますが、ナショナリズムという側面は少ない、あるいはないと言っていい作品ばかりです。むしろナショナリズムというよりはパトリオティズムというほうが正確なのではないかという気さえします。

今回の第1集で収録されている二つの交響曲、第1番「冬の日の幻想」と第2番「小ロシア」はロシア・パトリオティズムも見える作品だと言っていいでしょう。ですがむしろロシアンロマンティシズムのほうが前面に出ている作品だと言えるのではないでしょうか。

そういう二つの作品を、ロリン・マゼールウィーン・フィルを朗々と鳴らし、ロマンティシズムたっぷりに演奏させています。そのうえで筋肉質な部分もあり、実に誠実な演奏だと言えるでしょう。決して敵視せずに楽譜と向き合い、行間を掬い取るかのようなタクトは、実に魅力的です。

ロシアの、特にプーチンの取り巻きの方々は、こういう演奏をしたいと思っている西側の人たちがいることを、もう少し想像力を働かせてほしいものだと思います。

 


聴いている音源
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー作曲
交響曲第1番ト短調作品13「冬の日の幻想」
交響曲第2番ハ短調作品17「小ロシア」
ロリン・マーゼル指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

地震および津波、水害により被害にあわれた方へお見舞い申し上げますとともに、亡くなられた方のご冥福と復興をお祈りいたします。同時に救助及び原発の被害を食い止めようと必死になられているすべての方、そして新型コロナウイルス蔓延の最前線にいらっしゃる医療関係者全ての方に、感謝申し上げます。